F1
”ミニ”スカートを実現するため? F1チームがサイドポンツーンをこぞって「ダウンウォッシュ」にする理由
フェラーリが”バスタブ”とも呼ばれたインウォッシュ型のサイドポンツーンを捨て去ったことで、F1のトップチームの全てが、ダウンウォッシュ型のコンセプトを採用することになった。
Matt Somerfield Jonathan Noble
編集: 2023/06/16 13:34
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

今年のモナコGPでは、メルセデスがサイドポンツーンの形状を大変更。これまでの”ゼロポッド”と呼ばれていたコンセプトを捨て、多くのチームが使っているダウンウォッシュ型を選んだ。またスペインGPではフェラーリも、それまでのバスタブ型を諦め、やはりダウンウォッシュ型を採用。これにより、グリッド上のほとんどのマシンが、ダウンウォッシュ型のサイドポンツーンを備えることになった。
このダウンウォッシュ型のサイドポンツーンには、どんなメリットがあるのだろうか?
サイドポンツーンの上面の気流は、その部分で何が起きているかということが最も重要なわけではない。その形状が、マシンの他の部分にどのように作用しているのか、それが最も重要視される。
マクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラによれば、サイドポンツーンの幅を広げてダウンウォッシュ型にすることにより、その下部にアンダーカットを設けられるようになり、かつてのグラウンド・エフェクトカー時代の”スカート”と同じような効果を発揮できるようになるという。
かつてのグラウンド・エフェクトカー時代には、フロア下の気流を外部の乱流から守るために、フロア端にはスカートが吊り下げられ、気流の流路を確保していた。
「単純に”ダウンウォッシュ”だとは言わない。幅が広いサイドポンツーンと言うことができるだろう。実際このサイドポンツーンは、フロアと非常によく作用するコンセプトだと思う」
ステラ代表はそう語った。
「簡単に言えば、このサイドポンツーンは”ミニ”スカートのような役割を担っているんだ」
「空力学的に言えば、幅広のサイドポンツーンは、フロアの吸引力を手助けする。フロアの吸引力と、マシンへの荷重と最大限に高めるには、これなしではいられない。そういうコンセプトだ。そして全チームがその方向に収束しているというのは、非常に明らかなことだ」
前述の通り、以前のグラウンド・エフェクトカー全盛期には、サイドポンツーンの下に沿ってスカートを設け、フロア下を密閉。これにより、フロア下で発生するダウンフォースを高めていた。しかし現在では、フロアの最低高に制限が存在するため、当時のようなスカートを設けるのは不可能。ただ、フロア下で起きていることについての一般的な理論は、当時も現在も同じと言える。
ステラ代表が言う幅広のサイドポンツーンは、フロントタイヤによって生み出される後方乱気流に対処する手段だと見なすことができる。これは、以前のレギュレーション下でディフレクターが行なっていた仕事と同様だ。しかし、その乱流をボディワークから切り離すための設計の自由度は、それほど高くない。
しかしサイドポンツーンでうまく気流を制御することができれば、フロントタイヤで生み出された乱気流をサイドポンツーンの側面やフロア端を通して、フロア下のスカートを生み出してダウンフォース発生を助け、リヤタイヤで生み出される乱流をも制御し、ディフューザーへの悪影響も軽減できる。
もちろんこれらの解決策は、1980年代のグラウンド・エフェクトカーで見られたような直接的で極端なモノではない。しかし、チーム間の差が小さくなっている今日のF1では、そこで得られる利益は実に重要なのである。
フェラーリは風洞実験を進めていく中で、このダウンウォッシュスタイルのサイドポンツーンの効果が明らかであることに気付き、アプローチの変更に取り組んだということだろう。
現在のF1には、予算制限が課されているため、各チームが使えるリソースは有限である。そのため、別のコンセプトに切り替えることを決断するには、時間がかかる。
フェラーリでドライバーコーチを務めるジョック・クレアは、次のように語る。
「我々は誰かがやったことを真似ているわけではない。彼らがやったことを見ているだけだ。そして風洞に戻って、それが機能するのか確認する」
「そうやって出来てきたモノが、今のマシンに反映されている。それが機能すると判断したからだ。結局のところ、我々は科学に従っているだけだ。そして空力には素晴らしい部分があり、それがこのスポーツの素晴らしい部分だ。それが、我々がF1を戦う理由でもある。私の場合は30年にもなる。毎日が異なり、毎年異なり、そして全てのクルマが違うから、これをやっている。そして我々はまだ学んでいるし、問題を解決する方法は無数にある。それを全てカバーすることなんて絶対にできない」
フェラーリにとって、バスタブ型を捨て、ダウンウォッシュ型に変更することは、いくつか妥協を強いられることになった。
例えば、インテークの形状と位置は維持されたが、サイドポンツーンとフロアの関係性という面では、これまで行なってきた作業が意味をなさなくなるわけだ。
しかし、マシンのパフォーマンスを最適化する作業が続いていかないというわけではない。他チームがこの部分に積極的に修正を加えてきていることを考えれば、パフォーマンスを向上させる余地は間違いなくあるはずだ。
しかしアストンマーチンやウイリアムズは、昨シーズンの途中でそれまでのコンセプトを捨て、ダウンウォッシュ型を採用した。そしてそれを、今シーズンにかけてさらに最適化させてきた。
Ferrari SF-23 Detail
Photo by: Giorgio Piola
フェラーリはおそらく、来年もダウンウォッシュ型を採用する可能性が高い。今回の変更でフェラーリは、側面吸収構造を覆うために大きな膨らみを設けなければならなかったにも関わらず、インテークの下に深いアンダーカットを形作った。それも、この解決策が空力性能を向上させる方法であると見出したと考えられる証拠だと言えよう。
ただフェラーリが、気流を車体の中心に流す”インウォッシュ”を完全に排除したわけではなさそうだ。デザイン変更前にサイドポンツーンの上に存在していた”バスタブ”は完全に消え去ったわけではなく、溝のような形となってエンジンカウルに沿うように存在している。これは、依然としてインウォッシュの考え方を維持しているためであるはずだ。
現在のF1マシンの多くは、サイドポンツーンをダウンウォッシュ型にするとともに、エンジンカウルに段差を設けている。しかしフェラーリはこのデザインを嫌い、エンジンカウル後端の冷却用開口部を小さく抑えるべく、先細りのレイアウトを好んでいる。
ただこの領域は、マシンのパフォーマンスやドライバビリティを向上させるための重要な一歩であると、フェラーリは考えているようだ。クレアは、次のようにも語る。
「今回のアップグレードは、我々の空力担当者が、我々のシャシーとマシンのDNAに合わせて、機能させようとした証だ。これは、そのための第一歩にすぎない」
「0.5秒とか0.7秒といったような大きな効果があるモノではなく、せいぜい0.2秒か0.3秒といったところだろう。しかし良かったのは、バルセロナで0.2秒の効果だったということだ。バルセロナは、マシンの弱点が露呈するサーキットだ。ここに来て、弱点を隠すことはできない」
関連ニュース:
- 2023年F1、サイドポンツーンのトレンドは? ダウンウォッシュ型が最大勢力も、バスタブ型増える
- 開幕戦から差は縮まっていない? レッドブルF1、アップデート投入メルセデスの攻勢を楽観視
- メルセデスF1、サスペンションに大きな可能性を見出す? 弱点が2024年の武器になるか
- 強いレッドブルがあるのは偶然じゃない! ホーナー代表「敗北に痛みを感じ、努力してきたからこそだ」
- ハミルトン、Appleと制作中の自伝映画は“憧れ”の「アイルトン・セナのドキュメンタリーみたいにできたら良いね」
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
コメントを読んで投稿する
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 なるほど。これがF1ゲームの今か! 6月16日発売の『F1 23』をVRで体験してみた。F1ファンなら“意外に”走れる?
次の記事 レッドブル独走の2023年、F1のルール変更介入は無い? 接戦の”演出”は「不公平な操作だ」と運営トップが明言
Top Comments
コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?
View More & Comment

More from
Matt Somerfield

F1メカ解説|8種類のリヤウイングと14種類のビームウイングを投入したマクラーレン……2025年ダブルタイトルを目指し「デザイン上のリスク」を冒す
F1
F1 2024/12/24
F1メカ解説|8種類のリヤウイングと14種類のビームウイングを投入したマクラーレン……2025年ダブルタイトルを目指し「デザイン上のリスク」を冒す

F1メカ解説|2026年からの新レギュレーションF1マシン、デザインの自由度が増した? FIAが発表した新たなレンダリングを検証
F1
F1 2024/12/17
F1メカ解説|2026年からの新レギュレーションF1マシン、デザインの自由度が増した? FIAが発表した新たなレンダリングを検証

F1メカ解説|RBがシーズン最終戦に投入した”2025年に向けたテスト”用フロントウイング。その狙いは?
F1
F1 2024/12/15
F1メカ解説|RBがシーズン最終戦に投入した”2025年に向けたテスト”用フロントウイング。その狙いは?
最新ニュース

アロンソ、大ダメージを負ったマシンで母国戦完走……その判断は自分自身で?「フィニッシュした後は1速で走った。皆の熱気を感じたかったんだ」
F1
F1 F1
スペインGP
8 時間前
アロンソ、大ダメージを負ったマシンで母国戦完走……その判断は自分自身で?「フィニッシュした後は1速で走った。皆の熱気を感じたかったんだ」

マルティン、サンマリノ急落5位は“腕上がり”が原因「大チャンスを逃してしまった」手術判断は次戦オーストリア後
MotoGP
MGP MotoGP
サンマリノGP
9 時間前
マルティン、サンマリノ急落5位は“腕上がり”が原因「大チャンスを逃してしまった」手術判断は次戦オーストリア後

F1分析|幸運だっただけじゃない。アントネッリ、自らの判断でピットに飛び込み勝利をもぎ取る……20歳の驚異的な決断力。最速ノリスは不運|F1スペインGP決勝
F1
F1 F1
スペインGP
9 時間前
F1分析|幸運だっただけじゃない。アントネッリ、自らの判断でピットに飛び込み勝利をもぎ取る……20歳の驚異的な決断力。最速ノリスは不運|F1スペインGP決勝

「無事に戻って来れてラッキーだった」ブレーキペダルが底に……ハミルトン、市街地コースで危険なトラブル発生。序盤にガレージへ
F1
F1 F1
スペインGP
10 時間前
「無事に戻って来れてラッキーだった」ブレーキペダルが底に……ハミルトン、市街地コースで危険なトラブル発生。序盤にガレージへ
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録