F1分析|恐ろしい男が遂に蘇った、その名はルイス・ハミルトン。VSCが出なくても勝てたハズ……その理由を分析する
フェラーリのルイス・ハミルトンは、F1バルセロナ-カタルニアGPの決勝レースで優勝。通算106勝目を挙げた。VSCのタイミングは絶好だったが、それがなくても十分に勝てただろう。
Lewis Hamilton, Ferrari
写真:: Dom Gibbons / Formula 1 via Getty Images
F1バルセロナ-カタルニアGPで、フェラーリのルイス・ハミルトンが勝利を収めた。フェラーリ加入後初勝利……しかも加入1年目の2025年シーズンは大いに苦戦した中で遂に掴んだ1勝であり、フェラーリやハミルトンのファンのみならず、世界中が感動したことだろう。
しかしまさに圧巻の勝利であった。
今季最強のメルセデス勢を向こうに回し、レース中ずっと攻めの走りが求められる3ストップ戦略を選択。他を圧倒するペースで走り、ライバルを粉砕。開幕から続いてきたメルセデスの連勝記録を6で止めてみせた。
圧巻だったのは、第3スティントと第4スティントのペースであるように見える。この2スティントのペースは、他より新しいタイヤを履いていたとはいえ、実に圧倒的なペースであった。これで勝利をもぎ取ったわけだ。
F1バルセロナ-カタルニアGP決勝レースペース推移
写真: Motorsport.com Japan
このグラフは、決勝レース中の上位5台のレースペースの推移である。これを見れば一目瞭然。赤の折れ線で示したハミルトンの第3スティント(赤丸の部分)と第4スティント(青丸の部分)のペースが、大きく抜け出しているのがよくお分かりいただけるだろう。
しかし実は、一番重要だったのは第2スティントのペースだった(グラフ緑丸の部分)。この第2スティントの走りがなければ、この第3、第4スティントもここまで活きてこなかったかもしれない。
ソフトタイヤでスタートしたハミルトンは、ミディアムタイヤを履く首位ラッセルを追いかけた。しかしジリジリを離され、3.5秒ほどの差がついたところでハミルトンがピットイン。ハードタイヤに履き替えた。
ラッセルもこれに反応し、翌周ピットインしてハードタイヤに交換。ハミルトンの1.5秒前方でコースに復帰した。
ただここからのスティントでハミルトンはラッセルに離されることなく周回を重ね、3秒以内の差をキープ。27周目にピットインした。
ラッセルとしてはこれに反応して2回目のピットストップをすることもできたが、そうはせず。もちろん2回目のストップを行なうにはまだ早すぎるという側面もあったが、そもそも差が小さかったため、翌周反応してピットインしても、ハミルトンの前でコースに復帰できる保証はなかった。
つまりハミルトンは、第2スティントでラッセルに必死に食らいついたことで、第3スティントと第4スティントの超ハイペースを実現することができたと言えるだろう。ラッセルが前にいたら、そうはいかなかった。
そして最終スティントに入る時には、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)のマシンがコース脇にストップしたことでバーチャル・セーフティカー(VSC)が出動。そもそもの目論見よりは少し早めだったが、ハミルトンとフェラーリはここを好機と見てピットイン……通常よりもタイムロスが少ない状況でピットに飛び込み、首位をキープした。そしてその後は圧巻のペースで逃げ切った。
しかしここで疑問が残る。アロンソのストップによるVSCがなかったら、ハミルトンは勝てなかったのだろうか? これを検証してみよう。
【仮定もしハミルトンがVSC中にピットストップしなかったら】F1バルセロナ-カタルニアGP決勝レースギャップ推移
写真: Motorsport.com Japan
こちらのグラフは、アロンソがストップしてVSCが出た際、ハミルトンがピットストップせず走り続けた……そんな仮定での各車の差の推移を折れ線で示したものだ。
40周目の時点でハミルトンには、「ここからが重要だ。今のタイヤであと7周走る」という無線が飛ぶ。つまり46周程度を走り切ったところでピットインする手筈だったはずだ。
ハミルトンの第3スティントを見ると、1周につき0.1秒ほどペースが落ちていく格好だった。そう仮定すると、ハミルトンのレースペースは、45周目には1分22秒1ほどになっていたと考えられる。そしてその1周後にアンダーグリーンでピットストップすると、計算上ではメルセデスの2台、そしてノリスに先行を許し、4番手でコースに復帰したはずだ。おそらく、ラッセルまでの差は10秒ほどだったと選出できる(グラフ赤丸の部分)。
その後に当該周にハミルトンが実際に記録したラップタイムを当てはめていくと、57周目にはノリスを抜き、60周目もしくは61周目にアントネッリとラッセルを抜いたはずである(グラフ青丸の部分)。
もちろん、これは一発で抜くことができた場合である。一発で抜けなかったとしても猶予は6周あり、やはりトップまで浮上できる可能性は十分にあったと結論づけることはできる。
しかもこの計算では、ハミルトンの最終スティントが短くなったことを加味していない。ハミルトンが第3スティントをチームの無線の指示の通りまで伸ばしていれば、最終スティントは短くなった……つまりもっと燃料が軽くなった状態でハードタイヤを履き、より良いペースで前を追いかけることができたはずであり、ノリスやメルセデス勢にもっと早く接近できたはず……つまりオーバーテイクする猶予は6周以上あっただろう。
しかし何よりもルイス・ハミルトンである。ノってしまった時には、誰にも手をつけられない。その勢いは、レース中の無線の端々からも感じられた。そう、ハマータイムだ。それを考えれば、ハミルトンであれば前を行く3台を、確実に全て平らげたことであろう。
恐ろしい男が、ついに目を覚ました。
もはや2026年シーズンは、メルセデスが圧倒するとは言えなくなった。わずか1勝だけでそんな風に空気感を変えてしまう……やはり恐ろしい男だ。
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