F1

【考察】フェルスタッペンがF1を引退したら、次のスーパースターは誰になるのか?

マックス・フェルスタッペンが近い将来F1を去る可能性が高まっている。それが現実のものとなった時、その後継者となるドライバーは誰になるだろうか?

Benjamin Vinel

Benjamin Vinel

公開日時: 2026/04/23 11:06

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Max Verstappen, Red Bull Racing

 4度のF1ワールドチャンピオンであるマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、電動パワーとやエネルギーマネジメントの比重が増す2026年のF1レギュレーションへの不満を隠しておらず、近い将来F1を去る可能性をほのめかしている。現在はニュルブルクリンクでの耐久レースに楽しみを見出しつつあり、日本GPの際には「人生に関わる決断」を迫られていると話していた。

 もしフェルスタッペンが本当にF1去ることになれば、グランプリからスーパースターがひとり去ることとなる。その穴を埋めるのに最適なドライバーは誰だろうか?

 その答えは、フェルスタッペンをどの側面から見るかによっても変わってくる。

世代を代表する才能

Max Verstappen, Red Bull Racing RB12

Max Verstappen, Red Bull Racing RB12

Photo by: Clive Mason/Getty Images

 フェルスタッペンはシングルシーターに転向した最初のシーズン(結果的にそれが最後のシーズンとなったが)に、F1の強豪2チームから積極的に勧誘を受けていたという事実は非常に大きな意味を持つ。

 2014年、当時16歳だったフェルスタッペンはヨーロッパF3選手権で6連勝を飾り、その評価は一気に高騰した。メルセデスは2015年に向けてGP2(現FIA F2)のシートを提示したが、レッドブルが同年のトロロッソでのF1レギュラーシートを提示したことで彼を獲得することに成功した。

 それ以降、フェルスタッペンはレッドブルの“賭け”に見合うパフォーマンスを見せてきた。彼の純粋な速さとレース運びは、誰にも真似できないレベルにある。

 引退が近いルイス・ハミルトン(フェラーリ)とフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)を除けば、この資質に最も近いのはおそらくシャルル・ルクレール(フェラーリ)だろう。特に純粋なスピードという点で秀でており、既に27回のポールポジションを獲得している。彼は支配的な速さを持つマシンに恵まれてこなかったにもかかわらず、ファン・マヌエル・ファンジオ、ミカ・ハッキネン、ニキ・ラウダといったレジェンドに肩を並べる数字を残している。

 しかし、驚異的なオーバーテイクや卓越したマシンコントロールという点では、明確に思い当たる存在はほとんどいない。

 一方で、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)の成長は興味深い。彼はフェルスタッペン以上のスピードでトップチーム入りを果たしており、ジュニアカテゴリーで見せたポテンシャルもフェルスタッペンを彷彿とさせる。

物議を醸すレーサー

Max Verstappen, Red Bull Racing, battles with Lewis Hamilton, Mercedes

Max Verstappen, Red Bull Racing, battles with Lewis Hamilton, Mercedes

Photo by: Charles Coates / LAT Images via Getty Images

 フェルスタッペンをスーパースターたらしめているのは、幾度の論争を巻き起こしてきた物議を醸すドライビングスタイルだ。この点ではアイルトン・セナやミハエル・シューマッハーとも共通している。

 過去11年間、フェルスタッペンはホイール・トゥ・ホイールの戦いで一切妥協しない姿勢を貫いてきた。これは特に2021年のハミルトンとのタイトル争いで顕著だった。最近はそこまで極端な場面は減っているが、現在のドライバーの中で、この点でフェルスタッペンと肩を並べる存在はいない。

国民的ヒーロー

Fan of Max Verstappen, Red Bull Racing

Fan of Max Verstappen, Red Bull Racing

Photo by: Peter Fox / Getty Images

 フェルスタッペンはオランダにおけるF1人気を本格的に築き上げた国民的ヒーローだ。彼以外のオランダ人ドライバーで、過去にグランプリに50戦以上に出走したのは父ヨスだけ。その父も、F1で勝利には届かなかった。

 世界中のサーキットに現れる熱狂的なフェルスタッペンファンは“オレンジアーミー”と呼ばれ、彼の人気を物語っている。こうした現状を母国で巻き起こしたドライバーは多くないが、直近ではスペインにおけるアロンソが思い浮かぶ。20世紀のスペインではF1はあまり人気がなく、文化的には二輪レースが主流だったにもかかわらず、スペインを熱狂の渦に包み込んだのだ。

 将来、同じような存在になる可能性があるドライバーを挙げるなら、アントネッリかもしれない。もちろん、イタリア人が何より愛しているのはフェラーリだが、フェラーリは2008年以来タイトルから遠ざかっている。

 アントネッリはすでに、2006年のジャンカルロ・フィジケラ以来となるイタリア人グランプリウイナーとなっている。そして意外なことにイタリアは、1953年のアルベルト・アスカリ以来、ワールドチャンピオンを輩出していない。今ではその時代を知るものはほとんどいないだろう。

 もし19歳の彼がチームメイトのジョージ・ラッセルとタイトル争いを繰り広げることになれば、国全体が彼を応援することになるだろう。

歯に衣着せぬ言動

Max Verstappen, Red Bull Racing

Max Verstappen, Red Bull Racing

Photo by: Marcel van Dorst / EYE4images / NurPhoto via Getty Images

 一般的に、スポーツ選手は年齢を重ねるにつれて発言力が高まる。メディア対応にも慣れ、臆することもなくなり、避けるべき落とし穴も把握できるようになる。

 フェルスタッペンに関して言えば、そうした落とし穴や発言の影響をまったく気にしていないように見える。言いたいことがあれば言うし、3ヵ月前に気に入らない質問をした記者がいれば、その記者を追い出すことさえ厭わない。

 ある意味でフェルスタッペンは、同じく複数回のワールドチャンピオンであるハミルトンやアロンソと似ていなくもないが、ベテランふたりは発言すべきタイミングや、批判的発言をしても無益な場面などを意識的に見極めているようにも見える。

 現在のトップドライバーは比較的おとなしいタイプが多く、ランド・ノリス(マクラーレン)、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)、ルクレールなどがその代表例だ。この世代で最も率直に発言するのは(フェルスタッペンを除けば)ジョージ・ラッセル(メルセデス)かもしれない。彼はGPDA(選手会組織)の理事としての役割もこなしている。

 そのラッセルは先日、フェルスタッペンなしでF1は成り立つのかという質問に対し、「まあ、F1はどのドライバーよりも大きな存在だからね」と返した後、少し考え込んでこう続けた。

「マックスを失いたくはないよ。みんな彼とレースをするのを楽しんでいると思う」

 さらにラッセルは、フェルスタッペンが現在表明している不満についても見解を述べた。

「これもF1の一部だ。僕だって2022年のマシンは好きじゃなかった。ポーパシングで上下に跳ねて、みんなが背中を痛めていたからね。クルマは大きくて重く、高速コーナーも乗っていて楽しいものではなかった」

「でも彼は勝っていたから、そういった不満は言っていなかった」

「今の彼の不満は、メルセデスやフェラーリ、マクラーレンのそれとは違う。僕たちはグリッドの前方にいるからね。これは自然なことで、そのフラストレーションは理解できる。でも彼は、多くのドライバーが夢見るもの、つまりチャンピオンを4回も達成している。結局のところ、F1でこれ以上達成することはもうほとんどないという段階に達しているのだろう」

「彼はやれることはほぼやり尽くした。記録更新を追い求めることはできるかもしれないけど、彼の性格や、同じような成功を収めたドライバーたちを見ていると、いずれは自分が本当に楽しめることをやりたくなるものなんだ。だからノルドシュライフェ(ニュルブルクリンクの北コース)を走ることで彼が笑顔になる理由はよく分かる」

「僕もシミュレーターで何百周もノルドシュライフェを走ってきたし、実際にあそこでレースをするチャンスがあればぜひやりたいと思う。でも今の僕の目標はF1で世界チャンピオンになること。もし自分が4回もチャンピオンを取っていたら、おそらく同じことを考えているだろうね」

「だから彼は僕とは全く違う段階にいるんだ。残るにしても去るにしても、どちらも理解できるよ」

 果たしてフェルスタッペンは、ラッセルが言うように「自分が本当に楽しめる道」に進むことになるのだろうか? それは時が経てば分かるだろう。

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