マクラーレンがフェルスタッペンのレースエンジニア、ランビアーゼを獲得した理由。そしてその影響とは?
レッドブルを離脱することになったジャンピエロ・ランビアーゼは、2028年にマクラーレンに加入することになった。このことにはいくつかの疑問が投げかけられているが、注目すべきポイントをいくつか紹介しよう。
Max Verstappen, Red Bull Racing with Race engineer Gianpiero Lambiase
写真:: Red Bull Content Pool
噂されていた通り、マックス・フェルスタッペンのレースエンジニアを長く務めてきたジャンピエロ・ランビアーゼがレッドブルを離脱することが発表された。ただ即座にチームを離れるわけではなく、「契約満了となる2028年にチームを離脱する」と発表されている……つまり、まだ1年半以上も先のことである。
その発表から数分後、マクラーレンもプレスリリースを発表し、ランビアーぜが2028年からチームに加入し、チーフ・レーシング・オフィサーを務めることが明かされた。
レッドブルからは、次から次へと重要人物が離脱している。そして引退の噂すら叫ばれるフェルスタッペンというスーパースターを繋ぎ止めておく上で、特に重要な存在だったランビアーゼまで離脱とは……一体何が起きているのだろうか?
本稿では、ランビアーゼの離脱に関連する、いくつかの注目すべきポイントをお知らせする。
■マクラーレンの賢明な補強だ:フィリップ・クリーレン
Photo by: Sam Bagnall / Sutton Images via Getty Images
ランビアーゼを採用することは、マクラーレンにとって非常に理に適った選択だ。レッドブルでトラックサイド・エンジニアリング部門の責任者として活躍してきたランビアーゼは、既に強固な基盤を持つマクラーレンのトラックサイド・オペレーション部門をさらに強化することになるだろう。
ランビアーゼはレッドブル離脱が噂された当初、アストンマーティン加入するのではないかとか、マクラーレンでアンドレア・ステラの後を継いでチーム代表に就任するのではないかといった憶測が飛び交った。しかしこれらには根拠はなかった。
マクラーレンが正式に発表したのは、ランビアーゼが就任するのは”チーフ・レーシング・オフィサー”という役職であるということ。ステラから代表の座を引き継ぐのではなく、その負担を軽減する役割を担うというのだ。
ロン・デニスやフランク・ウイリアムズなどのように、チーム代表がファクトリーとレースチームのあらゆる決定に関与する、いわば唯一の要となる存在だった時代は終わった。今やF1チームは1000人以上のスタッフを抱える規模になり、特にここ10年ほどの間にチームの運営は極めて複雑になった。チーム代表が全てを把握し続けることは、もはや不可能だ。
ステラ代表はそもそも、技術畑で頭角を表してきた人物。そのためチーム代表職と併せて、テクニカルディレクター的な役割も担っていた。ランビアーゼのような人材を迎え入れることで、ステラはより細かいサーキットでの業務の一部を、他の人に任せることができるようになる。ランビアーゼはレッドブル時代の同僚であったウィル・コートニーやランディ・シンらと共に、その役割を担うことになるようだ。
これはマクラーレンにとって、新レギュレーション下でもチームを強化し続けるための、懸命な補強であると言えよう。タイトル争いを繰り広げていた昨年終盤、マクラーレンは何度かミスを犯した。そういう意味で、チームの層が厚くなることがいかに重要かが分かる。
■ランビアーゼにとっても、マクラーレン移籍は理に適った選択:ロナルド・ヴォーディング
Oscar Piastri, McLaren
Photo by: Simon Galloway / LAT Images via Getty Images
ランビアーゼは長らくF1パドックで引く手数多のエンジニアであり、移籍するかどうかというよりも、いつ移籍するかという状況であった。そしてもちろん、何よりも重要なのは、彼がどこに行くのかということであった。
アストンマーティンやウイリアムズは、以前からランビアーゼに興味を持っていた。しかしチャンピオンチームであるマクラーレン加入という決断は、理に適った選択肢だったと言える。
今回の移籍は、マクラーレンが現代表のアンドレア・ステラの動向にかかわらず、リーダーシップを確固たるモノにしておきたいという、明確な意志を示している。ランビアーゼにとっても、これは魅力的なことだ。
アストンマーティンに加入した場合、ランビアーゼはチーム代表に就任するだろうと言われていた。しかし近年のこのチームの人事面は、安定性を示しているとはお世辞にも言い難い。おそらくアストンマーティンは、最近アウディの代表職を退いたジョナサン・ウィートリーを代表に据えることになるだろう。
一方でウイリアムズは、マクラーレンやアストンマーティンと比べて、チームの施設やインフラの面に改善すべき課題が多くある。今季開幕前のシェイクダウンテストにウイリアムズは参加できなかったが、ジェームス・ボウルズはまだやるべきことが多いと率直に認めている。
ランビアーゼはレッドブルで、様々な業務を率いてきた。そのため他チームに移籍したとしても、様々なボジションの仕事を担うことができる、非常に有能な人物なのだ。そしてチームの基盤が確固たるモノとなれば、体制に変化が起きたとしても、さらに上のレベルへとステップアップできる可能性がある。
近年の成績を見れば分かる取り、マクラーレンの将来性は高く、ランビアーゼにとっては居心地の良い場所になるだろう。そしてF1キャリアにおける新たな挑戦を行なう場所として、まさにうってつけのはずだ。
■レッドブルは、チームを根本から変革する必要がある?:エド・ハーディ
Andrea Stella celebrates Fernando Alonso's win at the 2012 European Grand Prix
Photo by: Sutton Images
レッドブルは低迷期にある。
レッドブルは2022年と2023年に圧倒的な強さでダブルタイトルを獲得。その後の2シーズンはコンストラクターズランキング3位に終わったもののそれでも立派な成績と言える。しかし2026年シーズンは開幕から苦しんでおり、序盤3戦を終えた時点でのパフォーマンスからすれば、ランキング3位は絶望的であり、場合によってはもっとポジションを落としかねない。
低迷の背景には様々な理由があるが、近年エイドリアン・ニューウェイ、ロブ・マーシャル、ジョナサン・ウィートリー、ウィル・コートニーなど、チームの中核を担う人物が次々と他チームに移籍。また長くチームを率いてきたクリスチャン・ホーナーやヘルムート・マルコらも去った。
そして今度はランビアーゼだ。特にランビアーゼは、チームのエースドライバーであるマックス・フェルスタッペンのレースエンジニアを長く務めてきた人物。その影響は計り知れない。
フェルスタッペンは今季から導入されたレギュレーションに大いに不満にを持っており、その将来に既に疑問符がついている。そこに長く支えてきたレースエンジニアが離脱するという事実は、フェルスタッペンがF1から退く決定的な要因になるかもしれない。しかもランビアーゼがマクラーレンに加入するのは、フェルスタッペンとレッドブルの契約が満了する2028年なのだ。
レッドブルのほぼ全てが、フェルスタッペンを中心に回っていることは周知の事実だ。フェルスタッペンが去った後、このチームはいったいどうなるのだろうか? セバスチャン・ベッテルがチームを去った後、フェルスタッペンを見出したように、再び才能あるドライバーを獲得することができるのか? あるいは改革ができず、チーム自体を売却してしまうことになるのだろうか? 全チーム代表のクリスチャン・ホーナーが、購入できるF1チームを探しているという話は、このところずっと聞こえてきているが……。
■ステラがフェラーリ入りだって? そんなのはデマだ:フランコ・ヌグネス
アンドレア・ステラがフェラーリに移籍するという噂があるが、それは根拠のない話だ。
ステラはザク・ブラウン(マクラーレン・レーシングCEO)と共にマクラーレンを復活させ、ランド・ノリスを擁してダブルタイトルを獲得するところまで引き上げたのだから。
ランビアーゼがレッドブルを離れ、マクラーレンに加入するからといって、ステラの後任としてチーム代表に収まるわけではない。彼が就くのは、チーフ・レーシング・オフィサーという役割なのだ。
非常に尊敬されている技術者であり、几帳面な人物であるステラは、リーダーシップをその人間性によってチームをまとめ上げる能力が高く評価されてきた。2028年にランビアーゼが加わる際、ステラは自身が現在担っている責任の一部のみを引き継ぐ予定であり、その責任は従来のチームリーダーの役割とは一切関係ない。
ならば、なぜステラはフェラーリに行く必要があるのだろうか?
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