F1

エネルギー管理を”自己学習”する現代F1パワーユニット。複雑すぎて人間では最適なコントロールはできない??

FIAのニコラス・トンバジスによれば、現代のF1パワーユニットは実に複雑であるため、その最適なデプロイメント戦略を、人間が判断するのは極めて難しいという。

Ronald Vording

Ronald Vording

編集: 2026/08/08 1:02

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Charles Leclerc, Ferrari, Lewis Hamilton, Ferrari

 2026年からレギュレーションが一新されたF1。特にパワーユニット(PU)における電動パワーの割合が増えたことで、エネルギーマネジメントの重要性が高まり、抜きつ抜かれつのバトルが繰り広げられるようになった。

 バトルが増えたことついては、ファンからは概ね好評であるとF1は主張している。しかしドライバーたちの多くは、この新レギュレーションに批判的な声を発している。

 このエネルギーマネジメントについては、議論を呼ぶシーンもいくつかあった。

 例えばベルギーGPでは、マクラーレンのオスカー・ピアストリが自身のPUに驚かされたという問題を指摘した。ピアストリは予選で、チームメイトのランド・ノリスに比べてストレートでタイムを大幅に失ったが、チームは当初、その理由を説明できなかったのだ。

 この日の夕方に行なわれた記者会見でチーム代表のアンドレア・ステラは、2台のPUの設定はほぼ同じであったと説明。そしてPUの自己学習機能について注目していると明かした。

 この自己学習機能は、いわゆるAIとは異なる。しかし1周ごと、あるいは走行中にもPUがエネルギーマネジメントを学習していく、先見性を持つアルゴリズムを採用している。理想的なエネルギーマネジメントから逸脱した場合にこのアルゴリズムが発動し、周回の残りにおける最適なエネルギー配分を決定するのだ。

 しかし問題点がふたつある。

 まずはドライバーが全てをコントロールできるわけではないということだ。ステラ代表曰く、このシステムはドライバーの入力に敏感であり、ドライバーの操作が依然として重要な役割を果たすと説明した。

 ふたつ目は、ドライバー自身がPUの挙動に驚かされることがあるということだ。ピアストリはベルギーでの状況について、こんなことを語っている。

「最悪だ。他に言いようがない。予選グリッドがコンピュータの挙動によって決まるなんて、レースとして最悪だ」

人間がこれらのパラメータを合理的に制御できるとは思えない

Lewis Hamilton, Ferrari, Oscar Piastri, McLaren

Lewis Hamilton, Ferrari, Oscar Piastri, McLaren

Photo by: Alex Bierens de Haan / LAT Images via Getty Images

 FIAのシングルシーター部門ディレクターのニコラス・トンバジスは、ドライバーたちがこういった自己学習機能に不満を抱いていることを理解していると語った。

「確かにその通りで、彼らの意見は理解できる」

 そうトンバジスは語った。

「彼らの意見は、エネルギーが限られているため、いかに効率的にエネルギーを管理するかが重要になるという事実からきているのだと思う。そしてそのためには、様々な戦略を駆使する必要があるのだ」

 こういう状況を踏まえると、PUの自己学習機能を単純に禁止し、ドライバーがステアリングホイールのボタンで完全に制御できるようにすべきではないかという考えも出てくる。そもそもF1のスポーティングレギュレーション(競技規則)には、「ドライバーはF1マシンを単独で、かつ補助なしでドライブしなければいけない」と明記されている。自己学習機能により、ドライバーが”補助”を受けているようにも思える。

 しかしトンバジスは、自己学習機能を禁止するのは、あまりにも単純な考えだと語る。

「そこまで極端なことはしないだろう」

 トンバジスはそう語った。

「まず第一に、ドライバーが好きな時に好きなだけ(電動パワーを)オンオフできるとしたら、コーナー出口ですぐにエネルギーを使い切ってしまうだろう。そうなると、人々が不満を漏らしている影響は、さらに顕著になるはずだ」

 言い換えれば、ストレートの最高速度にすぐに到達してしまい、スーパークリッピングの頻度も増すということだ。

「次に、1周ごとに使える、または回生できるエネルギー量、いわゆるSOCデルタ(充電状態の差)などに制限がある」

 そうトンバジスは言う。

「これは、バッテリーの大型化競争、つまりチームがより大型のバッテリーを開発するような事態を防ぐための制限だ。チームがバッテリーの大きさを拡大させ、その結果車両の重量がさらに重くなるようなことは避けたかったのだ」

 これらの制限と、現代のPUの複雑さゆえに、人間が最適なエネルギー戦略を決定するのは、極めて困難だとトンバジスは考えている。

「人間がこれらのパラメータを、全て合理的に制御できるとは思わない」

■解決策はあるのか?

Nikolas Tombazis, FIA

Nikolas Tombazis, FIA

Photo by: Kym Illman / Getty Images

 F1は現行のレギュレーションに関して、2028年にかけて段階的に変更。最終的にPUにおける電動モーターとエンジンの出力比を40:60にすることを決めた。しかしピアストリは、この調整では現行PUの問題を解決できないだろうと指摘した。

 一方でトンバジスは、2028年に向けた変更によって状況は改善され、ドライバーはマシンをコントロール下に置くことができるようになると考えている。

「電気を使う量が大きく、スタート時にバッテリーが満充電の状態を期待できない場合、エネルギーマネジメントはとても重要になる」

 そうトンバジスは語った。

「オスカーは非常に賢いドライバーだと思うし、彼は現在の状況を的確に把握していると思う」

「(電気とエンジンの出力比の配分が)再調整されれば、状況が改善されると信じている。完全に解消されるかどうかは分からないが、確実に良くはなるだろう」

 トンバジスは最後に、2026年のPUは、FIAが理想としていたモノよりも複雑であり、関係者の不満も理解できると語った。

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