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山本尚貴、感動の復活勝利の裏で「まだ道半ば」と冷静な担当エンジニア。突然の雨でもセッティング変更なし……そこにも理由が

スーパーフォーミュラ第7戦で、TCS NAKAJIMA RACINGでの初勝利を手にした山本尚貴。しかし担当の加藤祐樹エンジニアは一切気を緩めることなく、冷静な姿勢を崩していない。

Naoki Yamamoto, TCS NAKAJIMA RACING

写真:: Masahide Kamio

 モビリティリゾートもてぎで行なわれたスーパーフォーミュラ第7戦。スタート時刻の15分前に突如雨脚が強くなりウエットレースになるという波乱の幕開けとなったが、レース自体はポールポジションスタートの山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)が終始隙のない走りを披露。2021年にNAKAJIMA RACINGに移籍して以降初めてとなる勝利を挙げた。3度のスーパーフォーミュラ王者の復活優勝に、パドックはにわかに感動ムードに包まれた。

 そんなレースの興奮冷めやらぬ中、筆者は山本を担当する加藤祐樹エンジニアにインタビューを行なった。まず優勝に対する率直な心境を尋ねたのだが、こういう質問には大抵「嬉しい」「ホッとした」といった言葉が返ってくるのが常である。しかし加藤エンジニアからは、そういったワードはひとつも聞かれなかった。

「(決勝は)天気にも味方されたと思います。(予選)Q2は後ろの方で大きなトラフィックがあったので、そこに入らないようにしていましたが、(トラフィック等の要素が絡まない)ガチンコで予選をやっていたらどうなっていたかはまだ分からないと思っています。だから安心していないというか……道半ばだと思っていますが、そんな中で結果に繋げられたのは、尚貴さんの経験と技術だと思うので感謝したいです」

 少しイレギュラーな返答に筆者は思わず、確認も込めて「昨年から山本を担当してついに1勝目を挙げたが、これで肩の荷は少し降りたか」と尋ねた。しかし加藤エンジニアは「全くないです」と即答する。

「先ほども言ったように道半ばだし、Q1も通過ギリギリでした。だから全然そういう感覚はありません」

「今後もこういうレースを続けていけるように、本当のガチンコで勝てるように、粛々と取り組んでいきたいです」

Naoki Yamamoto, TCS NAKAJIMA RACING

Naoki Yamamoto, TCS NAKAJIMA RACING

Photo by: Masahide Kamio

 加藤エンジニアは、山本とタッグを組んでの戦いが“道半ば”であると強調したが、実はそれは今回のレースに向けてのアプローチにも表れていた。

 前述の通り、今回のレースはスタート時刻の15分前になって急遽雨脚が強く降り出した。そのため、あと10分でレースが始まるというタイミングでメカニックたちの動きが慌ただしくなり、各車ドライタイヤからウエットタイヤに交換。ウエットコンディションに合わせるため、カウルを開けてセッティング変更を行なう陣営も多く見られた。

カウルを開けて作業するメカニック(写真は大湯都史樹のマシン)

カウルを開けて作業するメカニック(写真は大湯都史樹のマシン)

Photo by: Motorsport.com / Japan

 しかし、山本陣営はグリッド上で一切セッティング変更は加えなかった。それどころか、予選と全く同じセットアップで決勝に臨んだというのだ。

 予選と決勝では燃料搭載量、すなわち車両の重量も異なり、求められる車両の性能も異なることから、予選と決勝でセットアップの方向性を変えることが定石と言える。しかし加藤エンジニア曰く、山本が乗る64号車は現状その手前の段階にいるという。

 彼は次のように説明する。

「尚貴さんを担当して1年半になりますが、最初の1年間は予想しないクルマの挙動が出ていて、それに向き合う作業をしていました。ここ最近はそれ(挙動)が普通になってきています。そんな中で、ようやく尚貴さんに合うセットアップの深掘りができてきたと思っています」

「そういった背景があるので、レースセットはこうした方がいいとか、そういった部分までできていないんです。だから、予選のままのクルマで燃料を積んで走ったらどうなるかというところから見ないと、(変更を加えた場合は)重いからそうなったのか、クルマをいじったらそうなったのか分からなくなってしまい、混乱してしまいます」

「だから僕たちは物事を整理するため、迷路にハマらないために予選のままで走ったんです。8分間(決勝前のウォームアップ走行)でもそんなに悪くありませんでしたし、決勝は博打をしないでこのまま行こうということになりました」

「(決勝に向けては)レーダーの予報を見ると雨が上がりそうな気配もあったし、水量も多くなさそうでした。そして先ほどと同じ考え方で、『同じクルマでウエットを走ったらどうなるのか?』という意図で(予選と同じセットアップに)しました。僕たちはまだ引き出しが少ないんです」

 加藤エンジニアが語るように、昨シーズンは異常な挙動に悩まされていたことに加え、山本が求めるマシンの理想像をうまく把握できていなかったこともあり、山本の乗る64号車は最高位6位と非常に苦しいシーズンとなった。しかし今季からはそういった“異常さ”が鳴りを潜めるようになったため、序盤はセットアップの方向性を“大振り”しながら最適解を探っていった。そういった作業が落ち着き始めたのが、山本がQ1トップタイムを記録したSUGO戦あたりだったという。

 そして今回、未だ道半ばだからこそ、今後に向けた有益なデータを得るためにも完全なドライ用セットアップで山本を送り出した加藤エンジニア。その判断に山本がその経験と技量で応え、勝利に繋がったのだ。今回の優勝で彼らの旅路がまた一歩前進したのは間違いない。

 
 
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