レッドブル加入直後のバルセロナテストでクラッシュのハジャー。既視感漂うも、“ガスリーの二の舞”になるとは限らない
アイザック・ハジャーのレッドブルでのキャリアは、ピエール・ガスリーと同じようにクラッシュから始まった。しかしガスリーと同じ道を歩むとは限らない。
Pierre Gasly, Red Bull Racing RB15, spins into the gravel
写真:: Glenn Dunbar / Motorsport Images
今季からレッドブルのドライバーとしてF1を戦うアイザック・ハジャー。彼がバルセロナでのシェイクダウンテストでクラッシュを喫したことにより、2019年のピエール・ガスリーを思い浮かべたF1ファンも多かったのではないだろうか。
7年前、レッドブルはトロロッソ(現在のレーシングブルズ)で印象的なルーキーシーズンを送ったガスリーを、マックス・フェルスタッペンの新たなチームメイトとして起用した。しかしガスリーはバルセロナでのプレシーズンテスト中に2度のクラッシュを喫し、悪夢のようなシーズン前半戦を経てトロロッソへ逆戻りとなった。
そして今季も同様に、姉妹チームで説得力あるルーキーシーズンを送ったハジャーをレッドブルに昇格させ、角田裕毅に代わるフェルスタッペンのチームメイトに据えるという采配をとった。そしてハジャーもまた、バルセロナでのプレシーズンテスト中にクラッシュしたのだ。
率直に言って、新レギュレーション下でまったく新しいマシンでのテストを行なうレッドブルにとって、ハジャーがRB22を壊したことは決して望ましいものではなかった。ハジャーは最終コーナーでウォールにヒットしたが、幸いにもテストは佳境にさしかかっていたため、実際に失われた走行時間は多くなかった。ただし、今週残りのテストプログラムに影響を及ぼす可能性はある。
一方で2019年のガスリーは、バルセロナで1度どころか2度もクラッシュしている。1回目はテスト2日目で、中速の右コーナーであるターン12の出口でリヤのコントロールを失った。
当時ガスリーはこう語っていた。
「限界までプッシュして、その限界と戯れているような状態だった。アクセルを踏んだらリヤを失って、それで終わりだ。少し不意を突かれたし、そうなったらもうできることはほとんどない」
その9日後、2回目のバルセロナテストで、ガスリーは高速のターン9で再びコントロールを失う。このクラッシュは特にレッドブルにとって痛手となった。チームは旧仕様のバージボードに戻さざるを得ず、その結果フェルスタッペンの最終日の走行距離も制限されてしまった。
ガスリーの当時のコメントはこうだ。
「大丈夫だけど、少し動揺している。ターン9でミスをして、見ての通りの結果になった」
「かなり大きなクラッシュで、僕が経験した中でも最大級のひとつだ。メカニックには長い夜を過ごさせてしまい、申し訳ない」
こうした一連のクラッシュが、ガスリーのレッドブルでの悲惨な12レースに繋がった可能性は高い。彼は63ポイントの獲得にとどまり、表彰台も獲得できなかった。その間に181ポイントを稼いだフェルスタッペンに対抗できなかったことから、ガスリーは最終的にトロロッソへ降格となった。ただその後の姉妹チームでの活躍を考えれば、この降格は結果的には幸運だったと言えるかもしれないが。
Pierre Gasly, Red Bull Racing
Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images
では、ハジャーも同じ道をたどるのだろうか? ここ数年レッドブルのセカンドシートに座ったドライバーは、アレクサンダー・アルボン、セルジオ・ペレス、リアム・ローソン、角田裕毅と軒並み苦戦しており、“呪い”とまで称される。ただし、2026年の大規模な技術レギュレーション変更によってマシン特性が大きく変わり、この悪循環が断ち切られるのでは、という期待もある。
ガスリーは明らかにRB15の挙動に対応できなかった。彼のドライビングスタイルはあのマシンに対しては攻撃的すぎ、適切なセットアップを探るために試行錯誤を続けた結果、オーストリアGPではフェルスタッペンに周回遅れにされ、予選での差も徐々に拡大していった。
その一方でガスリー自身は、チームからのサポート不足も実感していた。曰く、「誰も僕の本当の味方にはなってくれなかった」と——。また彼の担当エンジニア、マイク・ラグはフォーミュラE出身でF1の経験がなく、そこにも足を引っ張られたと感じていた。
ラグの起用は、元々リカルドとのタッグを想定したものだった。リカルドとラグは2009年にカーリンで共にイギリスF3を制した間柄だったのだ。しかしリカルドがルノーに電撃移籍したことにより、ガスリーがラグと組むことになった。
結局、ラグがレッドブルでレースエンジニアを務めたのは1年半のみ。2020年半ばにはリカルドの元エンジニアであるサイモン・レニーが現場に復帰し、ラグはレッドブルを離れてフォーミュラEへ戻った。
こうした事情を踏まえれば、ガスリーと同じ運命を必ずしもハジャーが辿るとは思えない。20代前半のフランス人ドライバーがF1フル参戦2年目でレッドブルに移籍して……という共通点はあるが、それ以外の状況は大きく異なる。
Isack Hadjar, Red Bull Racing
Photo by: Red Bull Content Pool
2019年当時は、オーバーテイク促進を目的とした前後ウイングの規定が少し変更されたが、それを除けば技術規則はほぼ安定していた。一方でハジャーのクラッシュは、まったく新しいマシンを使い、しかもウエットコンディションで起きたものだ。
ハジャーのレースエンジニアはリチャード・ウッド。彼は2021〜2024年までパフォーマンスエンジニアを務め、その時代は時折ペレスのレースエンジニアも務めた。そして2025年はレースエンジニアとして本格的にローソンや角田を担当したという経歴だ。ラグよりチームでの経験が豊富だ。
またレッドブルはマネジメント体制も変わった。冷酷とも言われたクリスチャン・ホーナーやヘルムート・マルコらかつての首脳陣は去り、昨年途中にはローレン・メキーズが新代表となった。彼はチーム代表としての経験は限られているが、長年モータースポーツ界に身を置き、人柄や姿勢についてはすでに高い評価を得ている。そして昨年途中までレーシングブルズの代表として、ハジャーを見届けてきた。
レーシングブルズを率いるアラン・パルメインは、前任のメキーズのことを「人付き合いが非常にうまい」として、これまで共に働いた中でも最高クラスのチーム代表だと評している。実際にメキーズは昨季後半のレッドブルのパフォーマンス復活についても自らの功績だと主張することを強く拒み、その几帳面さと正直さで強い印象を残した。
ハジャーのクラッシュ後も、メキーズは「今日の午後は非常にトリッキーなコンディションであり、このような形で終わったのは非常に残念だが、これもF1の一部だ」とコメントし、事故を問題視しない姿勢を見せた。もちろん、ドライバーを守るのはチーム代表として当然の行動であり、7年前にはホーナーも同じことをしていたが。
いずれにせよ、ハジャーがレッドブルで成功できない理由はない。ここで言う“成功”とはフェルスタッペンに勝つことではなく、十分に近い位置で戦うことだ。ただし、プレシーズンテスト中に再びクラッシュを重ねることだけは避ける必要がある。
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