【スーパーGT】19号車スープラの猛追を逆手に……1号車STANLEYの山本尚貴が見せた老獪なレース戦略
スーパーGT第4戦もてぎで勝利を飾った1号車STANLEY NSX-GTの山本尚貴はレース後記者会見の中で、19号車WedsSport ADVAN GR Supraと激しい首位争いを展開していた際の“戦略”について語った。
写真:: Masahide Kamio
ツインリンクもてぎで行なわれた2021スーパーGT第4戦。優勝したのはポールポジションスタートの1号車STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)だったが、レース中は19号車WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋)との息詰まる攻防が繰り広げられた。
スタートでは牧野がドライブする1号車が順当にホールショットを奪ったが、19号車の国本は7周目の5コーナーで牧野並びかけると、130Rでオーバーテイク。首位に立った。1号車は19号車を逆転できぬまま24周終了時にピットへと向かい、牧野から山本にドライバー交代した。
山本はレース後記者会見の中で、1号車が比較的早めのタイミングでピットインしたことについて次のように説明した。
「現行のスーパーGTの規則だと、どうしてもSC(セーフティカー)、FCY(フルコースイエロー)のリスクがあります。SCが入った時点で、それまでにピットに入っていないマシンはかなりのビハインドを背負ってしまいます。僕たちは特にそのリスクを毛嫌いしているんです」
「ただ、ミニマムの周回数(レース距離の3分の1=21周終了時)で入ると、最後まで走れる量の燃料を搭載できません。燃費計算をした結果、24周終了時に満タンにすればカツカツではありますが走り切れるので、僕たちはその作戦をとりました」
1号車のピットインから3周後、首位を走っていた19号車国本もピットに向かったが、作業中にタイムロスがあり1号車の先行を許す形となってしまった。しかし、国本からバトンタッチした宮田が山本を猛追。瞬く間に1号車と19号車のギャップはなくなった。
このまま首位は再度入れ替わるのか……そう思われたが、19号車宮田は決め手を欠き、最後まで1号車山本の前に立つことはできなかった。
当時のことを、山本は次のように振り返る。
「牧野選手のスティントを見ていましたが、路面温度が50℃近くという状況でヨコハマタイヤの19号車が急激にスピードアップしていたので、普通にいったら19号車に勝てることはないと思いました。しかし牧野選手が厳しい中でも食らい付いたことで19号車のピットにミスがあり、19号車の前に出られました。これが今回の勝利の要因のひとつだと思います」
「その後、すぐに19号車に追い付かれてしまいました。ただ、ここで僕が頑張り過ぎると逆に簡単にやられちゃうので、一回ペースを落として彼らを引きつければ、彼らはダウンフォースを失ってタイヤの温度も上がり、苦しくなるんじゃないかと考えました」
「勝利のもうひとつの要因はFCYだと思います。僕たちはタイヤの内圧と温度が上がってしまうとペースを上げられないという状況でしたが、厳しくなったタイミングでたまたまFCYが入ってくれたので、温度を下げることができました。FCYが2回入ったことは大きかったと思います」
FCYという不確定要素はもちろんのこと、19号車の猛追というピンチすら味方につけるという、老獪なレース運びを見せた山本。理想の展開に持ち込めた“会心の勝利”だったと振り返った。
「会心の勝利だと思っています。自分の描いていた理想の展開に持ち込めました」
「地元でポールポジションをとったことも、優勝したことも初めてです。もてぎの表彰台の一番高いところに立ちたいと思って12年が経ちましたが、ようやく表彰台のトップに立つことができました。そこに立たせてくれたチームの皆さん、牧野選手、そしてホンダとブリヂストンに感謝しています。また、牧野選手が病欠の時に代打で走っていただき、フィードバックをしてくれた武藤英紀選手にも感謝しています」
そして山本は、メインスポンサーであるスタンレー電気の前社長で、今年1月に逝去した北野隆典氏にも言及。ブランド名が“RAYBRIG”から“STANLEY”に変わって初めてとなる勝利を捧げたいと語った。
「今回はどうしても勝ちたかったです。今回はスタンレーブランドとしての初勝利ですが、この勝利は病気で1月にご逝去されたスタンレー電気の北野前社長に捧げたいです」
「チャンピオンを獲ったところはお見せできましたが、できればスタンレーブランドになって初めてNSXが勝ったところもお見せしたかったです。でも天国で見守ってくれていたと思います」
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