スーパーGT 開幕戦:岡山
スーパーGT岡山戦ではなぜ『ピックアップ』に皆苦しむのか? ヒントは開催時期とコース特性か……ミシュランが解説
スーパーGT開幕戦の舞台である岡山国際サーキットでは、多くのマシンが『ピックアップ』と呼ばれる現象に苦しむが、そのメカニズムについてミシュランに聞いた。
戎井健一郎
公開日時: 2023/04/13 10:32
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2023年のスーパーGTがいよいよ開幕を迎える。開幕戦の舞台は恒例の岡山国際サーキット。全長3.703km、短いストレートを低速コーナーで繋いだテクニカルサーキットだ。
そんな岡山でのスーパーGT戦で度々話題にあがるのが『ピックアップ』と呼ばれる現象である。そもそもピックアップとは、レースを戦う車両のタイヤの表面ゴムに、タイヤかすなどの異物が付着してしまい、それによりタイヤが本来の性能を発揮できなくなりペースが落ちる現象を指す。スーパーGTではGT500、GT300という2クラスのマシンが計40台以上で混走しているため、バックマーカー処理やオーバーテイクのためにレコードラインを外す機会も多く、タイヤかすを拾うことを完全に避けることは難しい。
このピックアップはどのサーキットでも多かれ少なかれ起きるものだが、岡山戦は特に苦しめられるチームが多いように見受けられる。果たしてそれはなぜなのか? 日本ミシュランタイヤのモータースポーツダイレクター、小田島広明氏に聞いた。
小田島氏の説明によると、岡山戦でピックアップが起きやすい理由には、岡山国際サーキットのコース特性、そして岡山戦の開催時期(4月中旬)が色濃く影響していそうだ。
「そもそも、競争力のあるタイヤを作ろうとした場合、よりグリップする、路面にくっつきやすいゴムを選んで、それをいかに持たせるかというアプローチになります。単純に硬い、柔らかい(でグリップ力が決まる)という話ではありませんが、ひとつの物差しで言うと、いわゆる“柔らかい方”のタイヤということですね」
小田島氏はそう説明する。
「しかも(岡山戦は春先の開催で)温度域も低いので、よりくっつきやすいゴムを使いやすくなるんです。岡山の場合は熱対策をして強固なゴムを使わなくとも、どちらかというとトリモチのようにくっつく方を使った方が良いです」
「しかしそうした場合のデメリットとして、どうしても色々なものを拾いやすくなってしまいます。しかも岡山は空力的な押さえ込みがあまりないので、くっついたものをぐっと押し付けて取ることができないんです」
岡山は前述の通り、短いストレートの他はほとんどが低速、中速コーナーで構成されており、タイヤにかかる負荷自体は比較的小さく、真夏のレースのように路面温度が著しく上昇することもない。そのため低温・低負荷のコンディションで性能を発揮する、一般的に“ソフト”などと呼ばれるコンパウンドのタイヤを投入するわけだ。
しかしそういったコンパウンドのタイヤはタイヤかすのような異物を”くっつけ”やすく、そうなると駆動力や制動力、コーナリングフォースを路面へと伝達する力が落ちてしまう。それによって、タイヤの摩耗とは別のベクトルで性能低下が起きてしまうのだ。
しかも岡山はその低速なコース特性から、ダウンフォースが強烈に効くような箇所が少ない。空力でタイヤを路面に押し付ける力が強ければ、拾ったタイヤかすを押し飛ばすことで除去できるのだが、それも他のサーキットよりも難しいのだ。
ピックアップはゼロにはできないが、その影響を最小限に抑える技術を投入することで、レースタイムを安定させることができると語る小田島氏。ミシュランはこのテーマにおいて「ひとつの解を得ている」と自信を見せる。
実際、昨年のミシュラン勢は岡山戦で印象的なパフォーマンスを見せた。予選では23号車MOTUL AUTECH Zが9番手、3号車CRAFTSPORTS MOTUL Zが14番手と後方に沈んだものの、決勝では終盤にかけてコース上にタイヤかすが増え、各車がピックアップに悩まされる中で安定したペースを刻み、23号車が3位、3号車が5位でフィニッシュしたのだ。
小田島氏はピックアップ対策の一例として、ピックアップを取れやすくするアプローチがあるという。
「トリモチのようなゴムを使いながらも、異物がいつまでも残らないように、早く取れてくれるような技術ですね」
「タイヤは表面のトレッドラバーだけで機能しているわけではありません。確かに接地面のゴムが路面にくっつくわけですが、そこはゴムだけの仕事ではなく、例えば構造とのマッチングだったりするんですね」
そう語る小田島氏。ただし、タイヤを路面に押し付けるために単純に構造を強固にすればいいというわけではないと説明する。
「確かにタイヤの構造を硬くすると、もしかするとダウンフォースに頼らずに押し付けも強くなって、ピックアップを排除しやすくなるかもしれません。しかしそうすると、3周で垂れて終わっちゃうタイヤになってしまう可能性があります」
「例えばサスペンションを例にしてお話しすると、サスペンションのバネレートを硬くすればするほど、荷重移動が速くなってレスポンスは良くなりますが、その分タイヤへの負荷は大きくなります。レスポンスが良くなっただけで実際のグリップは上がっていないですし、サスペンションが(衝撃を)拾ってくれないのでタイヤは傷みやすいし、その結果タイムはどんどん落ちていく……悪循環になっていきます」
「つまり、硬くすればいいわけではない、ということです」
このように、一元的に考えることができないのがタイヤの世界。そんな中でミシュランは“解”を見つけていると語るが、ライバルメーカーであるブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップはどのような解を導いて岡山に乗り込んでくるのか。そういった点も見どころだ。
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