F1 アゼルバイジャンGP

F1で”勝てる”日本人を育てたい……トヨタの本気「すごい才能は、絶対どこかに埋もれている」……トムスのSFL参戦終了も、裾野を広げる活動の一環

トヨタ自動車のドライバー育成を率いる加地氏は「F1で”勝てる”日本人ドライバーを育てたい」と語った。

田中 健一

編集: 2026/09/30 3:01

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Bodywork for the Haas F1 car

Bodywork for the Haas F1 car

写真:: Alex Pantling / LAT Images via Getty Images

 トヨタは、F1で勝てる日本人ドライバーを本気で育てよう、見つけようとしている。

 話の始まりは、トムスが今季限りでスーパーフォーミュラ・ライツ(SFL)への参戦を終えることになった件について話したことだった。

 トムスは先日、チームのリリースで今年限りでSFLへの参戦を終了させることを報告した。トムスのSFLのプロジェクトは、トヨタの若手ドライバー育成の役割も担っており、その背景には一体どんな意味があるのかと、大きな話題になった。

TOM'Sは全日本F3時代も含め長らくSFライツを戦ってきたが、今年限りで参戦終了

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写真: Masahide Kamio

 これについて、WEC富士6時間レースの際にトヨタ自動車の加地雅哉TGRグローバル・モータースポーツディレクターは、こう説明してくれた。

「どのカテゴリーが本当に育成にふさわしいのかというのは、ずっと悩んできたんですよね」

 そう加地氏は語った。

「SFLはすごくクルマが良くて、スピードに関してもスキルアップできる領域にあることは間違いないです。その中でコンペティションとしてとか、オーバーテイクできるか、できないかというところも含めて、どのカテゴリーがベストなのかをずっと考えてきていました」

「ただ、全てのカテゴリーにたくさんの選手を乗せるというのは、経済的にも難しい。そのためにしっかりと絞り込みをしなきゃいけないとなった時に、SFLがどう活きてくるかなということを見てきました。その中で、今後のSFLの動きも含め、様子を見る時期に来たのかなと思います」

「今後も引き続き、トムスさんとも連携しながら、良いドライバーがああいうカテゴリーで切磋琢磨できるような、そういう仕組みを作っていきたいです」

「SFLアソシエーションさんには本当に感謝していますし、これからもそういう機会を上手く作れていけば、国内外のドライバーにとっての経験の場、あるいは評価の場として、SFLのようなカテゴリーを使っていくということは、今後もやっていきたいなと思います」

■なぜフォーミュラ・リージョナルなのか?

 SFLの代わりに今後トムスと共に参戦するのは、一部報道にもあった通りフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップ(FRJ)である。この選択にはいくつかの意味があるという。

 加地氏はこう説明してくれた。

「今はモータースポーツを志す子供たちの数が減ってきてしまっています。それを危惧しているんです。子供たちに色々チャンスを与える環境を、作っていきたいんですね」

「F4は既に6台にしています。でもその先が萎んでしまうと、なかなかチャンスが得にくくなってくる。そこを、(F4のひとつ上のカテゴリーである)フォーミュラ・リージョナルの台数を増やすなどして、チャンスを広げてあげたいと思っています」

 確かに世界の潮流を見ても、フォーミュラ・リージョナルの重要度は確実に上がっているように見える。例えば今季のF1を席巻しているアンドレア・キミ・アントネッリは、フォーミュラ・リージョナル欧州を卒業した後、FIA F3ではなくFIA F2に挑み、その後F1に辿り着いた。

中村仁や佐野雄城らトヨタの育成ドライバーはSFLから欧州のフォーミュラ・リージョナルに戦いの場を移した(写真は中村)

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写真: ACI Sport

 フォーミュラ・リージョナルを選んだ理由はもうひとつある。それはマカオだ。マカオに参戦し、海外の強豪ドライバーと対峙させたいと、加地氏は言う。

「フォーミュラ・リージョナルにはマカオがあります。そこでちゃんと腕試しできる機会を、ちゃんと作っていきたいんですよね」

 しかしマカオは今、同じフォーミュラ・リージョナルであっても、タトゥース製のマシンしか参戦できないことになっている。なぜタトゥース製のシャシーに限定されているのかということに関しては甚だ疑問ではある。

 一方で日本のフォーミュラ・リージョナルは、童夢製のシャシーを使う。つまりそのままの体制でマカオに挑むことはできないわけだ。これに関しては本来ならば制限する必要はないはずであり、改善を求めたいところである。

 そんな中でも加地氏は、童夢製シャシーを使う日本のフォーミュラ・リージョナルで戦うことで、異なるシャシーのマカオに挑む礎とすることはできるだろうと考えている。さらに、マカオに挑む価値は非常に大きいという。

現在はフォーミュラ・リージョナル車両で競われるマカオGP

現在はフォーミュラ・リージョナル車両で競われるマカオGP

写真: Macau GP

「タトゥースさんのクルマと、童夢さんのクルマが、そんなに大きく違うかといえば、そんなことはないです。パワーユニットも同じですし、エアロ性能もほぼ一緒です」

「もちろんマカオは特殊なコースですし、それが全てだとは全然思っていません。でも、欧州で活躍しているドライバーがそれなりの結果を出しているコースです。そこで走れば、今世界でどのくらいの位置にいるのかというのが、ある程度見えてくると思うんですよね。その良い腕試しのチャンスだと思います」

「ああいう特殊なコースはなかなか経験できないですし、ある意味クレイジーなコースではあります。そこで世界のドライバーが、同じコンディションで戦える良い機会なので……ぜひいずれ、その週末に日本のフォーミュラ・リージョナルのクルマが出られるようになるといいですね」

 なおマカオで使われているタイヤはピレリ。FRJも2027年からピレリタイヤとなる。それを使えるというところも、F1を目指す上では重要であろう。

■F1で勝てる日本人ドライバーを育てたい

 そしてその先にあるもの……加地氏は「F1で勝てるドライバー、世界最高のドライバーを”作る”ため」に、モータースポーツに挑む間口を広げたいと語った。前述の参戦カテゴリー変更も、その一環なのだ。

「僕たちは、裾野を広げていきたいんですよ。モータースポーツの入り口って、やっぱり狭すぎる。一般家庭で、年間に1000万円とか2000万円かけてカートを続けるなんてことはできないです」

「GRカートもそのひとつです。もちろん簡単ではないですが、経済的な理由でカートを続けることを断念しなきゃいけないということを、なるべく減らしていきたいんです」

GR KARTは相場よりも安い38万円で買えるとして話題に

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写真: TOYOTA GAZOO Racing

「本当にF1ドライバーを育てていこうと思ったら、今の裾野の規模ではうまくいかないです。欧州では、それこそたくさんの子供たちがカートをやってます。でも日本は、お金持ちの人たちだけがやれるスポーツで、すごく小さなパイしかないんです」

「その規模では、世界ナンバー1のドライバーなんて生まれないです。F1ドライバーになればいいわけじゃない。そこで勝てるドライバーを作らなきゃいけないんです」

「才能は、絶対にどこかに埋もれているはずなんです。それを探すためには、裾野を広げていけないといけません」

「我々も色々と考えています。僕らも魔法使いじゃないですから、すぐに全部をやることなんてできないです。だから、少しずつやりますけど……思っているのはそういうことなんです」

■トヨタ一丸となって後押し

 なおWEC富士戦の現場で、トヨタ自動車の中嶋裕樹副社長も、日本におけるモータースポーツを盛り上げるためにどうすればいいかと質問した際、こんなことを語ってくれた。

「今は日本のモータースポーツが、少し盛り上がってきていると思います。でもこれを一過性にするのではなく、若い人たちに広げていく必要があると思います」

 そう中嶋副社長は語る。

「手前味噌ではありますが、GRカートを低価格で提供したり、そういう裾野を広げていく活動は、少し上向いてきた日本のモータースポーツを、サステナブルにするすることに繋がると思うんです」

「だからひとつは、子供たちがカートからレースに親しむ、そういう文化が醸成されていくのが大事だと思います」

「そして、我々は今ハースF1と協力して色々やっていますけど、日本のドライバーが世界にチャレンジできる道を作ることも大事だと思っています。単純に今行なわれているレースが魅力的なのかどうかじゃなくて、これが子供たちにとっての夢になり、そこから未来への道がつながっていく……そういうことを一生懸命作っていく必要があると思います」

「時間はかかるかもしれません。でも、確実に進化していくモノだと信じていますし、それをトヨタとしては、会社を挙げてしっかりやっていきたいなと思っています」

 トヨタは、F1で勝てる日本人ドライバーを見出すことに、本腰を入れて取り組んでいる。

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