Nostalgia

F1

美しきF1マシン:まるで戦闘機。美しくも苦戦した、フェラーリF92A

フェラーリが1992年シーズンに登場させたF92A。まるでジェット戦闘機のようなフォルムは実に美しかったが、それが好成績に繋がることはなかった。

田中 健一

編集: 2024/02/22 8:09

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

Jean Alesi, Ferrari F92A

Jean Alesi, Ferrari F92A

Jean Alesi, Ferrari F92A

Jean Alesi, Ferrari F92A

Jean Alesi, Ferrari F92A

Ivan Capelli, Ferrari F92A

Jean Alesi's Ferrari F92A

Engine and rear suspension detail in a Ferrari F92A

A Ferrari mechanic works on the back end of a stripped down Ferrari F92A

Nigel Mansell, Williams FW14B Renault, leads Riccardo Patrese, Williams FW14B Renault, Jean Alesi, Ferrari F92A, Ayrton Senna, McLaren MP4-7A Honda, Michael Schumacher, Benetton B192 Ford, Ivan Capelli, Ferrari F92A, Gerhard Berger, McLaren MP4-7A Honda, and Karl Wendlinger, March CG911 Ilmor, at the start

Michael Schumacher,  Benetton B192  and Jean Alesi, Ferrari F92A

Jean Alesi, Ferrari F92A, recovers from a spin

Ivan Capelli, Ferrari F92AT

Jean Alesi, Ferrari F92A

14

 速いマシンは美しいとよく言われる。しかし美しいマシンが速いとは限らない。その代表的な一例が、1992年のフェラーリF1、F92Aである。

 前年1991年シーズン、アラン・プロストとジャン・アレジというコンビを擁しながら1986年以来の未勝利となってしまったフェラーリ。シーズン終盤にはチームとプロストの確執が生じ、プロストはシーズン終了を待たずにチームを離脱してしまうという事態となった。

 そして迎えた1992年シーズン。残留のアレジのチームメイトとして迎え入れられたのは、レイトンハウスで表彰台を獲得するなど活躍したイワン・カペリだった。カペリはフェラーリにとって、久々のイタリア人レギュラードライバーであり、大きな期待が集まった。

 そのフェラーリが1992年用に開発したのがF92Aだ。このF92Aはスティーブ・ニコルズとジャン-クロード・ミジョーが開発を手掛けた1台。実に意欲的なマシンだと言えた。

 ノーズは前年モデルの643よりもさらにハイノーズ化が進み、フロントウイングはその先端に吊り下げられるようになった。サイドポンツーンは、開口部が前方に突き出すような独特形状となり、その姿はまるでジェット戦闘機のようだった。これは、乱れることが多い車体中心部から、サイドポンツーンをできるだけ離そうとした処理であり、空気力学的には理に適った方法だった。

 またこのサイドポンツーンはフロアから持ち上げられ、その間に隙間が設けられた。この隙間には乱れの少ない空気が流れるが、これによりフロア下の気流と、マシン上面の気流を分離。ディフューザーで効果的にダウンフォースを生み出そうとしたのだ。

 そういう意味でフェラーリF92Aは、空力コンセプトという点で言えば非常に優れたマシンだったのかもしれない。しかし、その効果を十分に発揮することはできなかった。

 その元凶の一番手とも言えるのが、フェラーリの”御家騒動”だ。F92Aを開発したミジョーは、シーズン早々に離脱。複雑な空力コンセプトを持っていたF92Aを熟成させるためには、それを考案したミジョーの頭脳が欠かせなかったのだ。後にハーベイ・ポストレスウェイトがフェラーリ入りし、F92Aの改良を試みるも、功を奏すことはなかった。

 また、最大の武器とも言えるダブルフロアも、マシンの戦闘力の足を引っ張ることになった。

 ダブルフロアを実現するために、サイドポンツーンを持ち上げた……このことにより、マシンの重心を引き上げることになってしまったのだ。近代のF1では、重心を下げるというのは鉄則。F92Aはこの部分で大きな足かせとなってしまったのだ。

 さらにフロアの剛性不足という問題もあったと言われる。フロアは通常、サイドポンツーンと一体化している。しかしカーボンの板1枚では、強大なダウンフォースが発生した際に、フロアがたわんでしまうのだ。これにより、ダウンフォースを生むどころか、ドラッグを増すことになってしまった。

 新開発のV12エンジンも、軽量化を目指したあまり剛性が不足。ギヤボックスの精度も悪く、V12のメリットを活かすことができなかった。

 そんなマシンを駆るアレジとカペリも、シーズンを通して苦しんだ。大雨となったスペインGPでは、アレジが水を得た魚のように走り、何度もスピンしながらも3位入賞。カナダでもアレジが3位に入った。しかし、表彰台はその2回だけ。カペリは入賞わずか2回だけという結果であり、最終戦を待たずしてチームを離れることになった。

 なおシーズン後半にはギヤボックスを横置きにしたF92ATに進化。アクティブサスペンションも搭載した。しかし戦闘力向上には至らず、カペリの後任として28号車のステアリングを握ったニコラ・ラリーニは、日本GPでデビュー1年目の片山右京(ヴェンチュリ・ランボルギーニ)にオーバーテイクされてしまった。

 こんな風に期待外れのシーズンに終わった1992年のフェラーリ。翌93年も未勝利に終わり、久々の勝利を手にするのは、1994年のドイツGP(ゲルハルト・ベルガー)まで待たねばならなかった。

 ただF92Aのコンセプトが完全に間違っていたわけではなさそうだ。このF92Aの登場から約20年後、2011年に登場したトロロッソのマシンは、サイドポンツーンの下部が急激に抉れており、F92Aのダブルフロアのようになっていた。そういう意味でF92Aは、登場するのが早すぎた……ということなのかもしれない。

Read Also:

あなたの意見が聞きたい!

Motorsport.comで何を見たいですか?

5分間のアンケートにご協力ください。

- Motorsport.comチーム

コメントを読んで投稿する

関連ニュース :

記事をシェアもしくは保存

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

前の記事 シーズン再開後は“超忙しい”? アルファロメオF1代表「追い上げる時間が足りない」

次の記事 コロナ危機はF1が”変わる”良い機会に? FE会長「今のF1の状況は普通じゃない」

Top Comments

コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?

View More & Comment

More from

田中 健一



F1分析|1ストップが正解だったアメリカGP決勝。大きかったアントネッリの”スタートダッシュ大成功”

F1

F1

アメリカGP

2 時間前

F1分析|1ストップが正解だったアメリカGP決勝。大きかったアントネッリの”スタートダッシュ大成功”



F1分析|アストンマーティン・ホンダのアロンソ、入賞狙えるパフォーマンスを発揮。しかし大ダメージ関係なしの怪

F1

F1

アメリカGP

21 時間前

F1分析|アストンマーティン・ホンダのアロンソ、入賞狙えるパフォーマンスを発揮。しかし大ダメージ関係なしの怪



アメリカGPでアストンマーティンのアロンソ激走。ホンダF1折原エンジニア「エンジンは一貫性を持って機能していた」

F1

F1

アメリカGP

1 日前

アメリカGPでアストンマーティンのアロンソ激走。ホンダF1折原エンジニア「エンジンは一貫性を持って機能していた」

More from

フェラーリ



ハミルトン、アメリカGPで表彰台を逃した原因はセットアップミス? フロントウイング大幅調整も追いつかず

F1

F1

アメリカGP

23 時間前

ハミルトン、アメリカGPで表彰台を逃した原因はセットアップミス? フロントウイング大幅調整も追いつかず



完全王手! アントネッリ次戦メキシコシティGPでタイトル獲得の可能性グッと高まる。その条件は?

F1

F1

アメリカGP

1 日前

完全王手! アントネッリ次戦メキシコシティGPでタイトル獲得の可能性グッと高まる。その条件は?



フリー走行最速だったフェラーリ、予選で”不発”だったのはなぜなのか。ルクレールとハミルトンが主張するふたつの問題

F1

F1

アメリカGP

1 日前

フリー走行最速だったフェラーリ、予選で”不発”だったのはなぜなのか。ルクレールとハミルトンが主張するふたつの問題

最新ニュース



F1分析|1ストップが正解だったアメリカGP決勝。大きかったアントネッリの”スタートダッシュ大成功”

F1

F1 F1

アメリカGP

2 時間前

F1分析|1ストップが正解だったアメリカGP決勝。大きかったアントネッリの”スタートダッシュ大成功”



ピアストリ、チームオーダーで序盤にノリスを先行させる。その背景をマクラーレンが説明「ここはランドが得意としているサーキット」

F1

F1 F1

アメリカGP

2 時間前

ピアストリ、チームオーダーで序盤にノリスを先行させる。その背景をマクラーレンが説明「ここはランドが得意としているサーキット」



タイトル争いに一縷の望み……骨折マルティン、マレーシアGP出場へのギリギリ回復プラン

MotoGP

MGP MotoGP

マレーシアGP

2 時間前

タイトル争いに一縷の望み……骨折マルティン、マレーシアGP出場へのギリギリ回復プラン



圧勝アントネッリと明暗分かれた8位ラッセル。メルセデスW17のアップデート後未だ表彰台なし「これほど大きく遅れているのは不思議」

F1

F1 F1

アメリカGP

3 時間前

圧勝アントネッリと明暗分かれた8位ラッセル。メルセデスW17のアップデート後未だ表彰台なし「これほど大きく遅れているのは不思議」

Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.

フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。

次の 2 つのオプションがあります。

購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします

広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード

お知らせの管理

登録