トンネルの先に光は見えるのか。ホンダ・プレリュードGTは富士でも5位止まり「地力が足りていない」……HRCは凍結外領域での開発も視野
スーパーGT第2戦でも表彰台に届かなかったホンダ陣営は、3ヵ月後に行なわれる次戦に向けてハードワークで改善を進める構えだ。
#17 Astemo HRC PRELUDE-GT
写真:: Masahide Kamio
スーパーGT開幕戦は最上位6位と、厳しい船出となったホンダのHRCプレリュードGT。舞台を岡山から富士に移しても、状況を大きく改善することはできなかった。
第2戦富士でのホンダ陣営は、予選で全5台がトップ10入りするも、Q2での合わせ込みがあと一歩足りず5番グリッド〜9番グリッドに固まった。そして3時間と長丁場の決勝レースでは、さらに苦戦することになった。
決勝で比較的上の順位を争うことができたのは、持ち味のレースペースを活かして8番グリッドから追い上げを見せた16号車ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GTの1台だけ。とはいえ、彼らが追い抜いたのは同じホンダ陣営の3台と、ペナルティと車両ダメージで手負いの38号車KeePer CERUMO GR Supraであり、12番手スタートの39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supraにはオーバーカットを許した結果、5位に終わった。これがホンダの最上位だった。
一方で、16号車以外の4台は大苦戦。GT500は12台がチェッカーを受けた中、100号車STANLEY HRC PRELUDE-GTが8位、17号車Astemo HRC PRELUDE-GTが9位、8号車ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GTが11位、64号車Modulo HRC PRELUDE-GTが12位と下位に固まってしまった。レース後のピットレーンで言葉を交わす陣営のドライバーやスタッフの表情はいずれも重苦しく、100号車STANLEYの牧野任祐はチームが公開した動画の中で「リザルトを見てもらえると分かると思いますが、話になってないんで」と強い口調でコメントしている。
#100 STANLEY HRC PRELUDE-GT
写真: Masahide Kamio
HRCのスーパーGT開発責任者(LPL)、徃西友宏氏はレースを次のように総括した。
「予選結果でのトップとのタイム差も示している通り、車両自体のパフォーマンスが不足していて、今日のレースではそれがより明確になっています」
「レース展開的にはタイヤチョイスの違いによって、路面温度が変わるとペースの良かったクルマが追い付かれたり、といった展開が見られました。それはホンダも同様であり、良いペースで走れている時間帯もあったものの、他車を追い抜ける、引き離せるほどのペースはなかったので、そこはやはり地力のパフォーマンスが足りていないなというところです」
「2レースを終えて得られたデータをしっかり分析して、改善に努めないといけません。セパンでのレースが中止になったことで8月までインターバルがありますので、この時間を最大限活用し、次の富士のレースでライバルをキャッチアップできるよう、開発作業を行なっていきます。またチームさんごとのクルマの使いこなしもレベルアップしていけるよう頑張ります」
前述の通り、今回のレースではARTAの16号車だけが一貫して中団上位で走ることができていた。16号車は開幕戦でもホンダ最上位と、2戦続けて陣営を引っ張るような走りを見せていて、テストからロングランを積極的に行ないレースペースに強みがあるマシンに仕上げたこともその一因と言える。
#16 ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GT
写真: Masahide Kamio
徃西LPLは今回16号車だけが抜きん出た理由について、他車とタイヤ選択が異なっていた点も踏まえて詳細な分析が必要であると述べた。
「レースを通して16号車と全く同じタイヤを履いていたホンダ車は他にいませんでした。16号車が一番ペースよく走れていたのは、タイヤによるところが大きい可能性があります。同じタイヤを履くクルマが何台かいれば、セットアップの方向性で差が出たかどうかが分かりやすかったのですが」
「開幕戦も16号車が本当にうまくレースを戦ってくれました。ただ16号車がタイヤに助けられてこうなったのか、逆に今日ペースが悪かったホンダ車のタイヤを履いてもこういう結果になったのか、そこは分かりません。細かい話をすると16号車はセットアップの合わせ込みが他と違うところもありますので、そこは切り分けて分析しなければいけません」
いずれにせよ、その16号車をもってしてもトップと54秒差の5位に終わったという現状をHRCも重く受け止めており、まずまずのまとまりを見せている16号車のセットアップコンセプトすら見直す可能性も含め、フラットな視点で考えていきたいとした。
スーパーGT・GT500の空力開発は数年に一度、オフシーズン限定で解禁されるが、基本的にシーズン中は開発凍結となる。今季は開幕前の開発が解禁されたが、王者トヨタのGRスープラはこの貴重な機会にほとんど変更を加えておらず、スープラが現行GT500でいかにパッケージとして成熟しているかを物語っている。そんなスープラに追いつきたいホンダ陣営だが、空力開発凍結に加えてエンジンも今季から“スペック2”を投入できなくなった中で、大幅な改善は容易ではない。
その中で徃西LPLは、同じく富士で8月に行なわれる次戦に向けて、基本的にはセッティングの面で改善を狙っていかなければいけないとしつつも、ホモロゲーション(認証/仕様確定)されていない箇所での開発に取り組む可能性を示唆した。
「基本的にセッティングの範囲の中でやらないといけないとは思っていますが、その中で限界がある場合、ホモロゲーション登録していない範囲での改善も視野に入れています」
「何をやればどこまでできるかは検討に時間はかかりますが、クルマのキャラクター付けや、『富士でこうすればパフォーマンスは出し切り(限界)だ』というものが見えてきたら、具体的な次の一手に入れるかなと思います」
その“ホモロゲーション外”の領域で、空力効率を高めるような開発も可能なのかと徃西LPLに尋ねると、不可能なわけではないという。彼は次のように語る。
「レギュレーション自体は何年も前から安定しているので、規則の範囲内で、ホモロゲーション後に何ができるのかはわりと明確です」
「その中で今のプレリュードの弱点克服にどこが一番寄与するのか、どの領域が改善に使えそうか、考えを巡らせないといけません。過去の車両でここをこうすればゲインがあった……といったことを見直した上で、既にいくつかリストアップして着手しているところもあります」
「そういった積み重ねで追いつかないといけないですが、何せ今すごい差がついているので……ハードワークですね」
「チリツモという意味では、それ(空力の改善)もできるところはあると思います。ただ現状は、ダウンフォース何%増、ドラッグ何%減といった数字で説明できないくらいの差がついているので、改善によってドライバーさんが乗りやすくなったり、エンジニアさんがセットアップをより簡単にまとめ上げられる……そういったことの積み重ねで性能を倍々で上げていくことを狙っています」
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