【F1分析】巷で話題の『メルセデスF1最新型、サイドポッドない説』……本当にそんなことは可能なのか!?
メルセデスがバーレーンテストで“サイドポンツーンなし”のマシンを走らせるのではないかという噂がまことしやかに囁かれているが、果たしてそれは可能なのか?
写真:: Giacomo Rauli
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
バーレーン・インターナショナル・サーキットでの2022年F1開幕戦を前に、同地でプレシーズンテストが行なわれようとしている中、メルセデスがサイドポンツーンのないマシンを持ち込むのではないかという噂が、まことしやかに囁かれている。人々はそれがどのような形になるのかという話題で盛り上がり、ちょっとしたお祭り騒ぎとなっている。
サイドポンツーンが存在しないというのは現実離れした話だが、メルセデスがバルセロナテストに持ち込んだW13のパッケージを大きく変更し、より縮小されたサイドポンツーンのパッケージをバーレーンに持ち込むという可能性は十二分にある。
メルセデスが目指す方向性について想像するにあたっては、ウイリアムズの画像を見るのが一番良い。ウイリアムズFW44のサイドポンツーンとエンジンカバーは非常にきつく絞り込まれており、現状で最もサイドポンツーンが短いチームとも言えるだろう。
Williams FW44 floor cut
Photo by: Giorgio Piola
ウイリアムズの場合は、サイドポンツーン後方に開口部を設けている。吸気口から取り込んだ空気をその開口部から流すことで、周辺の気流を整える効果があると見られる。
またウイリアムズはこの細いボディを実現させるために、もうひとつ工夫した部分がある。それが冷却系の配置だ。レッドブルやアルファタウリ、マクラーレンなどはパワーユニット(PU)の上部もしくは周辺に大きな冷却装置を置くことでサイドポンツーンのサイズ縮小に繋げているが、ウイリアムズもそのトレンドに追従した形だ。これによって重心が上がってしまう可能性はあるが、F1では空力性能をいかに向上させるかという点が何よりも重要なのだ。
メルセデスはバーレーンテストでアップグレードされたマシンを持ち込むことになるだろうが、おそらくマシンの冷却システム自体には変更を加えず、冷却系をうまく配置することで、空力効率の良いパッケージづくりを目指してくるかもしれない。
Williams FW44 engine detail
Photo by: Giorgio Piola
もう一度ウイリアムズFW44を見てみると、燃料タンクやエナジーストアがモノコックとPUの間の三角形のようなエリアに収まっている。メルセデスはここ数年、このあたりのシャシーデザインについて興味深いアプローチをしており、ラジエターがサイドポンツーンにうまく収まるようにシャシーを形づくり、サイドポンツーンの全幅も短くすることに成功している。W13でもこのDNAは受け継がれているようだ。
そして、今季各チームが克服しなければいけないのが、サイドインパクトスパー(SIS)と呼ばれる衝撃吸収のパーツをどう取り付けるかという点だ。上下に存在するこのパーツの取り付け位置に関するレギュレーションはここ数年と比べて変更されており、それによりサイドポンツーンと吸気口をよりオーソドックスな形状とすることが望まれた。
ただ、昨年までの各チームはアッパーSISをサイドポンツーン前部の低い位置に取り付け、その周辺のボディワークを空力フェアリングにするという解決策を編み出し、その結果サイドポンツーンを小型化することに成功している。こういった考え方は、レギュレーションが変わった今でも各チームの頭の片隅に残っているはずだ。
Red Bull Racing RB16B
Photo by: Giorgio Piola
つまるところ、サイドポンツーンの全幅はSISに大きく依存しており、これを無視することはできないのだ。ウイリアムズFW44の場合、アッパーSISが吸気口内を水平方向に分断する役割をしており、これが後方に開口部を作るにあたって役立っている。
メルセデスがバルセロナに持ち込んだ車両は、他チームのように極端なデザインではなく、ボディワークがSISの外側をしっかりと包み込んでいるようなものだった。彼らが仮にバーレーンでサイドポンツーンを極端に絞り込んだマシンを持ち込んだとしても、衝撃吸収構造の存在を無視することはできないため、サイドポンツーンが“存在しない”、などということにはならないのではないだろうか。
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