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特集

今年のモンテカルロはいつも以上に大変! ”4日間のマラソン”に向け、WRCチームはどんな準備をしたのか?

モンテカルロでの開幕を控えるWRC。motorsport.comはヒョンデ・モータースポーツがどのように準備を進めているかを取材した。

Adrien Fourmaux, Alexandre Coria, Hyundai World Rally Team Hyundai i20 N Rally1

 新たな技術規則とタイヤサプライヤーがハンコックに変わったことにより、世界ラリー選手権(WRC)開幕戦ラリー・モンテカルロへの各チームの準備は、近年で最も厳しいものとなっている。

 2022年にラリー1車両が導入されて以来、WRCにおいて最大の変化であり、モンテカルロに向けた事前テストで可能な限り最高の仕事をすることがチームにとってさらに重要となっている。

 ラリー1車両における重要な要素だったハイブリッドの廃止により、マシンは80kgも軽量化された。エアリストリクターのサイズは36mmから35mmに縮小される。

 結果として、マシンのパワーは130馬力ダウンするが、パワーウエイトレシオはキープされており、車体が軽くなった分コーナーでの俊敏性は大幅に向上。ハイブリッドのブーストが無くなったことにより、排気システム、カムシャフト、ギヤ比も適応するように変更されている。

 チームは現在、それぞれのコンディションでマシンがどのように反応するかを素早く理解する必要に迫られている。

 しかし、おそらく今シーズン最大の変化はハンコックタイヤの導入だろう。このタイヤがアスファルト、グラベル、雪上でどのような性能を発揮するかを学ぶことが、WRCチームのテスト計画の大きな部分を占めている。

 これらの変更により、”モンテ・マイスター”と呼ばれ、ラリー・モンテカルロで9度の優勝経験を持つセバスチャン・オジェ(トヨタ)でさえも、WRCのクルーは「これまでよりも準備不足になる」と指摘した。これはヒョンデのテスト開発リーダー、ジョルディ・リバも同じ意見だ。

「私は10年間WRCに参戦しているが、今回のテストは変更点が多いため、おそらく最も厳しいものになるだろう」とリバはmotorsport.comに語る。

All WRC teams face significant changes heading into the 2025 season, putting greater emphasis on testing

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Photo by: Hyundai Motorsport

 motorsport.comはラリー・モンテカルロの開催地であるギャップから30分ほどの距離にある南フランスに、ヒョンデのチームがどのように準備しているのかを取材するために向かったのだ。

「クルマは同じだが、ルールが大きく変わった」

 そうリバは付け加えた。

「クルマは軽くなり、ハイブリッドもなくなった。それは我々をもっと楽にしてくれるだろう。しかし、タイヤメーカーが変わったことで、また新たな挑戦が始まった」

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WRCのテストってどうやってるの?

 オジェによる準備不足を懸念するコメントは、WRCではテストが非常に限られていることに起因している。そのため、テストでのセッティングミスがラリーでの悲惨な結果をもたらしかねない。

 各チームには、ラリーに備えてヨーロッパで事前テストを実施するための日数が年間21日間割り当てられており、今年はイベントが1つ増えるため、テストプログラムを成功させなければならないというプレッシャーがさらに大きくなる。

 テストの割り当てに加え、各チームは自前の施設での無制限テストを許可されている。トヨタとヒョンデはフィンランドにグラベル・ベースを持っており、Mスポーツはカンブリア工場近くのグラベル・ロードを利用できる。

 しかし、マシンのセットアップが正しいかどうか、ドライバーが特定のラリーで直面するコンディションに対して快適であるかどうかを確認するためには、イベント前のテストを賢く配分し、利用しなければならない。

 今月初め、ヒョンデは南フランスを訪れ、クルーたちが開幕戦で戦うステージやコンディションに似たテストロードを選んだ。ドライバーのティエリー・ヌービル、オット・タナック、アドリアン・フルモーは、シーズンの幕開けに備えて重要な情報を収集するため、それぞれ異なる道で1日ずつハンドルを握った。

 単純なことのように聞こえるが、実際にはサーキットレースでのテストよりもはるかに複雑なロジスティクスが必要となる。ラリーでは、考慮すべき変数がはるかに多いのだ。

 まず、実施されるラリーと同じような特徴を持つ公道を選び、地元当局に道路閉鎖の許可を得なければならない。そして、ドライバーのテストや周辺住民にとって安全な環境を確保するために、通常は地元のモータークラブからマーシャルを調達しなければならない。では、チームはどのようにしてこのような仕事に取り組むのだろうか?

「ラリーは自信のスポーツなので、ドライバーにもっと速く走れると自信を持たせるようなことに取り組む必要がある」とリバは説明する。

「サーキットレースでは多くのシミュレーションを行なうことができるが、ラリーではコンディションに大きく左右される」

「我々は通常、実際のステージよりも要求が厳しい過酷な道を選ぼうとする。通常は道路のライブラリを入手し、行く場所や必要なモノによってどんな道路を選ぶか決める。最終的な決定権はドライバーにある」

「道路を閉鎖するということは、その日テストする道路周辺の住民に迷惑をかけることになるので、必ず地元当局の許可が必要なんだ。しかしここ(ギャップ周辺)のように、テストに来るチームに慣れている地域もある。そうなると、我々にとってより容易になるんだ」

Plenty of behind-the-scenes work is involved even before set-up can begin due to the logistical challenges involved with closing roads for rally car testing

Plenty of behind-the-scenes work is involved even before set-up can begin due to the logistical challenges involved with closing roads for rally car testing

Photo by: Hyundai Motorsport

 テスト地が決まると、チーム本部でドライバーたちとテスト計画を練り、どのアイテムやセッティングをテストするかを決める。これが実行に移されると、いよいよ路上を走ることになる。

 常設のピットガレージで作業するサーキットレースとは異なり、ラリーテストの大半ではメカニックやエンジニアは道端にテントを張って作業する。しかし今回取材した際は幸い、ヒョンデは山腹に切り開かれた村のワークショップを借り受けることができた。

 テストは通常、午前8時30分から始まり、午後6時に終了する。クルマがトラックから降ろされ、メカニックが最初のセットアップを終えると、ドライバーは本格的な走行を開始する前に最初の2回で道を覚える。

 この日の道路は雪と氷に覆われており、ラリー・モンテカルロの代名詞である最も過酷なコンディションでハンコックのタイヤを履いたi20 N Rally1がどのようなハンドリングをするかを理解する絶好の機会となった。

「最初の数回の走行で、ドライバーたちは路面とマシンに慣れる。特に最後に走ったのが別種の路面だった場合はね」

「それから本格的にテストがスタートするが、彼らはプロのドライバーなので、すぐにゾーンに入ることができる。だから、3本目までにアイテムのテストを始めることができる」

「テストがうまくいけば、通常は1日に200km以上走ることができるが、もちろん道の長さにもよる。 何か問題が起きたり、クルマに大きな変更を加える必要がある場合、最大で45分もロスすることもある」

「昼食でテストを止めないようにしているが、スティントが長いときはドライバーにも食事を取らせるようにしている。でも、メカニックやエンジニアがノートPCのそばにいる間に食事を取ることもある」

Fourmaux has already entered a rally for Hyundai in conditions similar to those he'll face on the Monte

Fourmaux has already entered a rally for Hyundai in conditions similar to those he'll face on the Monte

Photo by: Hyundai Motorsport

 一連の走行が終わると、ドライバーは即席のサービスパークに戻り、メカニックがマシンの変更を行なう。天候が変わりやすいモンテカルロでは、適切なタイミングで適切なラバーのタイヤを選択することが勝敗を左右する。また、今年はすべてのタイヤが新しくなるため、各コンパウンドがどのような性能を発揮するのか、多くのデータを得ることが今まで以上に重要となる。

「テストは常に重要だが、それ以上に学ぶべきこと、発見すべきことがたくさんあった」と現役ワールドチャンピオンのヌービルはそう語った。

「もちろん、1日のテストではすべてをこなすことはできない。いくつかの目標があり、それは基本的に達成できた。でも、モンテカルロに向けて完璧に準備できる人なんていないよ」

「いつもと同じように、1日で多くの距離を走った。多くのタイヤがあって、比較をする必要があったからだ。シャシーの面では、数年前から知っているクルマなので、序盤からかなり快適に走ることができた」

「(ハンコックタイヤは)新しいし、違う。それはより不安定なのは確かだ。だが我々はタイヤについて取り組みを続けるし、それはモンテカルロでも同じだ。タイヤメーカーとも協力して、より強力な製品にしていかなければならない」

ヒョンデは準備ができたのか?

 リバ曰く、モンテカルロに向けてハンコックタイヤに慣れる上で、3日間のテストは「十分ではない」とのことだが、チームはヌービル、タナク、そしてフルモーの情報収集には満足しているという。

 フルモーはMスポーツからの移籍組だが、すでにヒョンデで競技デビューを果たしており、12月に開催された10ステージのラリー・ナショナル・ハイヴェルナル・デュ・ヴォルイで、トヨタのカッレ・ロバンペラらを相手に優勝している。また、フルモーにとってはハンコックタイヤでの初実戦でもあり、彼はかなり快適だったと評している。

 しかしテストでの成果は、来週モンテカルロで始まる開幕戦で最終的に判断されることになる。

「満足はしていないけど、できる限りのことはした」とリバは付け加えた。

「モンテカルロは大きな冒険になる。スプリントイベントだと思うのは間違いだ。凍結した滑りやすい路面での、4日間のマラソンなんだ」

「パッケージは何とか(準備が)できたと思うが、十分な速さが出るかどうかはこれからだ。テストウイークでは、可能な限り良い準備をしようとした。でも3日間では十分ではない。ラリーでは、誰がベストな準備をしたのかがわかるだろう」

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