コラム

フォーミュラE

芸能人の皆さん、フォーミュラEに乗ってちょうだい。型破りなPR戦略を見せる理由をCEOに訊く「人気拡大にエンタメ化は重要」

フォーミュラEはF1に次ぐ巨大なモータースポーツカテゴリーに成長するべく、型破りな戦略をとっている。レースカレンダーの空いた穴を活用し、インフルエンサーにGen3 Evoマシンを体験させる非公開イベントを実施するという施策は、その成長への意欲を如実に表している。

Stefan Mackley

Stefan Mackley

公開日時: 2025/02/03 8:03

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

Usain Bolt

ウサイン・ボルト

写真:: FIA Formula E

「今のような取り組みをしていなければ、我々のビジネスはとっくに消滅していただろうね」

 そう語るのは、フォーミュラEのCEOであるジェフ・ドッズ。フォーミュラEが完全電動フォーミュラカーのシリーズとして産声をあげて10年以上が経ったが、彼らはモータースポーツ業界の中で生き残るべく、一貫して既存の枠を超えた積極的な取り組みをしてきた。2023年にドッズCEOが就任するずっと前からだ。

 ただドッズCEOが指揮をとるようになってからの2年間で、その取り組みは加速していると言える。最近では、レース中の急速充電ピットストップの実施がついに決定されたばかり。ピットで燃料ではなく電力を補給するというスタイルは、多くの注目を集めるだろう。

 そして先日、デビッド・ベッカムの息子ブルックリン・ベッカムや元サッカー選手のセルヒオ・アグエロなど、11名のセレブリティ、インフルエンサーにフォーミュラEの最新Gen3 Evo車両を体験させるイベントを実施することが発表された。フォーミュラEではこれまでにも、陸上選手のウサイン・ボルトなど著名人がマシンのステアリングを握る機会を作ってきたが、今回マイアミで行なわれるイベントはさらに手が込んでいる。

 11人の著名人は各チームと共にシミュレータセッションやフィジカルトレーニングを積み、ドライバーからのコーチングやチームとの入念なブリーフィングを経てコースインすることになる。その目的は、「レーシングドライバーには何が求められるのか」「電動レーシングカーを走らせることの難しさ」などを、インフルエンサーたちが抱える総勢3億人のフォロワーに伝えることだ。

 こういった試みは全く新しいコンセプトというわけでもなく、2022年にはTwitchやYouTubeの配信者がル・マンのブガッティサーキットをF4で走ったり、日本でもトムスのF4車両を使った『トムス・フォーミュラ・カレッジ』をマギーや堀江貴文といった著名人が体験してその模様を発信している。ただ今回の『Evoセッションズ』は、世界的により知名度の高い人物が、0-100km/hの加速ではF1よりも速いと言われるハイパフォーマンスマシンを体験するというスケールの大きさで一線を画する。

積極的施策で人気拡大を目指すフォーミュラE

積極的施策で人気拡大を目指すフォーミュラE

写真: Beto Issa - Motorsport Images

 ただし、Evoセッションズではレースは行なわれない。それぞれの著名人がひとりで周回を重ね、ベンチマークとなる目標タイムに近付くのを目指すフォーマットだ。ドッズCEOは、ひとりの一般人ドライバーがサーキットを周回するだけのイベントは「現地の観客にとっては見るに堪えない最悪のイベント」だと認識しているため、無観客で実施する。

 確かにコースを走っている時間は退屈かもしれないが、走行前後にファンサービスの時間などを確保すれば、セレブ文化に熱狂するアメリカの人たちにとっても魅力的なチケットになったはず。これは大きな機会損失ではなかろうか。

 無観客の下で撮影された映像が、“編集マジック”でどれほど魅力的なコンテンツとなって視聴者に届けられるかは未知数なところだが、ドッズCEOはAutosport/motorsport.comの独占インタビューで、今回の企画に自信をのぞかせた。

「毎朝起きる時に脳裏をよぎるのは、この素晴らしい競技と偉大なドライバー、マシンが強力な成長曲線を描いているということ、そしてどうすれば多くの人にこれらのモノを見せられて、どうすれば話題性や重要性を上げられるのか? ということだ」

「その答えは、限界を押し広げ、単なるスポーツではなく“エンターテインメント”として捉えることにある。当然ながら、これは全員が賛成するものではないだろう」

フォーミュラEのドッズCEO

フォーミュラEのドッズCEO

写真: Andreas Beil

「私は断言できる。もし我々が安全策ばかり取って、イノベーションに挑戦しなかったら……例えばピットブースト導入やEvoセッションズもやらずに、何の新しい試みもしなかったら、ファンの数は1億5000万人のままだっただろうね。でも今は4億人いる」

 今日のソーシャルメディアやライブ配信プラットフォーム全盛の時代において、スポーツでの“ギミック”(仕掛け)作りが流行している。ボクシングのマイク・タイソンがYouTuberのジェイク・ポールとの試合に応じて大金を得たこともその一例だ。

 当然ながら熱心なボクシングファンはこれに激怒した。伝統を重んじるモータースポーツファンも、マイアミでのイベントを見て同じように憤るであろうことは容易に想像できる。しかしフォーミュラEがこの路線を選んだこと自体は驚くべきことではない。フォーミュラEのコア層は他のシリーズよりも若年層が中心。彼らの中には、もはやV10エンジンの轟音を知らずに育った者も多いかもしれない。

 Evoセッションズは3月5日、6日に行なわれるが、これは元々フォーミュラEの公式レースを開催する予定だった週末だ。ここではタイのチェンマイでの開催が候補に挙がっていたが、政治的問題で実現せず。代替地での開催も選択肢になったはずだが、なぜそれをしなかったのか?

 ドッズCEOはこう補足する。

「選択肢としてあったのは、常設サーキットを借りるという特筆すべきものがない案か、何か革新的で型破りなことをするという案だった」

 “型破り”という言葉は、フォーミュラEと切っても切り離せないものだ。こういった姿勢は、モータースポーツ界で多くの支持を得られるとは限らないにしても、今までフォーミュラEの名前すら知らなかった新たなファンを獲得できる可能性は十分にある。

「このイベントが終わったときに、何人かのレースファンから『馬鹿げている』と言われたとしても、その一方で5000万人の新しいファンを選手権に加えることができたなら、それは投資として十分に価値があったと言える」とドッズCEOは言う。

「もしこの取り組みが新規ファンの拡大に繋がらず、コンテンツとしてもクリエイターたちにとって魅力的なものにならなかったら、良いものとは言えない。しかし我々はまだ10年の歴史しかなく、若い。試行錯誤を重ねる時なのだ」

「2030年までに、フォーミュラEをF1に次ぐ世界第2位のモータースポーツに成長させることを目指している。そのためには、ファンの裾野を広げなければならない」

「まったく新しい人々をスポーツに引き込む方法は限られている。だからこそ、彼らのいる場所にこちらから飛び込んでいく必要がある。そしてそのための方法を考えないといけない」

「今回のイベントは、そのための非常に魅力的なフォーマットだと考えている」

関連ニュース:

 

あなたの意見が聞きたい!

Motorsport.comで何を見たいですか?

5分間のアンケートにご協力ください。

- Motorsport.comチーム

関連ニュース :

記事をシェアもしくは保存

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

前の記事 ベッカム息子が! アグエロが! 世界のセレブリティがフォーミュラEマシンをドライブする驚きのイベントが始動……ファン拡大に繋げる狙い

次の記事 フォーミュラEは運要素が大きすぎる……“急速充電”導入を前に2度王者が不安視。SCとのダブルパンチで順位がひっくり返る?

More from

Stefan Mackley



フォーミュラEに導入されたピットブースト、ドライバーたちの評価は? 市販電気自動車の急速充電にも活かせる夢の技術

フォーミュラE

フォーミュラE

ジェッダE-Prix:レース1

2025/02/16

フォーミュラEに導入されたピットブースト、ドライバーたちの評価は? 市販電気自動車の急速充電にも活かせる夢の技術



ベッカム息子が! アグエロが! 世界のセレブリティがフォーミュラEマシンをドライブする驚きのイベントが始動……ファン拡大に繋げる狙い

フォーミュラE

フォーミュラE 2025/01/31

ベッカム息子が! アグエロが! 世界のセレブリティがフォーミュラEマシンをドライブする驚きのイベントが始動……ファン拡大に繋げる狙い



フォーミュラEに導入される”ピット・ブースト”はレースを面白くするのか。その存在意義とは

フォーミュラE

フォーミュラE 2025/01/27

フォーミュラEに導入される”ピット・ブースト”はレースを面白くするのか。その存在意義とは

最新ニュース



MotoGP、フォーマット変更は「チームとメーカーの要望」あったと説明。走行時間減少と予選2回化に批判も

MotoGP

MGP MotoGP 3 時間前

MotoGP、フォーマット変更は「チームとメーカーの要望」あったと説明。走行時間減少と予選2回化に批判も



マレーシアからチャリで来ました! ボッタス、3日間のスリル満点”ジャングルライド”に大満足「犬に追いかけられたよ!」

F1

F1 F1

シンガポールGP

4 時間前

マレーシアからチャリで来ました! ボッタス、3日間のスリル満点”ジャングルライド”に大満足「犬に追いかけられたよ!」



【泥沼裁判】F1マシンが忽然と消えた!? ウイリアムズ、貸し出したFW23が行方不明になる謎の事件が発生……取り戻せるか?

F1

F1 F1

バーレーンGP

5 時間前

【泥沼裁判】F1マシンが忽然と消えた!? ウイリアムズ、貸し出したFW23が行方不明になる謎の事件が発生……取り戻せるか?



FIA、セパンで起きた”ソフトウェアのバグ”の調査結果を発表。次戦シンガポールは暫定措置で急場凌ぎ……アメリカGPで恒久アップデート投入へ

F1

F1 F1

シンガポールGP

5 時間前

FIA、セパンで起きた”ソフトウェアのバグ”の調査結果を発表。次戦シンガポールは暫定措置で急場凌ぎ……アメリカGPで恒久アップデート投入へ

Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.

フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。

次の 2 つのオプションがあります。

購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします

広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード

お知らせの管理

登録