努力と実績が報われない……レッドブル昇格ならないガスリーを取り巻く状況は、”悲しい”ことなのか?
今季特に安定したパフォーマンスを発揮するようになり、アルファタウリのチームリーダーとしてのポジションを確立するガスリー。レッドブルからの”お呼び”がかからない現状は、彼にとって”悲しい”ことなのだろうか?
Pierre Gasly, AlphaTauri AT02, Sergio Perez, Red Bull Racing RB16B
Andy Hone / Motorsport Images
アルファタウリ・ホンダは、イタリアGP、そしてロシアGPと、2戦連続でノーポイントのレースが続いている。しかしその前を見れば、チームは13戦連続で入賞。非常に安定した成績を残してきた。
ガスリーはうち10レースで入賞し、ここまで表彰台1回を含む66ポイントを獲得する安定感を発揮している。さらに予選では予選Q3進出の常連となっており、しっかりとした速さも兼ね備えている。チームメイトの角田が5回の入賞、18ポイントの獲得に留まっていることを考えれば、ガスリーは今やチームリーダーとしてのポジションを確固たるモノとしていると言えるだろう。
しかし、来季のドライバー移籍市場では、ガスリーの名前が聞かれることはほとんど聞かれることはなかった。初期にはアルピーヌ移籍の可能性も僅かに取り沙汰されたものの、それもすぐに聞こえなくなり、アルファタウリの”親チーム”的存在のレッドブルへの昇格も、他のチームに移籍する可能性も、聞こえなくなっていった。
レッドブルは8月末に、来季もセルジオ・ペレスを起用し続けることを決定。その後、9月7日にはアルファタウリも、ガスリーと角田のラインアップを継続することを発表した。その発表がなされた際、誰もが当然のことであると考えた。
ではガスリーの将来はどうなるのだろうか? ガスリーはトロロッソ/アルファタウリで、合計3回の表彰台を獲得。2020年のイタリアGPでの勝利がハイライトであると言えよう。しかしレッドブルへの”復帰”を果たすことはできなかった。しかしガスリーは、姉妹チームであるアルファタウリに留まり、レッドブルに昇格することについての野心を間違いなく持っている。
イタリアGPの際、ガスリーはフランスのテレビ局Canal+のインタビューに、次のように語っている。
「トロロッソ/アルファタウリがF1にデビューしてから15年の間で、ドライバーとしては最高のシーズンを過ごしている」
「でも、(レッドブルへ)昇格するという点では報われなかった」
「そのことは悲しくて、少し苛立たしいのは事実だ」
「しかしそれが現状であり、僕の手には負えないモノだ。残念ながら、それは僕次第ではないんだ」
ガスリーは2019年、レッドブルのドライバーとして抜擢された。しかしチームメイトのフェルスタッペンと比較して成績が伴わず、シーズン半ばにアレクサンダー・アルボンと交代させられる形でトロロッソに降格させられてしまった。しかしそのアルボンも成績が振るわず、2020年限りでシートを失うことになってしまった。
レッドブルはそのため、2021年のドライバーとしてセルジオ・ペレスを起用。アゼルバイジャンGPでは乱戦を戦い抜いて優勝を手にしたが、特に予選では苦しむことが多い。これはガスリーやアルボンと同様だ。
しかしレッドブルは、2022年も引き続きペレスとの契約を延長することを決めた。このペレスについてガスリーは、最近のインタビューで次のように語っている。
「ザントフールトでのパフォーマンスを見ると、彼は予選Q1で脱落し、レースではチームメイトから1周遅れの8位に終わった。しかし、その日の”ドライバー・オブ・ザ・デイ”に輝いている。みんなが本当に理解していないことがあると思う」
そのペレスは、レッドブルのマシンに慣れるのは非常に難しいと率直に語っている。フェルスタッペンのドライビングに合ったマシンとなっているため、それを乗りこなすのは難しくなっているというのだ。これは、ガスリーとアルボンが直面したのと同じ課題であると言えよう。
Pierre Gasly, AlphaTauri AT02
Photo by: Charles Coates / Motorsport Images
では、ガスリーがレッドブルに在籍していた2019年の前半戦でのパフォーマンスと、今季のペレスのパフォーマンスを比較してみよう。ペレスは今季第12戦までに、104ポイントを獲得した。一方ガスリーは2019年の前半12戦で、わずか63ポイントの獲得に留まっていた。
ただ今年と2019年では、状況が大きく異なる。今季のレッドブルは、メルセデスと互角の勝負を繰り広げている。しかし2019年には、レッドブルの主なライバルはフェラーリ。メルセデスはずいぶんと先行しており、定期的にポイントを獲得するのは簡単ではなかった。
とはいえフェルスタッペンとの差を考えれば、今季のペレスよりも2019年のガスリーの方が大きかった。今季のペレスは、フェルスタッペンの52.1%のポイントを獲得した。しかし2019年のガスリーは34.8%だった。
チーム代表のクリスチャン・ホーナーは、2022年の契約延長を発表する前に、ペレスはレッドブルに溶け込み、チームプレイヤーとして見事な働きをしていると語っていた。今季のフランスGPでペレスは、フェルスタッペンの勝利をサポートする走りをしている。これこそが、レッドブルが今年必要としていた”チームメイト”の姿なのである。
Pierre Gasly, AlphaTauri AT02, Sergio Perez, Red Bull Racing RB16B
Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images
2022年はテクニカルレギュレーションが大きく変更されるため、マシンが一新されることになる。これに伴い、近年のレッドブルのマシンの課題と言えたコンセプトに起因する問題が改善される可能性がある。そうなれば、ペレスにとっては大きなチャンスとなるかもしれない。ペレス本人もベルギーGPの際、全てのドライバーがゼロからスタートすることを考えれば、そうなる可能性があると語っている。
しかしそのことは、ガスリーにとってはメリットとなることはほとんどないだろう。彼は今、ピークとも言える力を発揮している。しかし、チャンスが訪れるのを待つしかないのが現状だ。レッドブルの昇格する明確なルートがないまま、レッドブルの契約ドライバーでいつづけるということは、飲み込むのが難しいことと言えるかもしれない。
とはいえガスリーが2022年もアルファタウリのチームリーダーとして活躍を続ければ、レッドブルのシートを射止めることができるかもしれない。彼のパフォーマンスに説得力があれば、2023年にレッドブルがガスリーを連れ戻すことを望めば、それは理想的なタイミングかもしれない。
Pierre Gasly, AlphaTauri
Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images
ホーナー代表は、イタリアGPの際にガスリーについて次のように語っている。
「どんな可能性も除外することはない」
そうホーナー代表は語った。
「彼は非常に高い水準でドライブしているし、まだとても若い。彼は素晴らしい仕事をしている。だから2023年には、我々が選択できる複数の選択肢がある。今の状況にいる場合は、それはまさに望むべき状況だ」
問題は、ガスリーがレッドブルに戻るルートが開かなかった場合だ。他のトップチームは、すでに自らのグループ内で有望な若手を育成しており、将来のドライバー候補としている。そのため、ガスリーが行く場所は今やほとんどないようだ。
ガスリーはその状況を受け入れ、前述の通り「自分の手には負えない」ということを認識している。
「何が起きるかに集中し、チームと自分自身のための最善を尽くし続けることができるだけだ」
そうガスリーは語った。
「でも将来的にトップチームで働くチャンスがあれば、報われると確信している」
レッドブルが彼と長期的に契約を続けることを望んでおらず、ガスリーにとってそれ以外の選択肢が出現した場合、説得力のある交渉ができるだろう。彼はチームリーダーとしての役割を果たし、すでに勝利も掴んでいる。今やF1で最も一貫したパフォーマンスを発揮するドライバーのひとりとしてのポジションを確立しているのだ。
今は、努力と実績が報われず、本人も苛立たしい日々を過ごしているかもしれない。しかしその実力は、将来的には実を結ぶ可能性があると言えるだろう。
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