インタビュー

MotoGP

開発の肝はコミュニケーション。“ひとつの目標”に向かう組織作りが奏効|ヤマハ開発リーダーに訊く(2)

2019年のヤマハはMotoGPでコンストラクターズランキング2位と、苦戦した2018年から改善を示した。新たにヤマハのモトGPグループのグループリーダーに就任した鷲見崇宏氏に、ヤマハ内部でのコミュニケーションの改善などについて訊いた。

永安陽介

編集: 2020/01/20 10:12

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YZR-M1 2019 StudioShot

 2019年からヤマハのモトGPグループのグループリーダーを務める鷲見崇宏氏にシーズンの振り返りや展望を訊くインタビュー第2回。今回は氏を中心としたヤマハの組織内部での変化、そして2020年の開発の展望について語ってもらった。

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 ヤマハは2016年にECU(エンジンコントロールユニット)がソフトウェアも含めて統一化されると、徐々に苦戦していった。 

 2018年シーズンは、ヤマハにとってかつて無いほど厳しい年になった。2017年の第8戦オランダGPでバレンティーノ・ロッシが優勝したのを最後に26戦連続で未勝利……“ヤマハの連続未勝利記録更新”という不名誉な記録すら生まれてしまったのだ。

 2019年シーズンはマーベリック・ビニャーレスが2勝を挙げ、コンストラクターズランキングでも2位につけるなど復調の兆しを見せ、2020年シーズンに向けて期待を抱かせる締めくくりとなった。その裏には“コミュニケーションの改善”という重要な要素が隠されていた。

■ひとりはみんなのために、みんなはひとつの目標のために

 鷲見GLインタビューの第1回でお伝えしたように、ヤマハは2019年のマシン開発において『コーナー前後100メートルで、誰にも負けないクルマを作ろう』というスローガンのもと、焦点を絞った開発を展開した。その中で鷲見GLは、コミュニケーションを改善するという命題に心を砕いたという。

 鷲見GLは「様々な不満が上がってくる中で、まず地固めのために集中するポイントを決めた」と、2019年の開発方針を説明する。

「(不満を含めた)情報が上がってくると、当然電子制御、車体といったそれぞれの分野のプロが(別々に改善策を)考えることがあります。しかし皆でひとつの部分に集中して作業を行えば、ライダーが感じられるだけの“改善”に繋がるのではないかと考えたんです」

「不調の時は、色々不満が上がってくる中でモノを作っても、ライダーが実感するほどの改善には繋がっていませんでした」

 そうした中、鷲見GLらは、現場とヤマハ本社側とのコミュニケーションをシンプルなものにしようとしていた。

「多くの人間がいる中で、『はいこれ!』と号令をかけるだけではなくて、きちんとコミュニケーションをとって、受け止めやすい形にして、(スタッフが)動いてくれるようにすることが大事なんです」と、鷲見GLはチーム内でのコミュニケーションの重要さを説いた。

「皆が苦労している中、言ったことが100%伝わるわけではないです。本社側とチーム側の両方が風通し良くきちんと(情報を)伝えられるかというところが重要です。まずはそこを頑張ろうという形で(2019年を)やっていました」

 レースは開発から現場まで、多数の人間が関わって戦う。通常のビジネスでももちろんだが、それ以上にコミュニケーションが重要なのだ。

 だが様々な要因によって齟齬などが生まれてしまうこともある。文脈による言葉の捉え方の差もあるだろう。レースでは、車体・エンジン・制御の技術がそれぞれ専門化されているがゆえに、専門外の技術への理解度と互いの状況への想像力の不足が障壁となる可能性がある。チームからの不満点などを“足りないところ”として分かりやすく伝え、その道のプロである各グループ同士が共同で必要なものを生み出せるような体制を整えたと話す。

 更に鷲見GLはマシン開発の旗振り役として集中すべき点を見出し、開発の方向性を定めていった。そして2019年にヤマハは改善の兆候を示し始めた。

 鷲見GLはそれを自身の成果だとは微塵も誇らなかったが、上記のチーム内のコミュニケーションの改善について訊く限り、彼の手腕が効いていることは疑うべくもないだろう。

                 ……次回「2020年はタイトル奪還を目指す」に続く。

→【ギャラリー】マーベリック・ビニャーレスの愛機“YZR-M1”。精密スタジオショット

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