F1 アブダビGP

F1分析|セーフティカーが出ていたら、マクラーレンがタイトルを逃していたかもしれないアブダビGP。状況は2021年と酷似

F1アブダビGPの決勝レース終盤、セーフティカーが出動していたら、マクラーレンはコンストラクターズタイトルをフェラーリに奪われていたかもしれない。

田中 健一

公開日時: 2024/12/10 3:33

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Lando Norris, McLaren MCL38

Lando Norris, McLaren MCL38

写真:: Andy Hone / Motorsport Images

 2024年のF1最終戦アブダビGPは、マクラーレンのランド・ノリスがポール・トゥ・ウイン。この勝利で、マクラーレンは2024年のコンストラクターズチャンピオン獲得を決めた。ただこの勝利は、紙一重のものであった。そしてもしその勝利を逃していたならば、マクラーレンのコンストラクターズタイトルも露と消えていた可能性がある。

 マクラーレンはコンストラクターズチャンピオンを争うライバルであるフェラーリに対して21ポイント差をつけて、最終戦アブダビGPを迎えた。各チームが1戦で獲得できる最大ポイントは44であり、マクラーレンとしては24ポイント獲得すれば、フェラーリの結果に関係なく今季のタイトル獲得が決まるという状況だった。つまり優勝さえすればよかった。

 その優勝に向けて、予選ではフロントロウ独占。決勝でもスタート直後にオスカー・ピアストリがレッドブルのマックス・フェルスタッペンと接触して最後尾に脱落したものの、ノリスが先頭をキープ……しかも2番手のカルロス・サインツJr.(フェラーリ)を徐々に引き離していき、一度も首位を譲らないままチェッカーを受けた。

F1アブダビGP決勝ラップタイム推移

F1アブダビGP決勝ラップタイム推移

写真: Motorsport.com Japan

 このグラフは、アブダビGP決勝レースのトップ3のラップタイム推移を折れ線で示したものだ。フェラーリ勢は好ペースで走ったものの、ノリスはこれよりも少し速いペースで周回を重ね、徐々にではあるが差を開いていった。

 これだけ見れば、盤石の勝利であったように見える。ただマクラーレンは、あるシナリオを危惧していた。それは、”セーフティカー出動”である。決勝レース終盤、セーフティカーが出動するようなことがあれば、マクラーレンは非常に困難な立場に立たされた可能性があった。そして、もしノリスが優勝を逃していたならば、コンストラクターズタイトルすら失っていた可能性があった。

F1アブダビGP決勝ギャップ推移

F1アブダビGP決勝ギャップ推移

写真: Motorsport.com Japan

 こちらのグラフは、レース中の各車のギャップの推移を示したものである。ノリスは徐々にではあるものの、サインツJr.との差を開いていた。ただその差は最大でも7.6秒であった。

 しかもレース後半、サインツJr.の後方にいたのは、同じフェラーリのシャルル・ルクレールだった。その差は20秒以上……つまりサインツJr.は、セーフティカーが出動しても、ポジションを落とすことなくピットストップすることができる立場にいたわけだ。

 今回のレースのピットストップでのロスタイムは22秒(グラフ中の緑の点線)ほどだった。セーフティカー出動中ならば、ロスタイムは15秒(グラフ中の青の点線)ほどとされていた。

 つまりノリスは、ピットストップするとサインツJr.に先行されてしまう立場にずっといたことになる。これはレース終盤でもそうだった。

 レース終盤にセーフティカーが出動した場合、ノリス陣営としては難しい判断に迫られていたはずだ。タイヤ交換せずステイアウトすることを選択した場合、サインツJr.がタイヤを交換し、レース再開後に強烈なプレッシャーに晒されたかもしれない。逆にピットストップしてタイヤを交換したならば、サインツJr.がステイアウトして首位を奪われ、そのまま攻略できない可能性もある。もしかしたらレースは再開されず、そのままの順位でフィニッシュを迎えるかもしれない。いずれの場合でも、2位フィニッシュになってしまうことになっていた可能性があるわけだ。

 一方でサインツJr.としては、ポジションを失う可能性はゼロであり、ノリスとは逆の選択をすれば、一気に勝利の可能性を手繰り寄せることができた。

 しかもノリスが2位に落ちるというのは、タイトル争いでも致命的な状況だった。結果的にマクラーレン666ポイント、フェラーリ652ポイントで決着を迎えたわけだ。しかしもしノリスが2位に落ちていたならば、フェラーリ659ポイント、マクラーレン658ポイントとなったはずで、フェラーリに軍配が挙がっていた。

 そういう状況になったのは、ピアストリが後方に落ちてしまっていたからだ。結果的にピアストリは10位でフィニッシュしたので、ノリスが2位に落ちていても659ポイントでフェラーリと同点となっていたはず。ただ、フェラーリの勝利数が6勝に伸びていたはずなので、5勝のマクラーレンより上位にランクされる……つまりマクラーレンはタイトルを失っていたのだ。とはいえ、もしピアストリが9位に上がれば、ノリスが2位でもタイトルは安泰だった。

 マクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラは、次のように語っている。

「セーフティカーが出た場合、カルロスが我々と別のことをする可能性もあった。我々がピットインしなければ、彼は新しいタイヤを履く可能性があったのだ。逆に我々がピットインしたら、彼はステイアウトして先頭に立ち、追い抜く必要が生じただろう。だからこれについてナーバスになっていたのは確かだ」

2021年F1アブダビGP決勝ギャップ推移

2021年F1アブダビGP決勝ギャップ推移

写真: Motorsport.com Japan

 思い起こされるのは、2021年のアブダビGPだ。こちらのグラフは、そのレースの各車の差の推移を示したものである。もちろん多少の違いはあるものの、今年のアブダビGPのギャップの推移と、よく似ているのがお分かりいただけるのではないだろうか。

 このレースでは、メルセデスのルイス・ハミルトンとレッドブルのフェルスタッペンが、ドライバーズタイトルを争う最終決戦に挑んだ。そしてハミルトンが首位、フェルスタッペンが2番手で、レースは最終段階を迎えていた。フェルスタッペンは優勝しなければタイトルは不可能、しかもハミルトンから11秒以内離れており、まさに絶対絶命の状態だった。

 しかしそこで、他車のクラッシュによってセーフティカーが出動した。

 この時のハミルトンは、今回のノリスと同じ立場にいた。ピットストップすればフェルスタッペンに先行され、しかも残りは6周しかなかったため、レースが再開されない可能性もあった。一方でフェルスタッペンは、後方はチームメイトのセルジオ・ペレスであり、その差は27秒。ポジションを落とすリスクを負うことなくピットストップしてタイヤを交換することができた……まさに今回のサインツJr.と全く同じ立場にいた。

 そして結局レースは再開。当時のレースコントロールは、ハミルトンとフェルスタッペンの間にいる周回遅れのマシンだけをリードラップに戻す指示をしたのは、議論の的となったが、新しいタイヤを履いたフェルスタッペンは労せずして古いタイヤを履き続けるハミルトンの真後ろにつけ、そして最終ラップでオーバーテイクを成功させ、大逆転でチャンピオンとなったのだ。

 今回もこれと同じ結末になる可能性があったわけだが、そうはならなかった。

 ちなみに2024年のレース終盤、フェラーリが度々ピットストップの準備をしたことがあった。たしかにサインツJr.は、「パンクしたかも!」と訴えていたが、もしかしたらこれは、マクラーレンを翻弄し、混乱させるための陽動作戦だったのではないか……そう勘ぐりたくもなってしまう。

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