コラム

英国人ジャーナリスト”ジェイミー”の日本レース探訪記「ジュリアーノ・アレジは父の後を継げるか?」

motorsport.comグローバル版のニュース・エディター、ジェイミーが日本のレースを取材。今回はスーパーフォーミュラ・ライツに参戦するジュリアーノ・アレジについて、感じたことを素直なコラムでお届け。

ジュリアーノ・アレジ Giuliano Alesi(TOM'S)

ジュリアーノ・アレジ Giuliano Alesi(TOM'S)

TOM'S

 初めまして、私はジェイムス・ピーター・クラインといいます。愛称はジェイミー。みんなジェイミーと呼びます。motorsport.comグローバル版に原稿を寄稿しているニュース・エディターの一人です。実は、2年前の2019年に来日し、以来日本に住んで日本のレースを取材、motorsport.comグローバル版に寄稿しています。日本では日本語学校へ通い、今では少し喋れるようになりましたし、読み書きも出来るようになってきました。でも、日本語は難しいですね。日本語で原稿が書けるようになるのはいつのことやら。

 1年ほど前からMotorsport.com日本版の編集スタッフとレース取材に同行したり居酒屋で議論するなど交流が始まり、仲間が出来たことで日本の生活も随分と楽しくなってきました。日本人の彼女も出来、一緒に旅行して日本の美しさに感動しています。日本の食べ物も大好きです。取材に行って泊まるビジネスホテルの朝食が楽しみだというと、日本の友達は変な奴だって私のことを言います。変じゃないですよね。もちろん焼き鳥や刺身も大好きです。

 こんな変なイギリス人は余りいないのか、赤井編集長からMotorsport.com日本版にコラムを書いてみないかという誘いがありました。私はレースのジャーナリストになってまだあまり経験を積んでいませんが、「その経験不足なところが面白い」と変な誘いを受け、コラム執筆を始めることになりました。残念ながらまだコラムを書くほど日本語が出来るわけではないので、英語で書いていますが、いつかは日本語で書けるようになりたいと思っています。

 編集長が私にコラム執筆を依頼した本当の理由は、ほとんどのメディア関係者が日本人である日本のレース界は、外国人ジャーナリストの目にどう映るのか。また、その逆で日本のレース界は外国人ジャーナリストにどう対応するのか、それを知りたいからだと言います。とても興味あるテーマですが、コラムを書く当事者としては責任重大です。というわけで、コラムを書き始めようと思います。1ヵ月に1本か2本。具体的には決めていませんが、思ったこと、考えたことを素直に書いていきます。

 先週末、2021年のスーパーフォーミュラ開幕戦が富士スピードウェイで行なわれました。この週末、何人かのドライバーがデビューを飾りましたが、その中で一番の注目を浴びたのはスーパーフォーミュラ・ライツ(昨年までのF3)に参戦するジュリアーノ・アレジでした。ご存じ、1990年代のF1ヒーロー、ジャン・アレジと日本人の女優、後藤久美子の間に生まれた長男です。彼は名門トムスからスーパーフォーミュラ・ライツに参戦、土曜日と日曜日の2レースで3位表彰台を獲得しました。恐らく今月末に鈴鹿サーキットで行なわれるスーパーフォーミュラ第2戦では、アレジが日本のトップフォーミュラのレースにデビューするはずです。トムスのNo.1ドライバーの中嶋一貴がWECに出掛け、シートがひとつ空くことになり、そこにアレジが座るはず、というのが私の推測です。

 私がアレジに初めて会ったのは2017年のシルバーストンでした。彼はGP3(現FIA F3)にトライデント・チームから出ていました。以来僕たちには接点がなかったのですが、先日岡山サーキットで行なわれたスーパーGTのテストで、4年振りに会いました。話を聞くと、過去2年間F2で苦労して来て、父親のようなF1ドライバーへの夢を追いかけることは忘れていないが、F1に固執するばかりではなく、より現実的にプロのレーシングドライバーになることを選んだといいます。大きな成長です。

 私がアレジに関して驚いたのは、日本語を流ちょうに喋ることです。母親が日本人だと言うことを考えれば 驚くことではないのかもしれませんが、生活はずっとフランスで、今年2月に日本に来たばかりだと聞くと、流石だなあと思います。私は日本の生活が1年8ヵ月になり、毎日日本語学校に通っているけど、なかなか上達しません。血は争えない? そのアレジは、「子供の頃はもっと日本語が上手かったけど、今はあまり喋れなくなった。でも、理解は出来るし、日に日に日本語になれてきている」と言っています。

 そのアレジ、すべてをレースに賭けています。所蔵するチームのトムスの工場に近いからと御殿場に住んでいるし、F2を2年やった後でステップダウンと言われながらも格下のスーパーフォーミュラライツ参戦を決めました。これは、長い目で見てしっかりしたプロのドライバーになることを決めた彼が、必要な道程と決めたからです。現在、コロナによる規制で来日できていないサッシャ・フェネストラズも、2019年に我慢してF3を戦ったおかげで、今はスーパーフォーミュラ、スーパーGTで期待されるドライバーとして戦っています。アレジも急いで階段を駆け上がるより、フェネストラズのようにじっくり実力を付けてからトップクラスへ挑む方がいいでしょう。賢明な選択だと思います。

 それにしてもアレジは来日出来て、日本のレースを戦うことができて良かったと思います。本来、今年日本のレースを戦う予定だったにもかかわらず来日制限に引っかかって日本の土を踏めていない外国人ドライバーの何と多いことか。フェネストラス始め、フェルディナンド・ハブスブルク、エナム・アーメド、トム・ディルマン等が来日できていません。現在日本のトップクラスを戦う外国人ドライバーはタチアナ・カルデロン一人だけ。早くコロナが収束して、多くの外国人ドライバーが来日できればいいのにと思っています。

 考えてみると、ヨーロッパでF1を夢見て大金を払ってレースをしても、結局はF1に辿り着けなくて挫折するドライバーは多いです。アレジにしても2億円以上使ってF2レースを戦ったけれど、結局F1への階段に足さえかけられませんでした。日本のトップクラスで好成績を挙げても必ずしもF1への道が開けるとは限りませんが、少なくとも金の稼げるプロのドライバーとして生きていくことは出来ます。F1だけがすべてではないと割り切り、プロのドライバーとしてのポジションを獲得したいと考えるなら、日本のレースは十分に価値があるでしょう。アレジがそうしているように。

 

ジェイミー・クライン James Peter Klein

 1993年1月31日 英国ベイジングストーク生まれ。7歳の時、シルバーストン・サーキットで初めてレースを観戦し、虜になる。大学で学生新聞の編集に携わった時に、ジャーナリストになろうと決意。

 プロのジャーナリストとして仕事を始めたのは2013年、英国Autosportに寄稿。2015年にmotorsport.comに参加。グローバル版の記者として契約、2輪レースから取材を始める。2019年に来日、以来東京に住んで日本のトップレースを取材、motorsport.comに記事を寄稿している。

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