今季導入の性能調整、コバライネンにあまり影響なし。ファンにもより魅力的な調整が必要?|全日本ラリー第3戦
2022年に性能調整が導入された全日本ラリー。しかしシュコダ・ファビアR5に乗るヘイキ・コバライネンはあまりその影響を受けていなかったようだ。
2022年の全日本ラリー選手権第3戦「久万高原ラリー」が4月30日~5月1日、愛媛県久万高原町を舞台に開催。この1戦を制したのはトヨタGRヤリスを駆る勝田範彦で、待望の今季初優勝を獲得した。
一方、シュコダ・ファビアR5を武器にこれまで全SS制覇で2連勝を果たしているヘイキ・コバライネンは「SS3の5つ目のコーナーでミステイクしてしまった。ダウンヒルの左コーナーでブレーキングが遅くて右のリやを壁に当ててしまい、パンクをさせてしまった」と語るように、SS3でトップから11.4秒差の7番手タイムに失速。オーバーオールではトップを死守したものの、続くSS4で「タイヤを交換した時にサスペンションアームが少し曲がっていたことに気づいた。でも、走れるだろうと思っていたんだけどね。スタート直後のフィーリングは良かったんだけど、2kmぐらいでサスペンションアームがギブアップしてしまった」とコバライネンは語る。
なんとかコバライネンのファビアR5は右リヤタイヤを引きずりながら同ステージをトップから約58秒遅れの15番手タイムで走りきり、オーバーオールでも5番手でフィニッシュしていたものの、「ロードセクションでマシンの修復にトライしたけれど、ダメージがひどくて諦めることにした」と語るようにコバライネンはSS4の終了後にリタイアを決断した。
「今大会はもっと速く走れるようにプッシュしていたし、いろんなことを学んでいた。クルマのフィーリングは良かったんだけど僕のミスで全てを台無しにした」と悔しそうな表情を浮かべるコバライネン。そのスピードはもはや全日本ラリー選手権では敵なしの状態となっていただけに、まさにコバライネンの今大会のミスは”弘法にも筆の誤り”といったところだろうか?
さて、今大会で筆者が注目していたのは、2022年に合わせて導入された性能調整だった。これまで2連勝を果たしたコバライネンのファビアR5は、最低重量に最大値の50kgが加算され、1230kgから1280kgに。もともとコバライネンのファビアR5は1240kg以上の車両重量になっていたようで、チームのメカニックによれば28kgのアンダーガードとサイドシート下に12kgのバラストを搭載することで、今回の性能調整に対応したという。この実質40kgのウエイト搭載がコバライネンにどのような影響を与えたのか?
コバライネンによれば「そんなにドライビングに影響はなかった。ウエイト搭載のポジションが合っていたこともあって、クルマのバランスはとても良かった。ブレーキングでちょっときつくなる部分もあってハイスピードコーナーではスライディングする部分もあったけれど大きな問題ではなかった。SS3のヒットはただ単に僕のミスでブレーキが遅かっただけ。性能調整でドライビングを変更するほどの状態ではなかった」とのこと。
事実、コバライネンはSS1で後続に7.2秒の差をつけてトップタイムをマークしたほか、SS2でも後続に6.0秒の差をつけてベストタイムをマークした。さらにマシンを修復して再出走を果たしたレグ2のSS7では後続に20.6秒、SS8では後続に26.7秒の差をつけてSSベストタイムをマークしている。SS距離に基づいて換算すると、最低重量が50kg増えているとはいえ、コバライネンは後続に対してSS2で1kmあたり0.4秒前後のマージンを構築したほか、SS1およびSS7、SS8では1kmあたり約1秒のギャップを築くことに成功していたのである。
つまり、性能調整がリザルトを左右するスーパーGTとは対象的に、2022年から全日本ラリー選手権に導入されたJN1クラスの性能調整はリザルトに対してあまり影響を与えていない。逆に言えば、パフォーマンスの均一化を図るためには、より効果的な性能調整が必要になるのではないだろうか?
個人的には抜群のパフォーマンスを持つ国際規定のR5仕様車をバラスト搭載して遅くする性能調整より、トヨタGRヤリス、スバルWRXの軽量化やリストリクター拡大など、国内規定のRJ車両のパフォーマンスを引き上げる性能調整を期待したい。
現在はまだ新型コロナウイルスの影響で、全日本ラリー選手権は無観客での開催が主流となっているが、将来の集客を考えると国際規定のファビアR5と互角に戦える国内規定のGRヤリスおよびWRXは魅力的なカードとなるだろう。それに車両重量が軽減されればタイヤに与えるストレスが軽減されることもメリットとなるに違いない。
もちろん、GRヤリスおよびWRXを投入するチーム側にとって車両の製作コストは増えてくるが、2022年の性能調整があまり効果を発揮していない以上、2023年は参加者にとってもファンにとっては魅力的な性能調整が必要となるに違いない。
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