〈アジアから“世界”へ〉小椋藍とIDEMITSU Honda Team Asiaの挑戦:COTAのバンプ問題とフィジカルに悩まされた1戦。高い目標にもはや7位は満足できず
MotoGP第15戦アメリカズGPで、Moto2クラスの小椋藍は7位シングルフィニッシュをマーク。しかし小椋は「あまりいい日曜日ではなかった」としており、サーキットへの適応や犯したミスなどを冷静に分析している。
Ai Ogura, Honda Team Asia
Gold and Goose / Motorsport Images
第15戦アメリカズGPの決勝レースで、IDEMITSU Honda Team Asiaの小椋藍は7位のチェッカーフラッグを受けた。順位は前戦サンマリノGPと同じで、シーズン後半戦を振り返ると、いずれもシングルポジションでフィニッシュをしてきている。しかし、今回のレース内容はあまり良いものではなかった、と小椋はサーキット・オブ・ジ・アメリカズ(COTA)の控え室で言葉少なに振り返った。
「ミスもあったし、今回は土曜日から日曜の上げ幅がちょっと少なかったです。2日目(土曜)は初日(金曜)よりもトップに追いつくことができて、いつもならレースではさらにいい感じで行けるところを、今回はレース1周目の流れからちょっと抜け出すことができなくなってしまいました。正直なところ、あまりいい日曜日ではなかったですね」
あまりよくなかった、と省みる理由は、序盤の位置取りといくつかのミスのためだという。
「最初の数ラップでポジションを下げたことと、あとはレース前からミスをしないように心がけていたのに2回くらいミスをしてしまったので、それがダメだったかなと思っています。それ以外は特別によくも悪くもなく、ある程度想定していたくらいのペースで走れました」
前回の記事でチーム監督の青山博一が指摘しているとおり、シーズン前半戦の小椋はレース序盤にグリッド位置よりもやや順位を落としがちな傾向もあったが、後半戦になるとこの課題は改善を見せ、オープニングラップではスタートしたときのグリッド位置よりもポジションを上げて一周目を終えるようになっていた。ところが、3列目中央の8番グリッドからスタートした今回は、スタート直後の1周目でポジションをふたつ落とし、10番手に下がっていた。
「1コーナーの位置取りや距離感については、ギリギリまで攻めていけませんでした。皆のほうがもうちょっとリスクをとっていたのに対して、自分はちょっと引くようなかたちになっていましたね。けっして引いているつもりはなかったんですが、ミスなく回るという考え方よりもむしろ、リスクを負っていく意識の方が正しかったのかな、とも思います」
COTAは全長が5513m、とシーズン全カレンダーでも長大な部類に属するコースで、右9左11の全20個からなるコーナーは高中低速と多彩に構成されているため、ライダーたちにかなりの体力を要求する。また、スタート直後のメインストレートは急激な上り勾配で、その頂点で鋭角に左旋回する1コーナーは、その後が上った分だけ急坂を下る格好になるため、攻略の難易度も高い。
「1コーナーは(曲線半径が)小さいので1速で入るんですが、ここでギアがニュートラルになりやすいんです。このコーナーではレース中に何人もの選手がワイドになっているんですが、あれは全部、ギアがニュートラに入ってしまったからです。(スタート直後の1コーナーで攻めきれなかったのは)そこを考えてしまう意識からきたものだったのかな、と思います」
小椋が冒頭で述べていたレース中のミス、というものも、このシフトミスによるものだったという。
「ここは1速のコーナーが多いので、2速から1速に落とす際に1速に入りきらないことがたまにあるんですよ。いつもどおりの感覚で落としていくとニュートラルに入りがちなので、意識してシフトしなければいけないんですが、他の選手が周囲にいると、どうしてもそっちのほうに注意がいってしまって、いつもどおりのシフト操作になり、その結果、ニュートラルに入ってしまう。レース前には気をつけようと思っていたんですけれども、そのミスがレース中に二度ほど出てしまいました」
ミスが発生したのはレース中盤。懸念していたとおり、やはり他選手とのバトルの最中だった。
「序盤はミスなく走れました。中盤を過ぎたくらいにトニー・アルボリーノ選手の後ろにつけていて、彼を抜いた次のコーナーで(ニュートラルに)入っちゃったんですよ。そのミスで一度離れてしまったところから再度追いついたら、今度はハイサイド気味になってミスをして、また離れてしまった。それがたぶん、ラスト3周くらいですね。バイクとタイヤに大きな問題はなかったんですが、この2回のミスで、肉体的にもメンタル的にもちょっと落ちてしまった、という印象です」
メンタル、と小椋が言うのは、レース後半の集中力維持に対する影響だ。
Ai Ogura, Honda Team Asia
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
「2回のミスで追いついて離れて追いついて離れて、ということを繰り返し、追いつこうとしている最中にミスが続いたので、最後は(集中力が切れて)いつものテンポでは走れなくなってしまいました」
フィジカル面での影響は、コーナー数が多いことと全長の長さ、そして、このコースではいつも話題になる路面のバンプ(凹凸)だ。特に今年のレースでは、最高峰のMotoGPクラスで多くの選手がバンプの多い劣悪な路面状況に不満の声を上げた。中排気量クラスのMoto2でも、やはり影響が大きかった、と小椋は振り返る。
「すごく不安定でしたよ。皆がそうだったと思うんですが、いままで走ったなかでは上位……というよりも、たぶん一番バンプがひどかったと思います。それでも走行を重ねるにつれて(セットアップで対応して)よくなってきたんですが、レースではニュートラルの意識との戦いとバンプ、そのふたつが走っているなかで難しい部分でしたね」
と、このようにレース全18周を振り返ってみると、今回の小椋藍は、大勢のライバル選手たちとの戦いにくわえ、シフトミスを防ぐ細心の留意という内面の戦い、そして肉体的に苛酷なコースで路面のバンプにも対処するという環境面との戦い、という様々なものごとへの対応を迫られた。そして、それらとの戦いの結果として得た7位というリザルトを見ると、冒頭に紹介したとおり「あまりいい日曜ではなかった」という結論になる、ということなのだろう。
だが、小椋が今回のレース結果と内容に不満足感を抱くのは、裏を返せば、ルーキーイヤーであるにもかかわらず、ごく当たり前に高い結果を目指しているから、ともいえるだろう。
次の第16戦エミリア・ロマーニャGPはアメリカズGPの2週間前、第14戦サンマリノGPで走ったばかりのミサノワールドサーキット・マルコ・シモンチェリで開催される。そのときの小椋のリザルトは7位。目標は当然、それよりもよい結果を獲得することだ。
「そうですね。前回すでにレースをしているので、そこからさらに上位を目指すだけです」
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