破竹の3連続PP……光る野尻智紀陣営の“修正力”。磨き抜かれたセンサーが強さの秘訣?
スーパーフォーミュラで3戦連続のポールポジションを獲得した野尻智紀。安定して好成績を残すことが難しいこのカテゴリーにおいて強さを発揮している要因は、彼の“センサー”にあるのかもしれない。
写真:: Masahide Kamio
オートポリスで行なわれたスーパーフォーミュラ第4戦の予選。コントロールラインを立ち上がり、あっさりとポールポジションをかっさらっていった野尻智紀(TEAM MUGEN)の姿を見て、感嘆のため息を漏らした者も少なくなかったのではないだろうか。野尻は王座を獲得した昨年からさらに強さを増しており、第2戦からの3戦連続PPは14年ぶりの快挙だ。
国内トップクラスのドライバーたちが揃い、基本的にはイコールなパッケージで競うという性質上、スーパーフォーミュラは小さな要因が結果を大きく左右する。変化するコンディションの中でセットアップを少しでも外してしまうと、大きく順位を下げることになる。このカテゴリーで安定した成績を残すことは至難の業なのだ。
だからこそ、スーパーフォーミュラで最も要求されるスキルは、純粋なスピードセンス以上に“修正力”なのではないかと思わされる。フリー走行でのフィーリングがイマイチでも、はたまたセッションごとにコンディションが大きく変化しても、予選、決勝までにしっかりとマシンをまとめ上げること……これが難しいが故に、今回のオートポリス戦でも前戦のウィナーやフリー走行のタイム上位者がQ1落ちを喫する場面があった。
そんな中で野尻は3戦続けてQ2で誰よりも速いタイムを刻んでみせたのだ。オートポリス戦ではアンダーステアに悩まされている中で、Q2での路面がオーバーステアになりやすい傾向だったため「たまたまバランスが取れた」と担当エンジニアの一瀬俊浩は言うが、それでもここまでの快進撃は決して”たまたま”ではないはずだ。
この修正力の高さについて、野尻に客観的に分析してもらうと、彼は「経験……ですかね。僕を含めたチーム全体としての経験です。100点はなかなか狙えないですけど、80点は常に狙いに行ける、そんなところが強みかなと思います」と語った。
一方の一瀬エンジニアはこのことについてさらに具体的に話してくれた。彼曰く、ドライバーである野尻の「センサーがすごい」のだという。
「野尻選手は、『今の状態でここからコンマ何秒かペースを上げたら、おそらくここが破綻してくるだろう』といった読みがすごいんです」
Tomoki Nojiri, TEAM MUGEN
Photo by: Masahide Kamio
「Q1からQ2にかけては、通常はコンマ3秒、場合によってはコンマ5秒ほどタイムが上がります。タイムの上がり幅は野尻選手にも予測できませんが、これ以上攻めたときに何が起こりそうか、今の100%から、もう1ステップ先に行くために何が必要かを読むことができるんです」
「僕はそれに対して『こういうことをしたらそこにたどり着けるんじゃないか』という選択肢をいくつか提示して、これは違う、これは良い……といった形で選んでもらっているだけです」
一瀬エンジニアは以前、野尻について「サーキットに来るまでは彼もエンジニアをしているようなもの」と表現しており、彼の車両運動に対する理解の深さを評価していた。例え優秀なトラックエンジニアがいたとしても、マシンに乗るのはドライバーであり、エンジニアがマシンに現在進行形で起こっている事象を100%理解するのは難しい。だからこそ、野尻の“センサー”が力を発揮するのだ。
一瀬エンジニアはこう語る。
「僕たちエンジニアはセッション中、アンダーステアかオーバーステアかくらいしか分かりません。
「野尻選手が何を求めているのか、細かいところまで完璧に把握できていないので、アンダーステアならスタビライザーかフロントウイングをいじるか……という感じで提案することになります」
「ただ野尻選手は、『今はクルマがロールし過ぎててアンダーステアになっているだけなので、リヤのスタビを上げればフロントウイングのフラップはいじる必要はない』という風に言ってくれます。要はセンサーがすごいんです」
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