レッドブル代表、ピットストップ規制で「逆に危険になる可能性」を主張。FIAの介入にライバルの関与疑う
レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、FIAが課した新しい規制により、F1のピットストップがより危険なものになる可能性があると考えている。
写真:: Steven Tee / Motorsport Images
FIAは、F1第8戦シュタイアーマルクGPを前に新たな技術指令を発行。自動化によるピットストップの高速化抑制に動いたが、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、ピットストップがより危険なものになると危惧している。
FIAの技術指令は、F1第11戦ハンガリーGPから有効となる。ホイールのナットが締め付けられたことが確認されてから、ジャッキマンがマシンを下ろすよう指示されるまでの時間や、ジャッキが降りてからドライバーがゴーサインを受けるまでの時間が、人間の反応時間に基づいたものであるかどうかが確認されることになるようだ。
一部のチームは、自動化されたシステムを使って反応時間を短縮し、ピットストップをより早く完了することで、アドバンテージを得ているのではないかと疑われていると見られる。
今季これまでのレースでは、レッドブルが圧倒的に速いピットストップ作業時間をマークしている。バーレーンGPでの1.93秒を筆頭に、ピット静止時間トップ6をレッドブルが独占しており、レッドブルはF1チームのピット作業におけるベンチマーク的存在となっている。
ホーナーはこの新しい技術指令が、レッドブルを遅くしようとするライバルのロビー活動の賜物だと確信している。
FIAはピットストップの規制に動いた理由について、”安全性に懸念がある”からだとしていたが、ホーナーはこれを疑問視しており、かえって問題を引き起こす可能性があると考えている。
「コンマ2秒の間、マシンを保持しなければならない。誰かがそのギャップを判断しなければならないというのは危険だと言えるのではないだろうか」
そうホーナーは語った。
「マシンをリリースする人がその判断をしなければならないが、それは十分に考えられたものではないと思う」
「F1は革新と競争の世界だ。ピットストップが2秒以下になることは驚くべきことで、我々はそれを奨励すべきなんだ。それをコントロールしようとすべきではない。そうでなければ、どこで止めればいいんだ?」
「私たちはガレージにどこから入ったらいいのか、ピットウォールのどこに座るべきなのか、どのボタンを押すべきかも教えてもらうことになるんじゃないだろうか」
ホーナーは、チームがピットストップを失敗した場合には重い代償を支払うことになるにも関わらず、なぜFIAがピットストップに介入する必要があるのかと疑問を呈している。
「ちょっとがっかりだ。クルマの安全性を確保するのは競技者の義務であり、ホイールが固定されていなかった時は、すぐにクルマを止めなくてはいけない」
「つまり、4つのホイールをしっかり安全に固定していなければ、残酷な罰を受けることになるんだ。技術指令が何を達成しようとしているのかは、非常に複雑だしよく分からない」
「だが競争状態にあって倒せない敵がいる時は、ライバルをなんとか遅らせようとするのが最も論理的であり、明らかにそれがここで起きているんだ」
FIAのピットストップに関する動きは、必然的にピット作業が速いという定評があるレッドブルが話題の中心となっているが、レッドブルとタイトルを激しく争っているメルセデスが、ルール変更を要求したのではないかという指摘もある。
メルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは、そのような事実はないと否定。一方で、自分たちが使用したいと考えていたシステムをめぐって、最近FIAとコミュニケーションをとったと認めている。
「我々が使用しているシステムに関連する安全機構について、最適化できないかどうかをFIAに問い合わせた」と、ウルフは述べた。
「それは3~4週間前だったと思う。そして、それは技術的な問題だった」
「それが何かのきっかけになったんだろうか? 私には分からない。しかし我々はそうした質問をしていた」
これまでにも、ライバルチームが使用しているデバイスを非合法化するために、ルール違反の可能性がある同様のシステムを自らFIAに提案するという手法は、F1の政治的な駆け引きでも使われてきた。
メルセデスは今季、すでにレッドブルのリヤウイングが「動いている」と言及。その結果、リヤウイングの剛性テストが前戦フランスGPから厳格化されている。
今季はメルセデスとレッドブルが激しくタイトル争いを繰り広げており、ここ数戦でメルセデスがやや劣勢に立たされている。もしメルセデスが手段を選ばずにレッドブルに追いつこうとしているのだとしたら……コース内外で相当余裕が無くなっているということだろう。
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