苦戦の佐藤蓮にはマルコ氏からも厳しい言葉。しかし中盤戦から光明あり|山本雅史が語る日本人レッドブルジュニアの現在地
昨年までホンダのF1マネージングディレクターを務め、現在はレッドブル・パワートレインズのサポートと、スーパーフォーミュラのTEAM GOHで監督を務める山本雅史。自チームに所属するレッドブル育成ドライバー、佐藤連について語った。
写真:: Masahide Kamio
レッドブルジュニアチームには現在、岩佐歩夢(FIA F2)、佐藤蓮(スーパーフォーミュラ)、荒尾創大、野村勇斗(共にフランスF4)と4名の日本人ドライバーが所属している。その中で、唯一国内カテゴリーで戦うジュニアドライバーが20歳の佐藤だ。
佐藤が所属するTEAM GOHの監督は、昨年までホンダのF1マネージングディレクターを務め、現在もレッドブルとの関係が深い山本雅史。そんな山本監督に、レッドブルの若手育成を取り仕切るヘルムート・マルコ氏からの佐藤の評価について聞くと、きっぱりとこう語った。
「日本の話は厳しく言っています」
今季からスーパーフォーミュラへステップアップし、同時にレッドブルジュニア入りも果たした佐藤は、富士での開幕戦でいきなり予選2番手を獲得するなど鮮烈なデビューを飾った。ただ、その後も随所で速さを見せる場面があったものの上位フィニッシュには届かず、最高位は第6戦富士の6位となっている(インタビュー時の最高位は開幕戦の9位)。
Ren Sato, TEAM GOH
Photo by: Masahide Kamio
「毎週月曜日にリザルトをレポートしていますが、『こんな結果じゃ満足できないね』とご指摘が返ってきます。もちろん結果が残っていないですからね。マルコさんは厳しいですし、表彰台が最低限の条件ですから」
山本監督は今季前半戦の佐藤について、同じレッドブルジュニアであり、フランスF4時代は佐藤と共にタイトル争いを展開した岩佐を引き合いに出して分析した。岩佐はF2の多くのレースでフリー走行から常に上位のタイムを出しており、これはチームと共に走り出しから流れを作れているからだと語る一方で、TEAM GOHと佐藤は第5戦SUGOから「やっとうまく噛み合ってきた」と語る。
山本監督曰く、SUGO戦からセットアップに関するチームのオペレーションに変更を加えたという。
「蓮君と三宅(淳詞)君は走らせ方もマシンの好みも違いますが、イニシャルのセットアップに関しては、エンジニアが『これがベストだ』という(2台同じ)セットアップを持ち込んでいました」
「しかし、その『ベストだ』というセットアップが蓮君には噛み合っていないということが分かってきたので、SUGOからは三宅君は三宅君のセットアップ、蓮君は蓮君のセットアップ、という形で週末を始めるようにしました。そうすることでお互いが連携し、切磋琢磨していけるような運営の仕方にしました」
その甲斐もあってか佐藤は、第5戦SUGOの予選ではうまくまとめ切れず11番手に終わるも、「フロントロウも狙えた」と語るほどの手応えを掴んでいた。一方、決勝は周回を重ねたタイヤで入賞圏内を走行中、1コーナーでのバトルの際にグリップの低いイン側のラインでスピン。16位に終わった。しかし、山本監督はこの結果について「監督のチョンボだ」と語る。
「SUGOに関しては、私がストラテジーの最後のジャッジを迷ったのが悪いです。それは蓮君にも謝りました」
「結果的に最初に立てたストラテジーの方が良かったんですが、ピットウォールでミーティングをした結果、それを変更してしまった。これは監督のミスです」
「本人からも無線で『その作戦で行きましょう!』と良い声のレスポンスが返ってきていたのに、その勢いを僕がへし折っちゃった。集中力が欠如しちゃって、その後のスピンの原因にもなったと思います」
「いつもは『レースは攻めないといけない』と角田や岩佐に言っていた僕が、コンサバな方に行っちゃったのが、自分で情けなかったです」
このインタビューの後、第6戦の富士で佐藤は、悪天候でイレギュラーな形となった予選では16番手に終わるも、決勝では上々なレースペースを見せながらステイアウトし、セーフティカー出動のタイミングでピットインできたことも奏功して自己最高の6位でフィニッシュした。流れは着実に上向いているように見える。
今季のスーパーフォーミュラは、8月のもてぎ大会(第7戦・第8戦)と10月の鈴鹿大会(第9戦・第10戦)で閉幕となる。開幕前のインタビューでは、もてぎ大会にはマルコ氏に来場してもらうことを計画していると話していた山本監督だが、マルコ氏は日本への入国に煩雑な手続きが必要なことに難色を示したとのことで、来日は実現しない見込み。佐藤が残りのレースで目を見張る活躍を見せることで、レッドブルにとって「放っておけない存在」になれるかどうか注目だ。
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