MotoGPコラム|話題たっぷりな3年ぶり日本GP。日本人ライダーの活躍から”ポスト・コロナ”まで現地で見えたコト

実に3年ぶりの開催となったMotoGP日本GP。スペクタクルに満ちたレースウイークとなったことは間違いないが、改めて日本GPの出来事を振り返ってみよう。

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 3年ぶりの日本GPは、総じてポジティブな週末だったと言えるだろう。今回は第15戦アラゴンGPから2週連続開催だったため、万が一、荷物の搬送に時間がかかった場合を考慮して、金曜午前のセッションはあらかじめ行われない予定で週末のスケジュールが組まれていた。

 実際には搬送の遅延は生じなかったものの、木曜の午後になってもパドックでは各チームのピットボックスで設営などの準備作業が続いていた。通常の週末ならば水曜に完了しているような作業だ。誰が悪いということではなく、それだけこの連戦スケジュールが稠密である、という証だ。ヨーロッパラウンドなら、2連戦やときに3連戦のカードが組まれることはよくあるが、日本GPがこのような連戦のスケジュールに組み込まれるのは珍しい。

 思い出せる限りでは、2009年が開幕戦カタールGPから2週間後の4月26日に第2戦日本GP、その翌週5月3日に第3戦スペインGPをアンダルシア地方南端のヘレスで開催、というカレンダーだった。このときもかなり綱渡りに近い厳しいスケジュールで、日本GP終了後に大量のコンテナを陸路で成田まで搬送して航空便でスペインへ飛ばすまでの慌ただしい作業の一部始終を、ドルナがたしか公式サイトで公開していたような記憶がある。翌2010年も、前年同様に春に日本~スペインの連戦が予定されていたが、アイスランドの火山噴火で欧州発着の航空便に大きな影響が出たため、日本GPは秋へ繰り延べられた。これ以降はずっと、日本GPは秋の開催で定着している。

集まったたくさんのファンの人たち

集まったたくさんのファンの人たち

Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images

 今年は3年ぶりの開催になった日本GPだが、3日間の観客動員数は、8648人(金)、1万6682人(土)、3万2152人(日)で、3日間の総計は5万7482人だった。パンデミック前と比較してみると、たとえば2017年は3日間総計で8万9501人、2018年は9万6425人、2019年は8万8597人、という実績になっている。この当時と比較すれば、今年は6割5分程度の入り、ということになるだろうか。

 とはいっても、様々な有形無形の規制や心理的な抑制効果などが日本ではまだ大きいことを考えると、今年の観客動員実績は充分に成功したといっていい数字だろう。パンデミック後に初めて日本で開催するモータースポーツ世界選手権だった8月上旬の鈴鹿8耐では、金曜から日曜の合計が3万1750人だった。これと比較しても、今回の日本GPの動員は改善傾向を見せているといえそうだ。

■日本勢大活躍の日本GP。特別なグランプリになったこと間違いなし

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 今年の日本GPは3年ぶりの開催に加えて、そもそものレース内容と結果が、なにより忘れがたい強烈な印象を灼きつけた。前回の当コラムでも言及したように、特にMoto3クラスとMoto2クラスで日本人選手たちの活躍が期待されていたが、まさにその予想が的中する結果になった。

 Moto3クラスでは、鈴木竜生がポールポジションを獲得。レースは佐々木歩夢が3位表彰台に立った。日本GPの最小排気量クラスでは日本人選手が表彰台から遠ざかって長く、2016年には尾野弘樹が3番手でゴールしたものの、レース後の計量で規定よりわずかに軽かったために表彰台が取り消される、という残念な出来事があった。また、鈴木は2017年と2019年に、ともに4位で終えている。表彰台に手が届きそうで届かないなんとももどかしい距離を、今年は佐々木がようやく詰めきって掴んだ、というわけだ。日本人選手が日本の舞台で獲得した久々の表彰台に、溜飲の下がる思いをした人々はきっと多いだろう。

Grand Prx of Japanで日の丸が頂点に!

Grand Prx of Japanで日の丸が頂点に!

Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images

 続いて行われたMoto2クラスでは、周知のとおり小椋藍が圧巻の走りで優勝を達成した。中排気量クラスで日本人選手の日本GP表彰台は、小椋のチーム監督である青山博一が2009年に獲得した2位以来。優勝、ということでは、同じく青山が2006年に勝利したとき以来だ。

 佐々木と小椋はともに、こんなにも長い間日本人選手たちが日本で表彰台に上がっていなかったことが信じられないくらいの力強さを終始披露した。MotoGPクラスの結果もさることながら、彼らのたくましい走りこそが、多くの日本人ファンにとって今年の日本GPを特別なものにしたことは間違いないだろう。そして、これは単なる地元レースでの勢いや一回こっきりの幸運などではなく、これから何度もどこの会場でも同じような走りを見せてくれそうなところがなにより心強い。

■日本GPで“ポスト・コロナ”日常が見えた?

 テレビや公式サイトの実況でレースをいつも観戦している人ならおわかりだろうが、現在のヨーロッパではマスクを着用している人は少なく、パドックでもこの春以降はマスクをしないことが一般的になっている。ところが、日本をはじめアジア諸国では、社会のマナーとして今もマスク着用がコンセンサスになっているところが多い。欧州を離れて転戦するこのフライアウェイシリーズでは、パドック関係者たちは訪問するそれぞれの国のルールに従うように促されている。では、今回のパドックでマスクの着用度はどんな様子になっているだろう、と思って少し観察してみた。

 ドゥカティやKTM、アプリリアなど、欧州系の陣営は、ピットボックスの作業時やパドックの往来でもマスクを着用せず、欧州にいるときと同様に振る舞う人々が大半だった。一方、ホンダ、ヤマハ、スズキなど日本メーカーの場合は、日本人スタッフは総じてマスクを着用していたが、ヨーロッパ人スタッフは着用していたりしていなかったり、とさまざまだったようだ。

Francesco Bagnaia, Ducati Team

Francesco Bagnaia, Ducati Team

Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images

 ただし、マスクを着用しない人々に対して誰も目くじらをたてて注意喚起をする様子がなかったのは、彼ら彼女らに対して腰が引けていたからというよりも、日本の感染状況が減少傾向を見せていることなどもあり、マスクの不着用に対して日本人の側もむしろ鷹揚な態度で許容しているようにも見えた。やがて日本でも、マスクを着用せずにさまざまな活動をできる機会が広がっていくのだろう。次戦の開催国タイでもマスク着用はあいかわらず推奨されているものの、制限を緩和する方向へも向かっているようだ。

 この週末にタイGPを行うブリラムのチャーンインターナショナルサーキットは、初開催の2018年と2019年に、3日間総計でともに22万人を超える動員数を達成している。なにせ、MotoGPが初めてブリラムを訪れた2018年プレシーズンテストでも、3万人の見物客が詰めかけたほどだ。プレシーズンテストで見物客の大渋滞に巻き込まれたのは、長年の取材では後にも先にもあのときだけだった。

 それほどにMotoGP人気が高いタイで3年ぶりの開催ともなれば、今回の会場収容数はともかく、熱狂度に関してはおそらく初開催時に匹敵するほどのクレイジーな盛り上がりを見せそうな気がする。3年ぶりにMotoGPを肌身で感じることのできる彼らのうれしさは、日本の人々なら誰よりもよく共感できるだろう。

 
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