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レースに真剣に挑むって、本当に楽しいんだ。STEM Racing日本大会開催……スケールは小さくとも、本気のレーシングチーム同士の戦いがそこにはあった

6〜19歳を対象としたSTEM Racingの日本大会が開催。国内外から、様々なバックグラウンドを持つ様々なチームが参戦した。

Stem Racing Japan National Final

Stem Racing Japan National Final

写真:: STEM Racing Japan

 6月13日(土)と14日(日)の2日間、東京・有楽町にあるTokyo Innovation Baseを舞台に、STEM Racingの日本初となる全国大会が開催された。

 このSTEM Racingは、F1がサポートする国際STEM教育プログラム。中高生を中心とした学生チームがF1のようにチームを組織し、マシンの開発、マーケティング、プロジェクトマネジメントなどを遂行。そして最終的には開発したマシンの速さを、直線20mのコースで競う……というものだ。参加資格は6歳から19歳までである。

 こう聞くと、「なんだ遊びか」とか、「レーシングチームごっこか」と思われる方もいるかもしれないが、とんでもない! やっていることはまさにレーシングチームそのもの。超ハイレベルすぎて驚かされるほどだ。

 まずマシン開発にはCADやCFDをフル活用。出来上がったデザインを3Dプリンターでモデル化し、実際に走らせる。風洞実験にかけることもある。

Stem Racing Japan National Final

Stem Racing Japan National Final

写真: STEM Racing Japan

 実際に走らせてみると、また新たな問題も見えてくる。このSTEM Racingのマシンは、車両後部に取り付けたカートリッジから噴き出すCO2のエネルギーで進む。空気抵抗もさることながら、重量が重くては思うように加速しない……つまり制限値ギリギリまで余計な部分を削ぎ落とし、軽量化しなければいけないという。しかし闇雲に軽量化すると、高速走行することでマシンが瓦解してしまうことも珍しくない。最適なバランスが必要となるわけだ。

 スケールは小さくとも、やっていること自体はF1チームと何ら変わらない。しかもこのSTEM Racingは、ただ速いマシンを作ればいいというわけではない。

 STEM Racingのマシンを開発するには、小さなモデルカーといえど当然費用がかかる。大会などに遠征する時も同様だ。その費用は、スポンサー活動をして自ら集めてこなければいけない。スポンサーを納得させるために、自らのチームの魅力を上げるべく、情報発信をしたり、メディアに売り込んだりするのも欠かせない。厳しく言えば、露出のないレーシングチームにスポンサードする意味はないからだ。

 これらの業務を全てまんべんなくこなすことが、STEM Racingでは求められる。

 今回開催されたのは、そんなSTEM Racingの日本全国大会「STEM Racing Japan National Finals 2026」である。当然、レースの結果も重要であるが、この大会で勝つためには前述の様々な側面もしっかりこなすことが特に重要。今回はレース、設計・エンジニアリング、車検、企業活動、プレゼンテーション、ブランディングそれぞれについて評価が行なわれた。評価全体におけるレース結果の割合は22%にすぎず、たとえレースで勝ったとしても、他の評価が低ければ、総合1位を勝ち取ることはできない。

 最高峰プロフェッショナルクラスやそのひとつ下のデベロップメントクラスには、多数のチームがエントリー。高校やインターナショナルスクール、高専など同じ学校のメンバーで構成されているチームもあれば、車好きの幼馴染同士で組んだチームもあったりと、実に様々であった。人数も3人と最小規模のチームから、10名程度の大所帯まで幅広かった。タイから参加したチームもあった。

Stem Racing Japan National Final

Stem Racing Japan National Final

写真: STEM Racing Japan

 そんな中プロフェッショナルクラスで優勝を手にしたのは、アメリカンスクール・イン・ジャパン(ASIJ)高等部の学生たちによって組織された”Team Hayate”。メンバーのうち数人は昨年、タイのメンバーとコラボレーションしたチームでSTEM Racingの世界大会に出場。今年は満を持して同じ学校のメンバーでチームを結成し、見事日本大会を制することになった。また2位に入ったのは、女子だけで構成された東京拠点のチーム”WindBreaker”であった。

 この2チームは、10月にシンガポールで開催される世界大会への出場権も手にした。しかし、その渡航・滞在費も自分たちで確保しなければいけないという。

「僕らは世界チャンピオンという座を目指してきました。今回日本で勝てて嬉しいですが、もっと頑張っていかなきゃいけないと思っています」

 そう語るTeam Hayateの面々。彼らはF1チームで働きたいとか、何らかF1と関わる仕事をしたいとか、あるいは航空力学のエンジニアになりたいとか、将来に向けた夢を口々に語ってくれた。

「シミュレーションやっているとすごく楽しいです。空気の動きを見ていると……本来ならば見えない世界じゃないですか。それを扱うのにすごく憧れがあるので、本当に楽しいんです」

 未来のエイドリアン・ニューウェイはここから巣立っていくのかもしれない。また別のメンバーは、こんなことを語るのを忘れなかった。

「企業様やステークホルダーの皆様、もしTeam Hayateにご興味があれば、ご支援のほどよろしくお願いします」

「もちろんマシンなどへのロゴの掲出もいたしますが、我々は学生と企業様によるネットワーキングセッションなどのベネフィットも、今後作れればいいと思っています!」

 ぜひご興味をお持ちの方がいれば、SNSなどからTeam Hayateにコンタクトをとっていただきたい。

 デベロップメントクラスで上位に入った2チームも面白い存在だった。彼らは今年3月の日本GPの際に、フェリスホイール・ファンゾーンに出展されたSTEM Racingのブースを見て、今大会への出場を目指したという。準備期間はわずかに2ヵ月。その間にマシンをデザイン、制作し、実際に出場まで漕ぎ着けたのは素晴らしい。メンバー構成もそれぞれ異なる。

Stem Racing Japan National Final

Stem Racing Japan National Final

写真: Motorsport.com Japan

 クラス優勝した”轟レーシング”は、小学校時代の幼馴染3人で結成されたチーム。今は別々の高校に通っている面々だが、出場に漕ぎ着け、しっかりと結果を残してみせた。

「みんな車関係の仕事に就きたいと思っていて、全員のためになるからやってみようということで、このSTEM Racingを始めました」

「来年はプロフェッショナルクラスに出たいなと思っています。大学に行ってしまうと、年齢制限があって出られないんで。ただ3人ではキツいので……来年に向けてはメンバーを増やしたりしなきゃいけないかなと思っています」

Stem Racing Japan National Final

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写真: Motorsport.com Japan

 またデベロップメントクラス2位になったのは、東京都立産業技術高等専門学校の生徒が主体の”OneSHOT”。彼らはひとつ賞を獲る度に歓喜と号泣を繰り返した。そして彼らもやはり、今年のF1日本GPがきっかけとなり、STEM Racingのプログラムをスタートさせた。

「日本GPの時に、(プロフェッショナルクラス2位の)”WindBreaker”さんやマーキュリーレーシングさんにお話を伺って、楽しそうに活動しているのが分かりました。私たちは18歳ですから、残り少ないチャンスだとは分かっていました。でも諦めるのはもったいないと思って、校内のクルマ好きの人たちに声をかけて、参加しようと思いました」

 彼らはデベロップメントクラスで最も速いマシンを生み出し、「ファステストカー(最速マシン)賞」も手にした。開発担当エンジニアは、それが一番嬉しかったと興奮気味に語った。

「そこはマジで頑張りました! 僕は本当に大満足です」

「とにかく時間がなかったので、まだまだ詰められる部分がたくさんあったと思いますが、僕らのやり方が正解だったんだと思います!」

「来年はプロフェッショナルクラスに挑戦して、シンガポールに行きます!」

 CADでデザインし、CFDにかけ、3Dプリンターで造形……しかもスポンサーを集めたり、プレゼンテーションのための資料も作らねばならない。好成績を残すためには、まさに膨大な量の仕事をこなさねばならない。気が遠くなる。

 しかし彼らはそれを目を輝かせて、心底楽しんでいるように思えた。

 辛い時ももちろんあるだろう。でもモータースポーツに限らず、真剣に取り組むって楽しいことなんだ……そう痛感させられたイベントであった。

 そしてここから、未来のモータースポーツを担う存在が巣立つことを、願わずにいられない。

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