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【F1特集】レース戦略はどのように決められる? アンダーカット、オーバーカットとは?

F1の中継映像を観ている時、“オーバーカット”や“アンダーカット”という言葉に戸惑ったり、ドライバーと交信するストラテジストがピットウォールで何をしたりしているのかが気になったことはないだろうか? レース戦略がどのように決定されるのかをご紹介しよう。

Mclaren F1 team pit stop Monaco GP Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M

写真:: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 グランプリレースを勝つためには、ストラテジーが欠かせない存在になる。チェッカーフラッグを目指して全速力で走るという時代はとうの昔に終わり、タイヤデグラデーション(性能劣化)などが大きな要素となる現代F1では、ドライバーやチームメンバーは遥かに賢くなくてはならない。

 誰もがコース上でのオーバーテイクを好むものだが、レースを決定づける瞬間はマシンのコックピットに座るドライバーではなく、ピットウォールから生まれることが多いのだ。

 サッカーの監督や裏方のスタッフがリサーチと分析を元にストラテジー(戦略)を駆使し、選手を成功に導くのと同じように、F1チームのストラテジストもドライバーのために同じ事をしている。

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なぜF1チームはストラテジーが必要なのか?

 決勝レース中ドライバーは、ウェットレースにならない限り最低1回はピットストップを行なう必要がある。これは、順位変動を必然的に起こしレースを盛り上げるためのルールなのだ。

 F1の黎明期では、給油のためにレース中のピットストップを行なっていた。1957年のドイツGPでマセラティを駆るファン・マヌエル・ファンジオが1度のピットストップでレースを走りきって以降、1982年シーズンにブラバムが行なうまでは誰も行なわなかった。

 ブラバムは、搭載燃料を少なくしマシンを軽くすることでラップタイムを稼ぎ、レース中にピットで燃料補給とタイヤ交換を行なう方が優れたストラテジーだと証明した。このストラテジーは他チームも採用するようになったが、レース中の給油は1984年に禁止された。

 それから10年後、レースに“スパイス”を加えるべきだと判断したF1は給油を復活させた。復活に伴い大規模な安全対策が取られたものの、時には給油を失敗することもあった。マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)の父、ヨス・フェルスタッペンが1994年のドイツGPでピットストップ中、炎に包まれたのは有名な話だ。

 給油は2010年に再び禁止されたが、人気の高かった戦略的要素を保つべく、F1はレース中に2種類のタイヤ装着義務を設けることを決定した。

 タイヤは、そのコンパウンドによって性能や耐久性が異なる。柔らかいタイヤはグリップ力が高い反面、摩耗も早く耐久性に劣る。逆に硬いタイヤはグリップ力が低い、そのデグラデーションがストラテジーの核となる。

The McLaren team on the pit wall

The McLaren team on the pit wall

Photo by: Steven Tee / Motorsport Images

ストラテジーに影響を与えるモノとは?

 どう決勝レースのストラテジーを決めるかは、過去の統計とフリー走行や予選の走行データを含む膨大な量のリサーチやその分析に基づく。

 ストラテジストは、レースが行なわれる6週間ほど前になるとピットレーンの通過時間や平均ピットストップタイム、セーフティカーの発動率などのデータを収集する。

 このデータを元に、チームのマシンとライバルのペース差やデグラデーションの予測を行ない、レースに先立って基本的なストラテジーを決定する。

 サーキット入り以降は、フリー走行からタイヤの性能に関する生のデータを収集する。各チームはそれぞれピレリから供給される3種類のタイヤのデグラデーションデータを集め、レースシミュレーションに反映させ、ストラテジーを改良していく。

 タイヤデグラデーションは、タイヤの種類や温度のみならず、マシン重量も大きく影響を及ぼしている。決勝レース中は、燃料が消費され徐々にマシンが軽くなっていくため、タイヤデグラデーションの影響も軽減されていく。こうした要素も考慮に入れる必要があるのだ。

 土曜日の予選終了後は、ドライバーのグリッド位置や正確な天気予報(雨の可能性だけでなく、気温や路面温度、風速や風向きなど)が、最善策を決めることになる。

A Pirelli technician takes some data readings

A Pirelli technician takes some data readings

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

チームはどのようにストラテジーを決定するのか?

 レース週末の前に収集されたデータやセッション中のライブデータは、全て各F1チーム独自の予測アルゴリズムに入力される。変数調整を行ない、決められたレース周回数を最短で完走する時間を算出する。オラクルがスポンサーを務めるレッドブルを始め、現代のF1チームはAI(人工知能)やML(機械学習)などと言ったハイテク技術にまで手を伸ばしているのだ。

 こうした予測には、決勝レース中のトラフィックの影響も加味される。ドライバーが他のマシンの後ろで抜ききれずにラップタイムが遅くなる可能性を見つけ出す。また、トラフィックの少ないエリアにドライバーを送り出すために最適なピットストップタイミングを割り出す。

 シミュレーションでは、ピットストップに最適なラップやドライバーが走るべきラップタイムを含めた最適な「プランA」が提示される。また、プランAが想定通りに進まなかった場合の次善策として「プランB」も用意されている。

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The Safety Car Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

The Safety Car Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

なぜ決勝レース中にストラテジーが変わるのか?

 予想されたレースストラテジーはあくまでも出発点に過ぎない。チーム内だけでなく、ライバルも含めて思い通りに行かない要素は大量にある。

 レースストラテジーの中でも、ピットストップ後のアウトラップが最も重要な要素のひとつ。フレッシュなタイヤを履くドライバーをわざわざ集団の中で戦わせるのではなく、できるだけコース上で空いたエリアに送り出すようにするのだ。

 ピットウォールやガレージ、そしてファクトリーに分散するストラテジーチームは、決勝レース中は常に他のマシンペースやトラックポジションを監視。リアルタイムシミュレーションを行ない、ストラテジーの選択肢がどのように変化するのかを予測している。

 雲行きが怪しい決勝レースでは、チームは降雨により再びピットへ入らざるを得なくなる状況を回避するべく、ピットストップのタイミングを遅らせることもある。また、セーフティカーの出動にも対処する必要がある。セーフティカーが出動した場合には、コース上に制限速度が設けられるため、少ないタイムロスでピットストップを行なうことができるのだ。

 しかし、ストラテジーでの最大の要素は、タイムシート上でギャップはどこにあるのか、どのようにそれが変化しているのかを監視し、他のマシンを利用したり避けたりするためにストラテジーを適応させていくことだ。ここにアンダーカットとオーバーカットが登場するのだ。

Haas F1 team pitstop

Haas F1 team pitstop

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

アンダーカット、オーバーカットとは? どのように作用するのか?

 手の内を明かすのはできるだけ遅くするのが基本だが、ライバルがピットインした時点で、その動きに反応して戦略を変更するか、それとも当初のストラテジーを維持するかを決める必要がある。

 仮にチームのドライバーがライバルの後ろで抜きあぐねた場合、チームは“アンダーカット”を選択する。アンダーカットとは、ドライバーを直近のライバルよりも早めにピットインさせ、フレッシュなタイヤで速く周回することで、そのライバルが遅れてピットインした際に前へ出ようとすることだ。アンダーカットを成功させるには、ピットアウト後に他のマシンから生まれる乱気流の影響がない“クリーンエアー”の状態で走ることがカギである。

 一方、ライバルが先にピットインしてもドライバーのタイヤに余力が残っている場合、チームは“オーバーカット”を選択する。この場合、ドライバーは後にピットストップした際に先にピットインしたドライバーの前に出られるように、ピットインまでの数周に渡りプッシュする。

 このような動きが起こるたびに、チームは自分たちのマシンペースやライバルのペースを計算し、予測を行なう。

 こうした予測や蓄積された知識があったとしても、ドライバーが縁石にマシンを当てたり、メカニックがピット作業でミスを犯したり、タイミング悪く雨が振ってきたりすると、ストラテジーは一瞬にしてひっくり返ることになる。

 しかし、リスクヘッジは行なうものの、チームはこうした事態をストラテジーに組み込んではいない。何か問題が発生すれば、すぐにコンピュータシミュレーションで新たなシナリオを描き、その状況におけるチャンスの最大化を目指すのだ。

 
 
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