岩佐歩夢、FIA F3を戦う中でレッドブルから受けた“アドバイス”。角田裕毅と真逆のアプローチで成長を実感
FIA F3の2021年シーズンを戦った岩佐歩夢は、シーズン途中にレースウィークへのアプローチを変更したことが功を奏するなど、様々な面で成長することができたと感じている。
写真:: Red Bull Content Pool
2021年のFIA F3に、日本人ドライバーとしてただひとり参戦した岩佐歩夢。F1への登竜門であるFIA F3で過ごした彼に、その濃密な1年を振り返ってもらった。
岩佐は2020年にフランスF4でチャンピオンを獲得。2021年はレッドブルジュニアへの仲間入りを果たし、ハイテックからFIA F3へ参戦した。岩佐は前半戦からコンスタントにトップ10入りを果たしてポイントを積み重ねると、ハンガリーで行なわれたラウンド4のレース1で初優勝を飾り、最終的にはランキング12位でシーズンを終えた。これはチームメイトのジャック・クロフォード(ランキング13位)、ローマン・スタネック(ランキング16位)を上回る成績だった。
岩佐がシーズンのハイライトとして挙げるのが、オーストリアのレッドブルリンクで行なわれたラウンド3だ。岩佐は予選を上手くまとめられず19番手に終わり、レース1は19番グリッドスタートとなるも、そこから10ポジション上げて9位でフィニッシュ。リバースグリッドとなるレース2を2列目からスタートできるはずだった。
しかし、レース1はオレンジボール旗無視によりまさかの失格に。オンボードカメラの不具合というドライバーの過失ではない事象によって、岩佐はレース1の獲得ポイントを失っただけでなく、レース2も29番グリッドからスタートすることを余儀なくされた。岩佐も裁定が下った直後はさすがに落ち込んだようだが、その後はしっかりと気持ちを切り替え、レース2では15ポジションを上げる圧巻の走りで14位に入り、意地を見せた。
レース3でも12ポジションアップの6位に入ってみせた岩佐。3レース合計で37ポジションアップという見事なオーバーテイクショーに、岩佐本人も「失格裁定がなければ3レース全てで多くのポイントを獲得できたかもしれないので、その点では少し残念でしたが、自分のしたかったことができたレースだと思います」と振り返った。
前半の3ラウンドでは、上記のオーストリア戦を筆頭に、持ち味のレース巧者ぶりを見せつけることができていた岩佐。しかし、その中で課題点が浮き彫りとなっていたという。
「前半戦に関しては、勢いが足りていないという言葉をレッドブルからハッキリといただきました。これは僕自身も感じていたことです」
「予選で下位になっても追い上げるレースができていた点は悪くないとのことでしたが、フリー走行や予選のパフォーマンスに、速さというよりも“勢い”がないとアドバイスをいただきました」
この「勢いがない」というアドバイスを受けて岩佐は、ラウンド4のハンガリー戦ではフリー走行から早い段階で限界を探るようなアプローチに変えたようだ。これは現在F1を戦う角田裕毅が「序盤戦は攻めすぎていたから、ドライビングを落ち着かせる必要があった」と、アプローチを変更したのとは対照的だ。
「僕はこれまで、周回を重ねながら少しずつクルマやコースのフィーリングを掴んでいくというアプローチでした。しかし、それだと時間が足りないと感じました」
「ハンガリーからは(フリー走行で)多少コースアウトをしそうになるところまでプッシュして、100%を越えた限界を先に見るというアプローチをしました。その結果クルマを痛めてしまうこともありましたが、先に限界値を見ることができましたし、ハンガリーの予選ではチームメイトを大きく突き離したタイムで(チーム内)トップを取れたりしました」
これにはレッドブルからも「お褒めの言葉をいただいた」という岩佐。速さを結果に繋げられないレースが多かったとして、自らの2021年シーズンを「10点中4点くらい」と辛口採点した岩佐だが、レッドブルのアドバイスを始め、様々な経験を通して自らを成長させられたことには、満足感を感じている様子だった。
また、気になるのは来季の進路。先日行なわれたFIA F3のポストシーズンテストには参加しなかった岩佐だが、来季については岩佐自身もまだ分からない部分が多いようだ。しかし、どのカテゴリーで戦うことになってもしっかりと結果を残すために準備をしていきたいと結んだ。
「レッドブルやホンダさんからの評価は、それほど悪いものではないと感じています。来年も良い環境で戦えることを信じて、まずは自分がすべきことをオフシーズンにやっていきたいと思います」
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