インタビュー
スーパーGT
「本当にレースで勝つのが難しいクルマ……」坪井翔が25号車MCでの経験を語る
2019シーズンいっぱいでスーパーGTの舞台から姿を消すことになったつちやエンジニアリングの25号車マザーシャシー。このマシンに携わり、苦楽を共にしてきたドライバーたちが“マザーシャシー”について語る。
吉田知弘
編集: 2019/12/26 9:27
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

つちやエンジニアリングの代名詞的存在だった86マザーシャシー。同チームはこの車両での参戦を2019年シーズンいっぱいで終了することを明らかにした。チームオーナーの土屋武士氏が「若い職人」を育てることを目的に長年使い続けてきたマザーシャシーだったが、それは同時にチームに携わったドライバーたちを成長させるマシンでもあった。
これまで5シーズンにわたって、このクルマで戦い、成長してきたドライバーたちの話をもとに、改めてマザーシャシーというマシンについて振り返っていこうと思う。
【連載】25号車マザーシャシーで成長したドライバーたち:(1)佐藤公哉
このマシンで戦ったことで、大きな成長を遂げたドライバー……そのひとりが坪井翔だ。
2018年の全日本F3選手権では19戦17勝という大記録を打ち立て、2019年から国内トップカテゴリーであるスーパーフォーミュラとスーパーGT(GT500)に参戦中の坪井。彼は2018年にはつちやエンジニアリングのドライバーとして、2度のポールポジションを獲得するなど他を寄せ付けない一発の速さを披露した。
「マザーシャシーは(車体が)軽いので、コーナーリングでは速いクルマではあるんですけど、その分ストレートは遅いです。特にガソリンを積むと車体が重くなって、レースではすごく大変です。予選は少ない燃料でいけるので一発のタイムを出しやすいクルマではあります。その反面で決勝になるとズルズル下がっていくレースが決勝では多かったです。結局(25号車では)1勝も出来ませんでした」
マザーシャシーに対する印象をこのように語った坪井。前年にはレクサスRC F GT3で中山雄一とともにシーズンを戦ったが、ABSをはじめとした電子制御が入っているGT3マシンに対して、電子制御がほとんど入っていないマザーシャシーへの対応は、坪井にとっても大きなチャレンジだったという。
「GT3は制御が立派で、トラクションコントロールだったりABSがしっかりしているので、ある意味で運転するのが簡単な車両ではあります。だけどマザーシャシーは制御関係は(GT3ほど)優秀ではなくて、トラクションコントロールとかABSをほとんど使っていませんでした。だから運転するのがすごく大変で難しいんですよ」
「速く走らせること自体が難しいですし、例えばレースになった時にアクセルやブレーキをスイッチのように(激しく)踏むことができるGT3に対して、マザーシャシーはアクセルやブレーキの踏み加減を微妙にコントロールしないといけません。その辺を意識しながらバトルをしていかなければいけないと考えるとドライバーにかかる負担は相当ありました」
「そういった意味では、(GT300クラス)1年目はGT3に乗っていて、正直『(最初は)スーパーGTってこんなものか』って最初は思っていましたけど、マザーシャシーに乗って(スーパーGTの本当の)難しさを実感しました。ひとりで走っている分には問題ないんですけど、GT500に抜かれる時や混戦になった時はまた別の難しさがあり、マザーシャシーに乗った1年間は色々勉強になりました」
もうひとつ、坪井にとってマザーシャシーで戦った1年間で得た“大きな収穫”がある。それはタイヤマネジメントだ。
「マザーシャシーはコース上でオーバーテイクするのが無理なので、ピット作業で挽回するしかありません。となると、タイヤ無交換作戦になるパターンが多かったです。無交換作戦になるとスタートドライバーを任された人は次のドライバーのためにタイヤをセーブすることも考えて走らなければいけません」
そう語った坪井は、25号車に加入し最初のレースとなった2018年開幕戦岡山で、悔し涙を流す経験をした。第1スティントを任された坪井は、目の前のマシンを抜くことに没頭してしまい気づかない間にタイヤを酷使。それが第2スティントに響き、レース終盤で順位を落としてしまった。
「GT300での1年目は、そもそもスタートドライバーをやったことがなくて、2年目になって25号車でいきなり初めてのスタートドライバーを任されました。でもタイヤ無交換作戦の中で自分がタイヤを労わることができなくて、(後半に)順位を落としてしまいました」
「もしかしたら優勝できたかもしれないレースを落としてしまったという悔しさもありました。そこで改めてタイヤの使い方であったり、このクルマをどうやって速く走らせたらいいんだという……自分のスキルアップに間違いなく繋がっています」
「特に今年はマザーシャシーの時に履いていたヨコハマタイヤでGT500を戦ったので、タイヤをどう使っていけばいいかという点でも、すごく活きた部分はたくさんありました」
「そういった意味ではマザーシャシーの時は結果は出なかったですけど、良い1年だったなと思いますし、GT3だけだと得られなかったこともあったと思います。もちろんGT3で勉強になったこともたくさんあるので、僕はGT300での2年間でどっちの車両にも乗れて良かったです」
Photo by: Masahide Kamio
Read Also:
- つちやエンジニアリング、2020年のスーパーGTにポルシェ911で参戦
- 苦渋の決断……つちやエンジニアリングが来季の参戦車両変更を発表
- 25号車MCが残した“最後のプレゼント”、土屋武士「最後まで役目を全うしてくれた」
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
コメントを読んで投稿する
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 GSR、谷口&片岡コンビ継続。新型マシン投入で”ジンクス”の2020年戴冠狙う
次の記事 「毎回のアップデートが面白かった!」GT500王者の山下健太を育てた25号車MCの魅力とは
Top Comments
コメントはまだありません。 最初のコメントを投稿しませんか?
View More & Comment
More from
吉田知弘

次なる目標に向かって……GT300王者の藤波清斗、今季はSFライツのフル参戦も狙う
SFライツ
SFライツ 2021/03/11
次なる目標に向かって……GT300王者の藤波清斗、今季はSFライツのフル参戦も狙う

早くも日産ファミリーの一員に……松下信治、新天地でリラックスした表情見せる
スーパーGT
スーパーGT 2021/02/16
早くも日産ファミリーの一員に……松下信治、新天地でリラックスした表情見せる

スポーツランドSUGO、2月13日の地震による被害はなし。改修工事も順調に進行中
General
General 2021/02/15
スポーツランドSUGO、2月13日の地震による被害はなし。改修工事も順調に進行中

More from
坪井 翔

ハース&トヨタのTPCは、日本のドライバーに”F1という夢”を感じさせる絶好の機会。福住仁嶺「難しいと思っていた夢が、また現実味を帯びてきた」
F1
F1
ハース富士TPC
1 ヵ月前
ハース&トヨタのTPCは、日本のドライバーに”F1という夢”を感じさせる絶好の機会。福住仁嶺「難しいと思っていた夢が、また現実味を帯びてきた」

”めっちゃダサかった”坪井翔、自身のミスでQ3進出を逃す……しかし決勝には自信「雨予報だけど、なんとかレースしたい」
スーパーフォーミュラ
スーパーフォーミュラ
第3戦:オートポリス
5 ヵ月前
”めっちゃダサかった”坪井翔、自身のミスでQ3進出を逃す……しかし決勝には自信「雨予報だけど、なんとかレースしたい」

坪井翔「今年は岩佐歩夢の年だった」スーパーフォーミュラ連覇打ち砕いたライバル称賛。トヨタ陣営としての来季逆襲に燃える
スーパーフォーミュラ
スーパーフォーミュラ
第11戦・第12戦鈴鹿
10 ヵ月前
坪井翔「今年は岩佐歩夢の年だった」スーパーフォーミュラ連覇打ち砕いたライバル称賛。トヨタ陣営としての来季逆襲に燃える
最新ニュース

モナコGPのスプリント開催、フェルスタッペンは無の境地? 「どこだろうと気にしていない」
F1
F1 F1
アゼルバイジャンGP
38 分前
モナコGPのスプリント開催、フェルスタッペンは無の境地? 「どこだろうと気にしていない」

フェルナンド・アロンソ、アストンマーティンとの契約を2027年まで延長。将来に関する憶測に終止符
F1
F1 F1
アゼルバイジャンGP
11 時間前
フェルナンド・アロンソ、アストンマーティンとの契約を2027年まで延長。将来に関する憶測に終止符

MotoGPが挑むアデレード市街地サーキット、安全性にライダー合格点? シミュレーション確認し「いい仕事した」
MotoGP
MGP MotoGP
オーストラリアGP
12 時間前
MotoGPが挑むアデレード市街地サーキット、安全性にライダー合格点? シミュレーション確認し「いい仕事した」

9年ぶりのマレーシアは“高温多湿”への対処が鍵に。ホンダF1「冷却と空力バランスの見極めが重要」
F1
F1 F1
アゼルバイジャンGP
13 時間前
9年ぶりのマレーシアは“高温多湿”への対処が鍵に。ホンダF1「冷却と空力バランスの見極めが重要」
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録