牧野任祐×太田格之進、クリーンかつ“バチバチ”なバトルを演出したふたりの関係性。公私で行動共にする仲……性格も近い?
スーパーフォーミュラ第5戦もてぎで、レース終盤まで優勝をかけた手に汗握るバトルを展開した牧野任祐と太田格之進。お互いの信頼感や関係性も、そのバトルを演出したひとつの要因だったかもしれない。
写真:: Masahide Kamio
モビリティリゾートもてぎで行なわれたスーパーフォーミュラ第5戦では、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGの牧野任祐と太田格之進による優勝争いがレースを盛り上げた。結果的にはトラブルに見舞われた太田のスピンで決着がつくという悲劇的な幕切れとなったが、チームメイト同士での接触ギリギリのバトルは見る者を熱狂させた。
早めのピットストップでレースをリードした太田と、遅めのピットストップでタイヤライフのマージンを持って追い上げる牧野。2台は残り3周でついに交錯し、サイドバイサイドのバトルが繰り広げられた。ヘアピンでは一旦牧野が前に出るがオーバーシュート気味となり、クロスラインをとった太田が立ち上がりで前に……そして90度コーナーでのブレーキングで牧野がアウトから再び並びかけるが、太田もコース幅ギリギリまで牧野を牽制し、ポジションを守った。
残り2周のスピンによって涙を呑んだ太田。かなりギリギリのブロックであったことは自覚しているが、お互いの信頼感があるからこそ、激しいバトルができたと振り返った。
「お互いのことを信頼しているからこそできるバトルでした」
「今日は確かにお互いギリギリでしたし、僕も90度コーナーではアグレッシブに行きすぎたので、反省というか『ごめんね』という気持ちもありますが、ああいうバトルがあるのがスーパーフォーミュラだと思います」
写真: Masahide Kamio
牧野と太田は年齢も近く(牧野が1997年生まれ、太田が1999年生まれ)、同じ関西出身。カートを走らせていた幼少期からお互いを知る仲であり、チームメイトとなった今もサーキット内外で行動を共にすることが多いという。
「僕たちは他のチームと比べて、ドライバー同士の距離感も近いと思います。いちライバルでありつつ、プライベートで会う仲でもあるので」と言う太田。優勝を飾った牧野も、決勝後記者会見で次のように語った。
「レースに限らず、プライベートでも普通にふたりで飲みに行ったりもします。 チームメイトと一緒に行動するかどうかはチームによって変わると思いますが、僕たちは基本的にずっと一緒です」
「一番身近な存在で昔から知っていますし、 本当に刺激をもらえる存在です」
写真: Masahide Kamio
そんな仲の良いふたりではあるが、レース中はお互いにライバル意識をむき出しにする。スーパーフォーミュラにおいて、最大の比較対象となるのは同じチームに所属するチームメイトだからだ。今回のもてぎ戦に限らず、牧野と太田はお互いを意識してか、相手方がどんな戦略を採るのかエンジニアに無線で執拗に尋ねる場面も少なくない。
レース中は最大のライバル、しかしそれ以外では友人……レース中に友人としての関係性が邪魔をしたり、コース外でライバルとしての意識が干渉してしまうことはないのだろうか? これについて牧野は、そのあたりは気持ちの切り替えがうまくできていると語る。
「みんな一緒だと思いますけど、やっぱりヘルメットを被って走り出したら自分の世界に入るので、その中でみんなうまく切り替えてやっていると思います」
第2戦オートポリスで優勝した牧野を祝福する太田
写真: Masahide Kamio
「レースとプライベートはまた全然別だと思います。サーキットを出ちゃえば普通にただの友達……まあ僕の方が年上で先輩なんですけど(笑)。でも逆に自分もちょっと年上の人を別に先輩とは思ってなかったりするので(笑)」
「世代的にも、小さい時からサーキットで一緒に走って楽しい、という感覚を共有してきた人たちが(共に)どんどん上まで来ているので、その延長線上なのかなと思っていますが、やる時はバチバチやるし、遊ぶ時は遊ぶ。オンとオフをちゃんと切り替えてやれているから良い関係なんじゃないかなと思います」
一方太田は、お互いの性格が似ているところも、絶妙な距離感を築けている一因ではないかと話した。
「僕たちはあまり細かくないんですよね。ふたりとも結構大雑把なので、あまり繊細じゃないからかもしれません」
「でも、お互いが入り込んでほしくないところは理解しているし……僕がそう感じているだけかもしれませんが。さっきも(牧野と)『帰り俺が運転するから元気出せって』『そんなんで元気出せるか!』って話をしました(笑)」
ちなみに「お互い細かいところを気にしすぎない」という太田のコメントを牧野に伝えると「それは僕がちゃんと気にしてあげてるから(そう見えているだけ)です」と一刀両断。ふたりの性格や価値観はさらに深掘りしていく価値がありそうだ。
ともあれ今季のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGは牧野、太田共に好調で、今後もこの勢いを持続させればチームタイトルも狙える状況だ。ふたりはシーズン残りのレースに向けて次のように意気込んだ。
写真: Masahide Kamio
「開幕戦の鈴鹿もバチバチやってましたけど、今回はそれをトップ争いですることができました。今後もふたりで争っていくシーンをどんどん増やしていけたらと思うし、またふたりでトップ争いして、次は僕が(バトルに)勝てるよう頑張ります」(牧野)
「僕たちは良いチームコンビネーションで常に2台で上位にいるし、今回ワンツー目前だったことを考えても、最高のチーム、チームメイトに恵まれたと思います。近いうちにワンツーフィニッシュできるんじゃないでしょうか」(太田)
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