分析

F1 アゼルバイジャンGP

スペインの好調から一転、モナコ&バクーで苦しんだメルセデス……今後はどちらに転んでいくのか?

スペインGPで復活の兆しを見せたメルセデスは、その後の2レースで激しいバウンシングに悩まされるなど、またしても問題に直面したが、それはなぜなのか?

Jonathan Noble

Jonathan Noble

公開日時: 2022/06/16 3:32

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George Russell, Mercedes W13

 2022年シーズンの開幕当初から、王者らしい走りを見せることができていなかったメルセデス勢。第6戦スペインGPではアップデートが機能し、復活の兆しが見えたかに思われたが、続く第7戦モナコGPと第8戦アゼルバイジャンGPでは“持病”のバウンシングが再び悪化し、ドライバーたちに文字通り苦痛を与えることとなった。

 果たしてスペインでの復調は、メルセデスにとって夜明けのようなものだったと言えるのか? そしてここ2戦は単にメルセデスの得意とする領域が発揮されていないだけなのか?

Lewis Hamilton, Mercedes-AMG, in Parc Ferme

Lewis Hamilton, Mercedes-AMG, in Parc Ferme

Photo by: Simon Galloway / Motorsport Images

■セッティングの妥協が常について回る

 メルセデスが直面している課題は、出来るだけ地面に近いところでマシンを走らせながらも、ポーパシング、バウンシングを発生させないようなセッティングをするということだ。

 車高を上げてサスペンションを柔らかくすると車両のバウンドは少なくなるが、スピードは落ちてしまう。一方で車高を下げてサスペンションを硬くすると多くのダウンフォースは得られるかもしれないが、その分ポーパシングが酷くなるのだ。

 チームのトラックサイド・エンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンは、この相反するふたつの要素を考えることは悩みの種だと語る。

「これは極めて複雑な問題だと認識している」

「何かひとつ策を講じれば解消されるようなものではない。我々は常にこの問題と直面しており、工夫をし続けなければいけない」

「この問題は我々が思ったよりも長引いてしまっている。玉ねぎで例えると、1枚皮を剥ぐとまた別の皮があらわになるような状態だ。学べば学ぶほど、見えていなかったものが見えてくるんだ」

George Russell, Mercedes W13

George Russell, Mercedes W13

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

■モナコとバクーで苦戦した理由

 メルセデスW13は、車両の底が地面に対して限りなく近付いた時にダウンフォースのパフォーマンスがピークに達する。ただし、それは路面が滑らかで安定している時に限るのだ。モナコやバクーのように、凹凸の多いストリートコースではW13が本来の性能を発揮できない。

 メルセデスとしても、空力的な原因がどれだけあるのか、セッティングの問題でどれだけバウンシングが発生しているのか、その詳細な内訳は掴みきれていない。

「ここ(バクー)で直面した問題はモナコとほぼ同じであった」とショブリンは言う。

「我々はバルセロナで前進を見せた。なぜなら、ストレートを走ってもドライバーにとって快適な状態だったからだ。しかしバンピーなサーキットだと乗り心地に問題が起きる」

「空力の問題がどうなっていて、メカニカルの問題やサスペンションとの関連性がどうなっているのか……正確に抽出することはできない。とにかくまだまだやるべきことがある」

Lewis Hamilton, Mercedes W13

Lewis Hamilton, Mercedes W13

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

■高速コーナーではライバルを脅かすパフォーマンス

 モナコとバクーで苦しんだメルセデスだが、それはスペインでなぜ好調だったのかを考える上で役立つだろう。前述の通り、カタルニア・サーキットの路面がスムーズであったことも要因のひとつだろうが、それだけではない。

 GPSデータを見ると、メルセデスW13がポーパシングに苦しめられず、適切なウインドウ内で走れている際には、レッドブルやフェラーリをも脅かすパフォーマンスを見せていることが分かる。

 スペインGPの予選におけるシャルル・ルクレール(フェラーリ/ポールポジション)、マックス・フェルスタッペン(レッドブル/予選2番手)、ジョージ・ラッセル(メルセデス/予選4番手)のアタックラップを比較すると、いくつかのエリアではメルセデスが最も速いのだ。

 メインストレートエンドとバックストレートエンドのスピードトラップではラッセルがトップ。さらに興味深いのは、高速の右カーブであるターン3を誰よりも速く駆け抜けていたことだ。ターン3は現代のF1マシンの空力性能が問われるコーナーでもある。

 つまり、モナコやバクーに多い低速コーナーよりも、高速コーナー(なおかつバウンシングが起きていない状態)であれば、メルセデスのパフォーマンスはかなり高いということだ。

 ショブリンはこう説明する。

「スペインでのパフォーマンスを振り返ると、ストレートでの最高速でわずかにマージンがあった。ふたつの高速コーナーでもわずかな差で最速だった。一方で低速コーナーでは十分な速さがなかったのだ」

「そこで得たことは、低速域をなんとかしなければいけないということだった。モナコやバクーでは低速域が速い方が圧倒的に有利だ」

「もっと我々に合うサーキットがあるはずだ。ただ我々としてはそれをただ心待ちにしている訳ではない。他のチームがより良い仕事をしているのは明らかなのだから、問題を理解して改善していく必要がある」

George Russell, Mercedes W13

George Russell, Mercedes W13

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

■今季の好不調は開催サーキットに依存する?

 スペイン、モナコ、アゼルバイジャンの3レースで明らかになったのは、メルセデスが一貫したパフォーマンスを見せるようになるにはまだ時間がかかりそうだということだ。とはいえ、次に控えるカナダGPや、イギリスGP、フランスGPは高速コーナーの多いサーキットが舞台となるため、楽観的になれるようにも思える。

 しかしショブリンは、チームが自分たちに合うサーキットがやってくることに望みを託すのは間違っていると考えている。彼は、メルセデスがあらゆる場所でパフォーマンスを発揮できるマシンに仕上げる必要があると強調する。

「モナコとバクーを終えて言えるのは、バンピーなサーキットに行くと(ライバルとの)ギャップが広がってしまうということだ」

「データから見ても、オンボード映像から見ても、それがなぜなのか分かるはずだ。マシンが安定しておらず、バンプをうまく吸収できていないのだ」

「モントリオールはスムーズな路面のサーキットではないが、シルバーストンやポールリカールなどではマシンがうまく機能するだろう。ただ、例えスムーズな路面のサーキットに行ったとしても、ベースとなるパフォーマンスが十分でないことは分かっている。それを高める必要があるんだ」

Lewis Hamilton, Mercedes W13

Lewis Hamilton, Mercedes W13

Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

■コンセプト変更にはやはり否定的

 メルセデスの不振がクローズアップされる度、W13の独創的なマシンコンセプトを変更するべきなのではないか、との議論が再燃する。

 ただショブリンは、エンジニアリング面で不調の原因を明確にすることに重きを置いており、例えば“ゼロポッド”と呼ばれるサイドポッドの形状を変更することが特効薬になるとは考えていない。

「乗り心地の問題に関しては、ボディワークの形状は関係なく、メカニカルな問題なのは間違いなさそうだ」

「ダウンフォースを発生させる車両は、底が地面に近付いていくので“遊び”の部分が少なくなる。だからこそ本質的に(サスペンションを)硬くして走らせないといけない」

「このように、我々が見ている分野は様々だ。もっとシンプルに言えば、いきなり全く異なるマシンを投入したからといって、これまでと違う方向に進めるのか? という話だ」

「エンジニアとして我々が考えていることは、どの部分が十分で、どの部分が不十分かを見極め、不十分な分野に取り組んでいく事だ」

「今のところ、その不十分な分野のリストは理想よりも多くなってしまっている。だからそこに対処することに没頭しないといけない」

 

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