スリック“ギャンブル”で雨制したブラッド・ビンダー「何度もおしまいだと思った」
MotoGP第11戦オーストリアGPで今季初優勝を果たしたブラッド・ビンダー。彼は雨で濡れた路面をスリックタイヤで走りきって勝利を手にしたが、終盤は“最悪だった”と語っている。
写真:: Gold and Goose / Motorsport Images
MotoGPのレッドブルリンクでの2連戦2レース目、第11戦オーストリアGPは波乱の展開となった。優勝したのはマシンを乗り換えることはせず、スリックタイヤで濡れた路面中を走り続けたKTMのブラッド・ビンダーだったが、彼は終盤のコンディションはひどいものだったと振り返っている。
オーストリアGPは、レーススタート直前にごく少数ながら国際中継のカメラに雨粒が写り始めたが、ドライレースが宣言される中決勝レースのスタートが切られた。しかしながらスタートしてすぐ、マシン乗り換えを許可する白旗が振られた。
ただ雨は散発的な降り方で、マシンを乗り換えるライダーがいないまま、レースはフランチェスコ・バニャイヤ(ドゥカティ)を先頭としたトップ争いが繰り広げられる形で終盤まで進行した。
節目が変わったのは残り5周というレース終盤。雨が強まってきたこともあり、ジャック・ミラー(ドゥカティ)とアレックス・リンス(スズキ)がレイン用のマシンへと乗り換えることを最初に選んだ頃だった。
バニャイヤらトップグループ5台も次の周にピットインし、マシンの乗り換えを選択した。
しかし当時6番手を走行していたビンダーは、トップグループがピットインした後も、スリックタイヤでの走行を継続。雨脚が強まる中、時にはブレーキングに苦労する姿を見せつつも、最後までスリックタイヤで走り切り、後続に12秒以上の大差をつけて勝利を手にした。
レースを振り返ったビンダーは、最終ラップでは何度もマシンをうまく減速する事ができず、“おしまいだ”と思っていたこと、そしてコースに留まるのは不可能だと思っていたと認めた。
「話すことは多くない。最悪だったよ」と、ビンダーは言う。
Brad Binder, Red Bull KTM Factory Racing
Photo by: Gold and Goose / Motorsport Images
「(ホームストレートの)ボードを見るとプラス9秒とあった。後ろとの差がそのくらいの差なら、ウエット用のタイヤを履いているライダーなら捕まってしまう、スリックなら捕まらないだろうと思っていた」
「僕はただ自分のベストを尽くして、マシンを確実に減速しようとした。コーナーを回って、ストレートをまっすぐ走ることだけをしようとしていたんだ」
「つまり、最終ラップはコース上に留まるのも事実上不可能だった、というわけだ」
「実際に僕は何度も“終わった”と思ったよ。ターン3ではなかなか減速せず、リヤブレーキだけが多少効くような状態だったからね」
「リヤブレーキを使っていたんだけど横滑りしていたし、ステアリングも上手く効かなかった。でもなんとかマシンを減速して、コースに留まることができた」
「その後も、長い右コーナーでは前に進んでくれないし、同じ所にずっと留まってしまうような状態だった」
「誰かに後ろから抜かれるのも覚悟していた。でもチェッカーフラッグを見た時は安心したし、その一方で勝ったとは信じられなかった」
なおビンダーはリヤのミディアムタイヤのグリップが不足していたことで、ドライコンディションでも“最悪だ”と感じていたと認めている。ただそうであっても雨の中をスリックタイヤで走る“ギャンブル”を選んだのは土壇場での決断だったという。
「雨が降り始めたのを見た時、僕は先頭集団に近づいていた。そして残り4周で、マルクが後方を確認したから、彼らはピットに入るだろうと思った」
「僕は(スリックのまま)行くか、それともピットに入るか決められていなかった。そして先頭集団がピットに入った最後の瞬間に、僕はトライしてみることにしたんだ」
「(ステイアウトした)1周目は良かった。でもそれからの2周はちょっと別物だった」
「残り2周という時点では、なんとか走れた。でも最終ラップはブレーキが完全に冷えてしまって、タイヤもダメだった」
「だから減速できなかったんだ。ブレーキレバーをいくら強く引いても何も起こらない。だから減速しなければ……という場面でも、文字通り滑っていっているようだった」
「コースに留まるのには本当に苦労した。でも時にはギャンブルもしなくちゃいけないし、今日はうまくいったよ」
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