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初参戦SFライツで早速優勝のジルテール。欧州有望株が日本に来た理由とは? ARTグランプリ⇔ホンダの“交換留学”的側面も

今季からスーパーフォーミュラ・ライツに参戦するエヴァン・ジルテール。欧州の有望株が、日本でレースをすることになった理由などについて語った。

Evan Giltaire, B-MAX RACING TEAM

写真:: Masahide Kamio

 今季のスーパーフォーミュラ・ライツ(SFライツ)には、複数の外国人ドライバーが新規参戦している。その中で一際輝きを放つのが、B-MAX RACING TEAMのエヴァン・ジルテールだ。富士での開幕大会では第2戦で早速勝利を飾り、ランキングでも2番手につけている。

 ジルテールはフランス出身の19歳。彼は2023年にフランスF4、2025年にフォーミュラ・リージョナル中東選手権でチャンピオンを獲得しており、同じく2025年のフォーミュラ・リージョナル欧州選手権では、各国の有望株が揃う中でランキング5位を獲得した。

 これだけの実績を残したドライバーであれば次はFIA F3、その次はFIA F2……といった具合で、F1に向けてステップアップしていくのが自然な流れと言える。しかしジルテールは今季、戦いの舞台に日本を選んだ。その背景にはやはり、金銭的な事情が大きく関係していたようだ。

「FIA F3の予算はかなり高額で、自分と自分のスポンサーにとっては手が届くような額ではなかった」

 ジルテールはそう語る。

猛者が集まるFRECA、FRMECで活躍したジルテール

猛者が集まるFRECA、FRMECで活躍したジルテール

写真: FRMEC

「予算は年々高騰していて、十分な資金を持たないドライバーにとってはレースを続けるのが難しくなっている。だから日本に行くことを決めた」

「それはF3よりもかかる費用が安いこともそうだけど、日本ではドライバーとして貴重な経験が積めるということもある。ここには色んなツールが揃っていて、学べることが本当に多い。日本で得たものを携えてヨーロッパに戻ることもあるかもしれない」

 ここまで、SFライツでは好調なスタートを切ったジルテール。多くの海外出身ドライバーが日本のレース文化に馴染めず苦労した例を知っているだけに、特にコミュニケーションの部分はかなり不安があったという。

 しかし、実際にはうまくチームに溶け込むことができている様子。ジルテールはB-Maxの拠点がある神奈川県綾瀬市に住んでおり、担当の宮田雅史エンジニアをはじめとするチームスタッフとも関係値を築いたと語る。

「日本語はヨーロッパの言語とは全く違うので、コミュニケーションは一番心配だった」

「日本の皆さんはとても親切で、レース環境も素晴らしいことは分かっていたけど、それでもエンジニアやメカニック、チーム全体とのやり取りがうまくいくかは不安だった。でも実際には、みんなができるだけ英語で話そうと努力してくれているし、自分も日本語や日本の文化を理解しようと努めている。そのおかげで良い関係を築けている」

「正直、他のことは心配じゃなかったけど、コミュニケーションだけ怖かった。でもレースでも日常生活でもすぐに馴染むことができた」

 もうひとつ気になるのが、ジルテールとARTグランプリ、そしてホンダとの関係性だ。ジルテールの乗るB-Maxの1号車は『ART Grand Prix with B-MAX』という車両名になっており、車体サイドにもARTのロゴが。そしてHRC(ホンダ・レーシング)のロゴも、車体やレーシングスーツに確認できる。

写真: Masahide Kamio

 ジルテールによると、ARTのチーム代表であり、日本のレースでも活躍したセバスチャン・フィリップがB-Maxとのジョイントの実現に大きく寄与したという。
 
「僕はシングルシーターに乗り始めてからずっとARTのドライバーだった。フランスF4に乗っていた当時からARTのシミュレーターを使わせてもらったり、多くのサポートを受けていた」

「チーム代表のセバスチャン・フィリップとはとても良い関係を築いている。彼自身も日本でレーシングドライバーとして活動したことがあるから、ホンダや日本のレース関係者とも深い繋がりがあって、色々と助けてくれる」

「今回のARTとB-Maxのコラボレーションも、フィリップの存在によって実現した部分が大きい」

 ではホンダとの関係はどうだろうか。ジルテール本人は、日本での活動においてホンダが「多大なサポートをしてくれている」と話す。ただ、ジルテールがホンダの育成プログラムに入ったなどというわけではないようで、HRCはホンダとARTの交換留学的な側面が強いと説明している。ホンダにとってARTは、育成ドライバー加藤大翔のフォーミュラ・リージョナル、FIA F3での所属チームでもあり、現在進行形で“お付き合い”のあるチームなのだ。

加藤大翔とはARTでチームメイトだった

加藤大翔とはARTでチームメイトだった

写真: ACI Sport

 ジルテールは次のように語る。

「ホンダはフランスでも、ARTと良好な関係にある。フランスのホンダがARTを支援していて、ホンダを背負う加藤大翔がARTで走っているのもまた事実だ。こうしたことが、両者の関係を強固にしている」

「僕自身、FIA F3にステップアップするには予算面で厳しい状況にあったけど、ホンダとARTから多大な支援を受け、日本で少しカテゴリーを変えてシングルシーターのキャリアを続けることができた」

「(ホンダの支援は)とても大きかった。交渉段階でも大きく関わってくれたし、レースの面でも色々とサポートしてくれている。ホンダとHRCが自分のそばにいてくれることを嬉しく思っている」

 今年はSFライツでのチャンピオン獲得に全力を尽くすというジルテール。将来的には日本でキャリアを築いていくのか、それとも再びヨーロッパに戻るのかについては、今後の動向を見守りつつ、自身がドライバーとして掴める最大限のチャンスを掴んでいきたいとした。

「まだ今後のことばかり考えるには早いけど、ドライバーである以上は常に将来を考えている」

「選択肢としては、スーパーフォーミュラに上がるか、ヨーロッパに戻るか……。まずは2026年のスーパーフォーミュラ・ライツでベストを尽くして、タイトルを持ち帰ることが最優先だ。それでスーパーフォーミュラに行けるのか、それとも予算的にヨーロッパにも行けるのかを見ていかないといけない」

「最終的に何がベストな選択肢かが重要だ。もし日本でレースを10年続けるのが最善の選択肢なら10年残るし、ヨーロッパに戻れるチャンスがあって、F1などの大きな選手権に近付けるのなら、当然良い選択肢になる。レーシングドライバーとしてベストなチャンスを掴みたい」

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