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ウェーバーが自叙伝で激白。ベッテルとの決定的な亀裂を生んだ“マルチ21事件”
セバスチャン・ベッテルとマーク・ウェーバー。レッドブルで5年にわたってコンビを組んだふたりの関係に決定的な亀裂を生んだ出来事、それが2013年マレーシアGPでの“マルチ21事件”だった。
Benjamin Vinel Rachit Thukral
公開日時: 2020/04/05 3:33
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2013年3月24日、F1マレーシアGP。レッドブルのセバスチャン・ベッテルは、チームオーダーを無視してチームメイトのマーク・ウェーバーをパスし、優勝を飾った。後に“マルチ21事件”と呼ばれる7年前の出来事を紐解いていく。
ベッテルとウェーバーは2009年からチームメイトとなったが、マルチ21事件が起きる前からその関係は微妙なものとなっていた。
というのも、ベッテルはレッドブルの育成プログラムが生んだ最初のスター選手であり、既に2010年から3年連続でドライバーズタイトルを獲得していた。一方のウェーバーは在籍年数こそ長いものの、あくまでレッドブルが外部から獲得してきたドライバーであり、2010年も最終戦までもつれる激闘の末ベッテルにタイトルを奪われていた。
そんなふたりの関係が完全に崩壊したと言えるのが、マルチ21事件が起こった2013年のマレーシアGPなのである。
予選でポールポジションを奪ったのはベッテルの方だったが、序盤からレースをリードしたのはウェーバーだった。2台のレッドブルは1-2体制を築き、3番手、4番手を走るメルセデスの2台を突き離しにかかっていた。
レース終盤に入ると、レッドブルはふたりのドライバーに対して“マルチ21”という暗号を使って指示を飛ばした。ちなみにこの“1”と“2”はふたりのカーナンバーを表している(ベッテル:1番、ウェーバー:2番)。つまり、ウェーバー、ベッテルのオーダーでこのままポジションをキープせよという指示だったのだ。
しかしベッテルはその指示に逆らい、残り13周のターン4でウェーバーをアウトからオーバーテイクした。
ベッテルのとった行動には各所から批判が殺到したが、一部からは「プロのアスリートはミハエル・シューマッハーのように、時に冷酷であるべき」とベッテルを擁護する声もあった。
数年後、ウェーバーは自身の自叙伝『オーストラリア人魂:僕のF1人生』の中でマルチ21事件のことについて次のように綴っている。
「マレーシアはタイヤに厳しいサーキットだったので、互いにバトルをすることは必ずしも有益とは言えなかった。それについては事前に話し合っていた」
「ラジオではチームが、このレースは僕のものになると言って安心させてくれた。でもセブ(ベッテル)が2ラップ以内に仕掛けてくるだろうということは分かっていた」
「僕は順位を守ろうとしたけど、彼はニュータイヤを持っていて、僕は持っていなかったんだ」
「僕は予選Q2のアタックで守りに入りすぎたので、もう1回アタックした。つまり僕には決勝用に3周オールドのタイヤしか残っていなかったけど、セブには新品が残っていたんだ。彼はもしかすると、指示を守ることよりも、タイヤを最大限使うことの方が大事だと感じたのかもしれない」
「彼がどう考えていたにしろ、僕が彼にオーバーテイクされた時、腹が立つというよりも、チームがこういう状態にまでなってしまったんだと思い、悲しかった」
■2012年のブラジルGPが“火種”だった?
2013年シーズンは、メルセデスのロス・ブラウンがルイス・ハミルトンとニコ・ロズベルグというふたりのエースドライバーをうまくコントロールしていたため、レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーのマネジメント能力に対して疑問が投げかけられた。
しかしそんなホーナーは、ベッテルがマルチ21事件で、2012年最終戦ブラジルGPの復讐をしたのだと考えている。
2012年のブラジルGPは、ベッテルとフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)によるタイトル争い天王山。しかしベッテルはスタートでウェーバーに幅寄せされたことで順位を落とした。それが結果的にターン4でブルーノ・セナ(ウイリアムズ)に追突されることに繋がり、ベッテルはスピンして最後尾に。結果的に6位まで挽回してタイトルを勝ち取ったが、危うくアロンソに逆転を許すところだった。
ホーナーは2018年にF1公式ポッドキャストの中で、マルチ21事件の後、ベッテルはウェーバーに“復讐”の件を話したようだと語っていた。
ホーナーはさらにこう続けた。
「(ふたりの関係は)かなりの緊張状態にあったと思う」
「あの時のマークは受け入れ難かったかもしれないが、彼が改めて当時のことを振り返った時、セバスチャンの方が少し速かったと思うかもしれない」
「だからマークは使える武器は使っていこうと考えたのだろう」
「我々はひとつのチームとして誠実にやっていこうとした。でも時々ミサイルのようなものが飛んできて、状況をますます難しくさせた」
「セバスチャンは2012年のブラジルGPのスタートで、マークにピットウォールへと追いやられたことに非常に怒っていた。その遺恨が翌年のマレーシアGPに繋がったんだ。あの時はマークが先頭を走っていて、新しいタイヤを履いたセバスチャンが後ろにつけていた。タイヤがダメになりやすい状況だったので、我々はふたりにポジションをキープするよう伝えたが、セバスチャンは『くそったれ』と思ったことだろう」
■ベッテル「ウェーバーを尊敬しない」
Mark Webber, Red Bull Racing and Sebastian Vettel, Red Bull Racing
Photo by: Charles Coates / Motorsport Images
マレーシアGPでのマルチ21事件の後、ベッテルとウェーバーは次の中国GPで顔を合わせた。しかしそこで行なわれたミーティングは紛糾することとなる。
ウェーバーの自叙伝にはこう記されている。
「(マルチ21事件の後)僕がセバスチャンと会ったのは、中国GPのレースウィークの木曜だった。僕は『僕たちは話し合う必要がある』と言ったんだ」
「そこで行なわれた会話は、僕たちのチームメイト関係の中でも最も残念な瞬間だったと言える。彼は僕がマレーシアの表彰台で言ったことに腹を立てていると言った。そして僕のことをドライバーとしては尊敬しているけど、人としては尊敬していないと言ったんだ」
「それが決定打となった。僕は『僕たちの関係はもうどうしようもない。以上』とだけ言った。僕はふたりでこの状況を解決できるかもしれないと思っていたけど、彼の考えを変えるためには誰かに間に入ってもらうしかないと感じた」
「でもクリスチャンは、(マレーシアGPで)セバスチャンのやったことは2011年のイギリスGPと2012年のブラジルGPの報復だとして、正当化しようとしたんだ。(ふたりの関係修復に向けて)これでさらに一歩後退してしまったかもね!」
ウェーバーは、ホーナーがレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコやレッドブル創業者のディートリッヒ・マシテッツを喜ばせようとしているだけだと確信し、自身の妻でありマネージャーでもあるアンと共に、ホーナーに説明を求めた。
すると、ホーナーからは意外な返答があったという。
「アンはチームがセブを叱責していないこと、マルチ21事件に関するセブへの罰則がなかったことについて、クリスチャンにその理由を尋ねた」
「するとクリスチャンは、マレーシアGPの数日後にチームがベッテル側の弁護士から2枚の手紙を受け取ったことを認めた。レッドブルは“不当な指示及びチームオーダー”をすることによって、ベッテルの契約に違反していたのだ」
「レッドブルは結果的にふたりのドライバーに優勝ボーナスを支給した。それも決して安い金額ではない。彼らはこの時に、チームが非常な面倒な状況にあることを確信しただろう」
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