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コメンタリー

F1の未来のために。2003年の”トラックの掃除屋”ルノーが残した教訓

新型コロナウイルスによる危機の中で、いかにコストを削減し、F1を魅力的なものにするかという議論がなされている。2003年に導入されたルールはそういった措置が機能する証拠だと言える。

Fernando Alonso

Fernando Alonso

LAT Images

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 フェルナンド・アロンソがF1での初勝利を挙げた2003年のハンガリーGPの際、ルノーのチーム代表だったフラビオ・ブリアトーレは、チームのモーターホームのステップから筆者に手を振り、モーターホームに招き入れた。

 彼の顔には笑みが広がっており、「言いたいことがあるんだ。この勝利を世界中の主婦に捧げたいね!」と話した。

 彼がこうしたコメントをした背景には、この年に導入されたレギュレーションが関係している。年間のテスト日数制限を受け入れたチームは、代わりにレースウィークの金曜日朝に2時間のテスト走行が許されたのだ。

 ミナルディやジョーダン、ジャガーといったチームに加え、ルノーもテスト制限を受け入れ、この制度を利用した。

 これに対し、当時マクラーレンのチーム代表だったロン・デニスは、そうしたチームを「トラック・クリーナー(路面の掃除屋)」だと揶揄したのだ。

 ルノーは2時間の走行枠をうまく活用し、1997年以来となる優勝を飾った。ブリアトーレの発言は、デニスのコメントに対し、皮肉まじりにやり返したものだったわけだ。

 前年は表彰台獲得が一度もなかったルノーは、アロンソが1勝した他、2位を1回、3位を2回獲得。ヤルノ・トゥルーリもドイツGPで3位表彰台を獲得した。ルノーの成功が示したように、巧妙なルールで成功していないチームを手助けするという考えは、勢力図をかき乱し、ファンを楽しませるようなレースをするのに役立つのだ。

 このルールは翌年に調整され、前年のトップ4以外のチームが金曜フリー走行に3台目のマシンを走らせることが許可された。このルールによるアドバンテージはそれほど大きくなく、やがて競争力の低いチームを支援しようとする優遇措置はフェードアウトしていった。

Antonio Giovinazzi, Alfa Romeo Racing C39

Antonio Giovinazzi, Alfa Romeo Racing C39

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 それ以降、小規模チームがトップチームとのパフォーマンス差を縮めるのを手助けし、ショーを改善しようとするようなレギュレーション変更は行なわれていない。むしろ、F1が行なったほとんど全ての決定は、トップチームのアドバンテージを広げる結果となっている。

 例えば、分配金の支払いがビッグチームに有利な仕組みとなっていることや、ストラテジー・グループではビッグチームの方が発言権が大きいこと、コストが増大し、裕福ではないチームが実質的にチャンスがないことなど……上位3チーム以外はレースに勝てていないのも不思議ではない。

 しかしF1も、新型コロナウイルス後の世界で”新しい普通”と向き合うことになる。ここ数週間、2003年と同じように、あまり成功できていないチームを押し上げようとするアイデアが受け入れられているのを聞くと、胸が高鳴ってしまう。

 2021年の予算制限をめぐる議論は、非マニュファクチャラー系チームにとってあまり勝敗につながらないはずだ。だが、少なくとも他のアイデアが、彼らが番狂わせを引き起こす”鍵”になるだろう。

 FIAやFOM(フォーミュラワン・マネジメント)、チームによって評価されているコンセプトの中で最もエキサイティングなのは、空力開発時間を”スライド制”にすることだ。

 簡単に言えば、コンストラクターズチャンピオンに輝いたチームは翌年、風洞とCFD(流体コンピュータ解析)作業に費やすことができる時間が最も短くなり、最下位だったチームは最も多く、作業が許可されるということだ。

 このアイデアは、バックマーカーが突如ワールドチャンピオンになれるほど劇的な”ゲームチェンジャー”ではないが、順位が下のチームになればなるほど、良いアイデアを見つける可能性が高くなるため、少なくともチーム間の差を縮めることにつながるはずだ。

Alex Albon, Red Bull Racing RB16

Alex Albon, Red Bull Racing RB16

Photo by: Andrew Hone / Motorsport Images

 レッドブルのチーム代表であるクリスチャン・ホーナーは、2021年シーズンまで現行マシンが使われることについて、「開発の機会がより多くなることで、マシンの改善ができる。特にチャンピオンシップのオーダーが低いチームのマシンが速くなる可能性がある」と語った。

 コロナウイルスのパンデミック前は、ビッグチームやF1のボスたちでさえ、過激なコンセプトのルールを支持するのは想像できなかった。しかし今は、人工呼吸器開発の一環としてルノーのスタッフがレッドブルのファクトリーで働くなど、数ヵ月前には考えられなかったことが受け入れられている。

 全ての関係者が、事態を改善する必要があるということを容認しつつあるようだ。

 F1が対処する必要があるひとつの問題は、トップ3チーム(メルセデス、フェラーリ、レッドブル)とその他のチームの間の、予算とパフォーマンス、両面での大きな溝だ。

 FIAのジャン・トッド会長が、新規則の導入をできるだけ遅らせたくないと考えているのも、それが理由だ。当初は2021年に導入される予定だった新規則だが、新型コロナウイルスの影響を受け、2022年に導入が延期されている。

「今、新規則の導入延期についていくつかの根拠があるのは明らかだ。いくつかのチームが(導入延期を)プッシュしているが、2022年よりも先に遅らせてはいけない」と、トッドは語った。

「2021年にルールを変更するその意図は、大小チーム間の差を減らし、オーバーテイクを改善し、より良いショーを実現するためだったことを忘れてはいけない。我々が物事を変えたいと思ったのには、明確で強力な理由があった」

 しかし空力開発時間をスライド制にするというアイデアに、危険がないとは言えない。特に今は、チーム間の協力関係がF1にとって大きな頭痛の種となっているのだ。

 すでに、予算制限を回避するための巧妙な手法として、ビッグチームが競争力を高めるためにカスタマーチームのリソースを悪用する可能性について、警鐘が鳴らされている。

 下位チームと連携することにより、上位チームが直近のライバルよりも開発時間を多く取ることができてしまえば、問題がさらに悪化する可能性がある。

F1 2022 rules

F1 2022 rules

Photo by: Formula 1

 また、ルールを導入するタイミングも重要だ。チームが新たなルールを理解しているタイミングで制度が導入され、開発時間に差が生まれれば逆効果になってしまうかもしれない。

 しかしそうした問題が、F1が優れたアイデアを放棄するための言い訳になってはいけない。F1が再開された時、10チーム全てが残り、誰もが将来的に成功するチャンスがあると信じていることが重要だ。

 予算上限に関する議論を巡っては、全てのチームを救うためではなく、上位チームを止めるためではないかとの批判もある。だがマクラーレンのCEOであるザク・ブラウンは、より平等な条件で戦うためだと主張した。

「スポーツに参加している誰もが競争力を持って戦う権利を持っていると思う」

「だから予算の上限を下げれば、グリッド全体の差が近づくはずだ」

「私は、優勝を狙えるチームが今の3つから、理想的には5〜7、8チームにできると思う。F1にいる人々は、競争して勝つチャンスを得たいと思っているという事実は隠さない」

「しかし、我々は競争上のアドバンテージを得ようとしているのではない。他のみんなと”同じサイズのバット”でプレーしようとしているだけなんだ。最高のチームが、その週末に勝つべきなんだ」

「他のチームのことをバックマーカーだと呼んでいるチームもあるが、率直に言ってそれは侮辱だと思う。彼らにも平等な条件で競争する権利がある。まだ平等にはならないだろうが、ずっと良くなるはずだ」

 ブラウンの意見に少し対抗すれば、不平等も時には良い方向に働くこともある。特に、それが遅れているチームを助けるような場合には尚更だ。

 2003年の”トラッククリーナー”、ルノーの成功はその証拠だと言えるだろう。

 

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