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F1分析|どうなる、F1タイヤウォーマー廃止計画。難題に直面するピレリのタイヤ開発

F1は2024年からタイヤウォーマー廃止を予定しているが、ドライバーたちからは危険だと主張する声もあがっている。果たしてこの計画はどうなるのだろうか。

Pirelli tyres allocated to Red Bull are sorted into blankets in the paddock

写真:: Simon Galloway / Motorsport Images

 2024年から、タイヤウォーマーの廃止を予定しているF1。しかし、ドライバーたちからはこの動きに否定的な声も出ている。

 タイヤサプライヤーであるピレリは、以前からタイヤウォーマーの全面廃止に向けて取り組んでいる。サーキットでチームが消費する電力が減るという持続可能性の面と、タイヤウォーマー輸送のコスト削減になるという点が、F1がウォーマー廃止に取り組んでいる理由だ。

ピレリが直面する時間制限

 今年7月に、実際に2024年からタイヤウォーマーを廃止するかどうかの投票が行なわれることになっている。F1とFIAの両方がウォーマー廃止を支持したとしても、最低5チームの同意が必要となる。

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 それまでの間にピレリはドライバー、チーム、FIAが満足するタイヤを開発し、テストを行なわなければならない。それは時間との戦いであると同時に、試せるサーキットも限られている。

 投票までにピレリが使えるテストはわずか3回。バーレーンGPとスペインGP、そしてイギリスGP後にそれぞれ一部チームと2日間のテストが予定されている。

 ピレリのF1及びカーレース責任者であるマリオ・イゾラは「タイヤウォーマーを廃止するというアイデアは何年も前から話し合っていることだ」と語る。

「FIA、F1、チーム、ピレリ、プロモーターが、2030年までにカーボンニュートラルを達成するという共通の目標を掲げている。スポーツをより持続可能なものにするためにはどんなステップも重要であり、そのひとつがタイヤを温めるために電気を使わないようにすることだ」

 イゾラ曰く、タイヤの加熱温度引き下げや保管期間の短縮により、2022年の時点で10年前と比べて電力消費は半分になっているという。タイヤウォーマーの廃止は、その次のステップなのだ。

 なお、フルウエットタイヤについてはすでにタイヤウォーマーなしで使用できる新タイヤが第6戦から実戦投入される。これはフルウエットについては特別なケースとすることが合意されたためだ。

 ピレリは冬の間に、ドライバーたちが使用を嫌がる傾向にあったフルウエット用タイヤの開発を優先。比較テストで良い結果が得られたために、導入に至った。

 しかしタイヤウォーマーを廃止した上で、ドライバーがピットを出てすぐにプッシュすることができるようなスリック、およびインターミディエイトタイヤを開発するのは、フルウエットよりもはるかに難しい。

 フルウエットタイヤは雨でも機能するよう作られており、作動温度領域も低く設定されている。元々、タイヤウォーマー廃止のハードルは低かったのだ。

プロトタイプタイヤの現状

Sir Lewis Hamilton, Mercedes, wrapped in a tyre blanket

Sir Lewis Hamilton, Mercedes, wrapped in a tyre blanket

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

 現在開発が進められているプロトタイプタイヤの状況は、例えばウエットコンディションでドライタイヤに履き替えるのが早すぎて、タイヤが最適な状態になるまで何周かコースをウロウロしているようなものだという。ウォームアップがとにかく遅いのだ。

 最新バージョンのタイヤを試した数少ないドライバーのひとりであるルイス・ハミルトンはmotorsport.comの取材に「タイヤウォーマーなしでテストしたけど、どこかの段階で事故が起こるだろう。安全面では間違った判断だと思う」と語った。

「タイヤを機能させるためには何周も走らなくてはいけない。ウォーマーをなくせば、より持続可能で環境にやさしいものになるという主張があるが、実際には、タイヤの温度を上げるために燃料を多く使っているだけだ」

「それよりも心配なのは、タイヤを変えて出ていくときだ。とてもヒヤヒヤする。他の人と簡単にぶつかってしまう。だから無意味だ」

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 ハミルトンほどのドライバーが危険だとコメントするのは、PRの面で悪夢と言えるが、イゾラは「ルイスは2月の初めにポールリカールでタイヤをテストした」と説明する。

「あの時期はかなり寒かった。そして明らかに、最終バージョンではないタイヤをテストしていたんだ」

「彼のコメントは理解している。ドライバーはピットレーンを出て、安定したグリップを発揮するタイヤを装着したマシンを運転することに慣れている。だから、彼らにとってもまったく異なるアプローチなのだ」

「アウトラップで10秒遅いクルマがいたら、考慮しなければならない速度差が生じていると言える。それはフェアなコメントだ」

 ピレリは現在、6種類のコンパウンドをドライ用のスリックタイヤに用意している。タイヤウォーマーを廃止するためには、これらを全て作り直す必要があるだろう。

 しかしイゾラがより大変だと考えているのは、タイヤの内部構造の変更だ。

「タイヤが冷えている状態でスタートすると、少しは内圧を落とせるが、それほど大きくはない」

「ピットレーンから出れば、すぐにタイヤがプッシュされるからね。だから低い内圧でそのストレスに100%耐えられる構造を作り上げる必要がある」

「ウォームアップがうまくいくかどうか、温度が安定した時にオーバーヒートしないかも確認する必要がある。だから、すべてのコンパウンドを再設計する必要があるんだ」

 もちろん、ピレリがサプライヤーとして参加しているカテゴリーを含め、世界中の多くのカテゴリーでタイヤウォーマーは使われていない。

 F1直下のカテゴリーであるF2でもタイヤウォーマーは使われていないため、なぜF1ではタイヤウォーマーの廃止が難しいのか、疑問を持たれることも多い。

 しかしイゾラは、その疑問に対しては次のように語った。

「私は、F2にはタイヤウォーマーがいらないタイヤを供給しているが、F1とは何が違うのかという質問を非常によく受けてきた」

「その差は1周あたり10秒だ。つまりF1マシンがタイヤにかけるエネルギーに換算すると、別世界の話なのだ」

 タイヤのウォームアップに時間がかかれば、1度のピットストップでロスするタイムが大きくなるため、レース戦略にも大きな影響を及ぼす。そして7月の投票では、それも重要なファクターになるだろう。

 注意しなければならないのは、イギリスGP後にテストされるタイヤは最終バージョンではないということだ。7月の投票では、その時点の情報をもとにするしかない。

 イゾラは「今、適切なレベルにあるのか、それともウォーマーなしでショーに影響を与えないタイヤを開発するためにもっと時間が必要なのか、我々はすべてを決定することになる」と7月の投票について語った。

「もうひとつ重要なのは、昨年は素晴らしいチャンピオンシップだったということだ。多くのアクションがあり、様々な戦略があり、1ストップ、2ストップが混在していた。それこそ観客が見たいものだった」

「つまりタイヤウォーマーなしでも現行タイヤと同じ特性を発揮できるタイヤを提供したいのだ。これはさらなる難題だ」

投票の後はどうなる?

 もしウォーマーの廃止が決まれば、ベルギーGPとイタリアGPの後に様々なチームによるテストセッションが予定されており、日本GPとメキシコGPではすべてのドライバーが金曜日にプロトタイプに挑戦することになる。

 F1マシンがレース週末にタイヤウォーマーなしで走るのは、この数十年で初めてということになるだろう。最終スペックに近いタイヤを走らせることになるため、非常に貴重な走行となるはずだ。

 一方で、タイヤウォーマーの廃止が否決された場合はどうなるのか不透明だ。その後のテストで、2025年のタイヤウォーマー廃止を見据えてプログラムが継続されるのか、それともピレリが2024年に向けて現行タイヤの改良を進めることになるのだろうか。

 各チームとも、タイヤウォーマーの廃止を拒否しているわけではない。『タイヤウォーマーが廃止されても構わない。しかし新しいタイヤがその役割を果たす必要がある』という意見が一般的である。

 アルピーヌのオットマー・サフナウアー代表は「ウォーマーを禁止する前に、タイヤが正しい基準を完全にクリアしているか確認する必要があると思う」と語った。

「ピレリはウォーマーを必要としないウエットタイヤを開発したと聞いている。だがみんなすでにウォーマーは購入しているのだし、コストの削減にはならないよ」

「輸送費は少し節約できるかもしれない。だがそんなに大きくはないから、ウォーマーがなくても安全で良いものだとみんなが納得するまで、ウォーマーは使うべきだと思う」

 
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