F1海外記者の視点|”モナコの魔法”は依然として健在。F1の魅力を再認識させてくれた完璧な1時間
F1に2026年から導入されたレギュレーションの多くの問題点が議論されている中で、マシンがモナコの市街地を疾走する様子は、これまでと変わらず印象的だった。
Lewis Hamilton, Ferrari
写真:: Luca Barsali - NurPhoto - Getty Images
ありきたりなモナコについての決まり文句で皆さんを退屈させるつもりはないが、モンテカルロの市街地がグランプリレースを開催するのに十分な広さだった時代は、とうに過ぎ去っている。コース上のレース内容という点でも、ますます増え続ける大勢の観客が仕事をするスタッフの負担を増やすという点でも、それは間違いない。
モナコGPがうまく機能しないであろう現実的な理由は数多くあるが、同時に上手く機能する商業的な理由も数多く存在する。2026年のレギュレーションの微調整に関する協議が続く中、実際にコースサイドでレースカーを観戦することは、24戦からなるF1のカレンダーにおけるモナコGPの存在意義を改めて認識させてくれる、歓迎すべき機会となった。
モナコほど、マシンのすぐそばまで近づけるサーキットはない。華やかなリゾート地の狭い市街地コースでは、観客はドライバーたちが実際に何と戦っているのかを特等席から目撃できる。
Oscar Piastri, McLaren
写真: Anni Graf - Formula 1 via Getty Images
ポルティエの裏手にある歩行者用の路地を進むと、住民たちは彼らの後ろのテレビで行なわれているFP1のセッションを気にも留めず、リングイネ・アッラ・ボンゴレ(アサリのパスタ)を楽しんでいる。その先のミラボーへ続く階段を歩く価値は十分にある。ここではコース内側の路面が大きく落ち込んでいるため、マシンが三輪走行のような姿勢になる様子をはっきり観察できるからだ。
ドライバーたちはガードレールをかすめながらフェアモント・ヘアピンを駆け抜け、歩道ぎりぎりまで使ってマシンを曲げ、有名なトンネルへと向かっていく。
今のパワーユニットはかつてのNAエンジンほど大音量ではない。それでもトンネルの中では、V6エンジンの反響音から逃れることはできない。
フランコ・コラピントやカルロス・サインツJr.、オスカー・ピアストリ、アービッド・リンドブラッド。彼らが約1000馬力のマシンを次々とブラインドコーナーへ投げ込んでいく。まるで生々しく、時には下品とさえ感じるほどの圧倒的なパワーの誇示だ。
そのままヌーベル・シケインへ向かうと、マシンはトンネルの長い影から飛び出してくる。ここでは、写真やレンダリングでは今ひとつに見えたマクラーレンの記念カラーリングが真価を発揮していた。メタリックオレンジが地中海の太陽を受けて鮮やかに輝く。
コースと豪華なヨット群を隔てる狭い岸壁に立つと、2026年のF1マシンが前年までの世代よりも明らかに活発に見える。わずかに小型化・軽量化されたマシンは、高い縁石の間を素早く切り返していく。
Monaco track detail
Photo by: Filip Cleeren
アウディのガブリエル・ボルトレトが予選で示したように、この場所では壁へのほんのわずかな接触が致命的な結果を招く。完璧な走り以外は許されない。
しかし難所はまだ続く。ブラインドになっているタバココーナーを抜けると、有名なスイミングプール区間が待ち構える。ここは今や高級スポンサー広告で埋め尽くされたモナコの新たな一等地となっている。
マシンが全開で駆け抜ける最初のコーナーの外側に立つと、不思議な感覚に襲われる。無意識のうちに「こんな方向転換は物理的に不可能なはずだ」と脳が訴えてくるのだ。
その先にはラスカス、アントニー・ノゲス、そして湾曲したスタートフィニッシュストレートが続く。しかしそれも束の間の休息にすぎない。難しいサンテ・デボーテと、豪華なカジノへ向かう上り区間が再びドライバーに極限の集中力を要求する。
Q3進出を決める完璧な予選ラップを成功させた後、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)は満面の笑みでこう語った。
「アドレナリンとストレスが伴うんだ」
「失うものが非常に大きい。ここでは縁石やトラックリミットを相手にしているわけじゃない。壁を相手にしているんだ」
「あと1メートル遅くブレーキを踏もうとする。もう少し早くアクセルを開けようとする。コーナー出口では壁との間に残された数センチを使い切ろうとする」
「今もまだ興奮しているし、アドレナリンが出続けているよ」
Charles Leclerc, Ferrari
Photo by: Andy Hone/ LAT Images via Getty Images
その瞬間、エンジン規則やスーパークリッピング、バッテリーマネジメントなどはドライバーたちの頭の片隅にも浮かばなかっただろう。
もちろん、今の世代のマシンにはまだ課題が残っている。フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)やランド・ノリス(マクラーレン)が口にした厳しい批判がそれを示している。奇妙な挙動の多くはコックピットの中だけで起きており、外からは見えない。
それでも、何週間も新しい規則について語り、書き、読み続けてきた後では、そうした議論が純粋なエンジン音によってかき消されるのは新鮮だった。
モナコでの現地観戦体験は、なぜ我々がこのスポーツに魅了されるのかを改めて思い出させてくれる。
なぜモナコが数々の欠点を抱えながらもカレンダーに残り続けるのか。なぜドライバーたちが特別な存在なのか。
そしてなぜシャルル・ルクレールが幼い頃にミハエル・シューマッハーの赤いフェラーリを見て育ち、いつか自分もその姿を再現したいと夢見たのか。そして2024年に母国レースで初優勝を果たした時、なぜあれほど感情を爆発させたのか……。
モナコ観戦の最高の部分は、メディアパスがなくてもその迫力を存分に味わえることだ。観客として、自然とレースの渦中に身を置くことになるのだから。
金曜日にそこで過ごした時間は、F1に少し飽きていた私にとって、まさに待望の気分転換となった。その1時間、世界は完璧だった。
【PR】2026年のF1™を見るならFOD。至極の体験『F1® TV』連携プランも!
記事をシェアもしくは保存
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。