F1 メキシコシティGP

F1分析|レースペースから想像される、リカルドがターン6で角田を”撃墜”するに至った理由:F1メキシコシティGP

F1メキシコシティGPの決勝レースでは、角田裕毅とダニエル・リカルドが接触し、角田がリタイアするという事故が起きた。リカルドは接触の責任を問われペナルティを受けたが、レースペースを分析すると、リカルドが攻めた理由が想像できた。

編集: 2022/10/31 9:32

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Daniel Ricciardo, McLaren MCL36

 F1メキシコシティGPの決勝レース50周目に、アルファタウリの角田裕毅とマクラーレンのダニエル・リカルドがターン6で接触するという事故が起きた。レースペースを分析していくと、リカルドがターン6でオーバーテイクを仕掛けた、あるいは角田よりも良いラインを通ろうとした理由が見えてくる。

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 角田はメキシコシティGPの決勝レースの大半で11番手……入賞まであと一歩のところを走っていた。すぐ前にはマクラーレンのランド・ノリスがいたが、レース終盤にはその差は徐々に開きつつあった。

 一方で角田の後方からは、ソフトタイヤに履き替えたばかりのリカルドが猛烈なペースで迫りつつあった。そして真後ろにつき、50周目のターン6で、リカルドが角田のインを突いた。しかしこれは強引。角田は執拗にイン側のラインを閉めたわけではなかったものの、両者が交錯。アウト側にいた角田は弾き飛ばされるような格好になってコースオフし、さらにマシンにも大きなダメージが及んでいたため、ピットにはたどり着いたもののリタイアを余儀なくされた。

 リカルドはレース後に「あのコーナーでユウキをオーバーテイクするつもりはなかった」と語っているが、レーススチュワードはリカルドに非があるとして、レースタイムに10秒を加算するペナルティを科した。

F1メキシコシティGPレースペース推移:ノリス、角田、リカルド

F1メキシコシティGPレースペース推移:ノリス、角田、リカルド

Photo by: Motorsport.com / Japan

 当時のリカルドは、ソフトタイヤに履き替えたばかり。レースペースは角田よりも圧倒的に速かった。

 上のグラフは、マクラーレンのふたりと角田のレースペースの推移を、折れ線グラフにしたものだ。オレンジ色はランド・ノリス、グレーが角田で、イエローがリカルドである。

 角田はノリスとずっと同じようなペースで周回。対してリカルドは1スティント目を伸ばし、レース終盤になってソフトタイヤを履いたことで一気にペースを上げているのがよくわかる。

 これを考えれば、リカルドはターン6でなくともその後のメインストレートなどでオーバーテイクを完了できたはず……そう考えるのが自然だ。しかしセクターごとのペースを検証していくと、リカルドがあのコーナーでオーバーテイク、あるいはプレッシャーをかけた理由を想像することができる。

F1メキシコシティGPレースペース推移 セクター1:ノリス、角田、リカルド

F1メキシコシティGPレースペース推移 セクター1:ノリス、角田、リカルド

Photo by: Motorsport.com / Japan

 こちらのグラフは、レース中のノリス、角田、リカルドのセクター1のペース推移を折れ線グラフ化したものである。前半の折れ線は11周目から角田がピットインする29周目まで、後半のグラフはリカルドがピットストップを終えた45周目からふたりが接触した50周目までを表したものだ。

 これを見ると、角田のセクター1のペースは終始高値で安定しており、リカルドはこれに追従。ノリスは大きく遅れていたことがよく分かる。リカルドがソフトタイヤに履き替えた後も、古いタイヤで走行を続けていた角田は、健闘しているといえるだろう。実際レース前半には、角田はセクター1の全体ベストを記録していたタイミングもあった。

 このセクター1は、1km以上にも及ぶ長い長いメインストレートがあり、そのストレートエンドのターン1はこのコース最大のオーバーテイクポイントである。またセクター1にはこのターン1を含め、コーナーが3つしかない。

 セクター1が速いということは、角田のマシンはストレートスピードに優れたマシンであったということだろう。そういうマシンは攻略するのが実に難しい。

 いくらラップタイムが速いとはいえ、リカルドにとって角田は厄介な相手だったはずだ。実際、接触が起きる直前には、リカルドがターン1の飛び込みで角田に並びかけようとしたものの、オーバーテイクを仕掛けることはできなかった。

F1メキシコシティGPレースペース推移 セクター2:ノリス、角田、リカルド

F1メキシコシティGPレースペース推移 セクター2:ノリス、角田、リカルド

Photo by: Motorsport.com / Japan

 一方で上のグラフは、セクター2のペース推移である。これを見ると、角田のペースが最も遅く、逆にノリスが終始最も速かったということが分かる。

 ここから読み取れるのは、低速のパフォーマンス、つまりトラクションやダウンフォースは、マクラーレンの方が優れていただろうということ。ノリスとリカルドを比較しても、レース前半はノリスの方が終始優れていたことから、この2台でもセッティングが違っていたかもしれないということが想像できる。

 ただこのセクター2には明確なオーバーテイクポイントがなく、いくら速かったとしても順位を上げることには繋がりにくい。

 レース前半のノリスと角田は、まさにこのセクター1とセクター2の特性の差にによる、シーソーゲームのような展開だった。角田はセクター1でノリスとの差を縮めるが、セクター2ではノリスが逃げる……ノリスがセクター2で速いため、角田はDRSが使える背後1秒以内になかなか近付くことができず、セクター1が速くとも攻略することができない……そんな展開が続いたのだった。

 しかしレース終盤、ソフトタイヤに履き替えたリカルドは、セクター2でさらに大きなパフォーマンス差を示していた。ターン1で角田を攻め切ることができないのであれば、セクター2でなんとかしたい……あるいはセクター2でプレッシャーをかけ、角田がセクター1に完璧ではない状態で突入するように仕向けたい……そう考えるのは至極当然のことと言える。

 ただそれが行きすぎてしまい、リカルドは角田に激突。角田をリタイアに追いやってしまった。

 ただリカルドにはダメージがなく、接触の後も飛ばしに飛ばして他車を次々にオーバーテイク。7番手にまで浮上し、しかも8番手のエステバン・オコン(アルピーヌ)に12秒の差をつけてチェッカーを受けた。つまり角田との接触で受けた10秒のタイム加算ペナルティを帳消しにしてみせたのだ。しかも、ドライバー・オブ・ザ・デイにも選ばれたというのは、なんとも皮肉なことか。

 今回の展開は、2020年のイタリアGP決勝レース終盤のことを思い起こさせた。大混乱となったレースで首位を走っていたのは、アルファタウリのピエール・ガスリー。ガスリーのマシンはトラクションに優れており、コーナーの立ち上がりで後続のマシンを引き離し、その後近寄られてもオーバーテイクを許すところまではいかない……そんな状況がしばらく続き、見事トップチェッカーを受けたのだ。マシンの特性やセッティングの差が、勝負をほんのギリギリのところで決定付けた。そんな典型例だったといえるだろう。なおこの時もガスリーを追ったのはマクラーレン(ドライバーはカルロス・サインツJr.)だった。

 

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