求められるのは”貪欲さ”。HRS佐藤琢磨が考える世界で通用するドライバー像「やる気と行動力がチームでの求心力になる」
ホンダ・レーシングスクール鈴鹿(HRS)でプリンシパル務める佐藤琢磨が、F1を始め世界で通用するドライバーとして成長するために求められる要素を語った。
佐藤琢磨は、世界を目指す上で若いドライバーに求められることは「貪欲さ」だと語る。
元F1ドライバーでインディ500を2度制した実績を持つ佐藤が四輪部門のプリンシパル(校長)を務めるホンダの若手育成プログラム「ホンダ・レーシング鈴鹿(HRS)」。1992年に鈴鹿レーシングスクール(SRS)として開校したこのプログラムの四輪部門からは、佐藤プリンシパル本人を始め、アルファタウリからF1に参戦する角田裕毅やFIA F2参戦中の岩佐歩夢など、多くのトップドライバーを輩出してきた。
先日、鈴鹿サーキットではフォーミュラクラスではスカラシップ選考会が行なわれ、アドバンスコースから選ばれし生徒4名が講師と共にスカラシップをかけて2レースを実施。総合評価によって今年はスーパーFJ鈴鹿シリーズ王者でもある森山冬星がスカラシップ獲得生に選ばれた。
選考会には佐藤プリンシパルも参加。普段はインディカー・シリーズに参戦しているため、直接指導するのは難しいものの、日本人で唯一”世界3大レース”への出場経験を持つ中野信治バイスプリンシパル(副校長)のレポートを通して生徒の成長を把握した上で、シーズンオフに行なわれる選考会で実際に彼らの走りを見ることとなった。
生徒に求めるモノ、そして世界で通用するドライバーとして重要な要素として、佐藤プリンシパルは「貪欲さ」を挙げている。
「僕が生徒に求めるものの一つは貪欲さです」
ホンダのオウンドメディアを通して佐藤プリンシパルはそう語った。
「スクールとしても世界に通用するドライバーを育てるために、与える、教えるではなく、選手自ら気づき、講師に教えを乞う環境にしたいと思っています。一緒に走るドライバーから学んでほしいし、空き時間には講師に対してどうアプローチするのかも見ています」
「こちらから話しかけてキッカケを作る子もいますが、積極的に話しかけてくる生徒の熱意や行動力を評価し、僕らはそれに対していかにサポート体制を作れるか……生徒の積極的な姿勢とスクールの環境、それによって生まれる相乗成果も狙っています」
HRSスカラシップ選考会レース
Photo by: Honda
選考会の講師の中には、スーパーフォーミュラで2連覇と圧倒的な強さを見せる野尻智紀の姿もあった。野尻は「僕がここにいる役割は『日本国内ですら、こんなにも壁が高い』という事実をきちんと分からせることだと思っています」と語る通り、選考会では計測走行(予選)ではポールポジションを獲得。レース1では圧倒的な速さでトップチェッカーを受けた。
野尻の他にも、スーパーフォーミュラのデビュー戦でフロントロウを獲得するなど速さを見せた佐藤蓮も選考会レースに参加。生徒が国内のトップドライバーから技術を吸収する環境が整っている。
しかし、その学びは能動的なモノでないといけないと佐藤プリンシパルは強調する。
「あとは生徒本人のやる気と行動力です」
「積極的に講師を利用して、アドバイスを求める姿勢、僕が生徒に求めるその貪欲さはすなわち“本人の魅力”や“チーム内での求心力”になります。海外で戦う時、言葉と文化の壁があって、周りにアピールしないとチャンスはつかめません」
「クルマが持っている力を引き出すためには、メカニックやエンジニアをはじめとした多くの人たちの作業が必要になるし、その人たちとのコミュニケーションは不可欠。その人たちがいないと自分も走れないこと、速く走るためには行動を起こす必要があることをこのスクールでは気づいてもらいたいです」
中野信治バイスプリンシパル
Photo by: Honda
速く走るためにはマシンに関わる人との関係が必要という点は、中野バイスプリンシパルも指摘するところだ。
「僕が長年やってきて生徒に気づいてほしいと思うのは、物事にはたくさんの人が関わっているということです」
「ひとつの目標のために、メカニックやエンジニア、いろいろな役割の人たちが、同じ目標に向かってクルマを作り上げいく……それがモータースポーツの魅力です。勝利を目指す過程が本当に面白いんですよ」
「それを感じられる人間が世界に飛び出す選手になると思います」
そして、この育成プログラムから得られるチャンスは”羨ましい”ほどだと中野バイスプリンシパルは言う。
「特に若い選手にとって、資金的なバックアップであるスカラシップは大きな意味を持ちます。これまでも才能はあっても資金面が理由でキャリアアップできなかった選手を多く見てきました」
「スカラシップを獲得すると、ヨーロッパで戦えるチャンスも出てきます。選手個人でヨーロッパのレースに参戦するのは大変に難しいですし、そのチャンスがあるのは個人的には羨ましい限り。これまでホンダがずっと世界で戦ってきたからこそ、そのチャンスがあるわけです」
「僕が生徒だったら200%本気で取りにいきますし、そのために死ぬ気で頑張りますよ。世界で戦うにはどれくらいの努力が必要か、現役ドライバーの講師が見せてくれるし、モチベーションになります」
「そういったチャンスを与えられる生徒の育成に関わらせてもらい、とても感謝しています」
Be part of Motorsport community
Join the conversation記事をシェアもしくは保存
Top Comments
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。