【スーパーGT】大胆な新パターンのウエットタイヤをテストしたブリヂストン。その評価は時期尚早もミシュランとの差は縮まった?
スーパーGT富士テストで新しいトレッドパターンのウエットタイヤをテストしたブリヂストン。その最終的な評価を下すのは時期尚早という声も聞かれるが、昨年はミシュラン一強だった勢力図に変化をもたらす可能性もありそうだ。
Bridgestone tyre
Masahide Kamio
2日間を通してウエットコンディションで開催されたスーパーGT富士テスト。このテストに向けては、多くのメーカーが新しいトレッドパターンのウエットタイヤを持ち込んでいた。GT500クラスで15台中10台にタイヤを供給するブリヂストンもそのひとつだった。
ブリヂストンは昨年まで、トレッドの中心に縦溝が2本、その両サイドには横方向に水を掻き出す曲線的な溝を入れていた。ただ今回テストされた新しいパターン(メイン写真)を見ると、縦溝がなく、斜めに互い違いに入れられた3本セットの大きな溝が水を排水するようなパターンになっていることが分かる。またこの大きな溝の間には、ショルダー部分にのみ短い溝も入れられている。
BSタイヤの従来パターン
Photo by: Masahide Kamio
ブリヂストンユーザーの各チームはテストの中で新旧のタイヤを履き比べていたが、TEAM IMPULのベルトラン・バゲットによると、今シーズン最終的にどの仕様のタイヤが使われるかは決まっていないようだ。
新しいトレッドパターンとなり、感触は良くなったかと問われたバゲットは「感触は良いけど、いつも通り良い点とそうでない点がある」とコメント。特にブリヂストンはトヨタ、ホンダ、日産というGT500の3メーカー全てにタイヤを供給している唯一のタイヤメーカーであり、その全てに同じものを供給し、なおかつそれぞれにフィットするものにしないといけないところは大変だろうと話した。
他の関係者からも、新トレッドパターンのタイヤには善し悪しがあり、現時点で決定的な評価を下すのは時期尚早だとする声が聞こえてきた。
Bridgestone tyre
Photo by: Masahide Kamio
HRC(ホンダ・レーシング)でNSX-GTの車体開発を率いる徃西友宏氏は「良い面もありつつ、これだという大きなステップアップがあるかどうかについては、まだハッキリ分かっていません。突出して良いものはまだ見つかっていないのかなという印象です」としており、8号車ARTA MUGEN NSX-GTの野尻智紀も「(感触は)すごく変わりますね。それがどうかと言われると、判断は難しいです。それぞれ良し悪しがあって、いつでもいける、という感じではない気がします」と話していた。
富士テストのリザルトを見てみると、雨量の比較的少ないコンディションでは、昨年から雨で圧倒的な強さを見せているミシュラン勢に加え、ヨコハマ勢も速さを見せた。その一方で、雨量の多いコンディションではブリヂストン勢が上位を独占するという結果になっていた。
“ちょい濡れ”路面でのヨコハマの躍進には彼らの新トレッドパターンも大いに寄与しているようだが、フルウエットでのブリヂストンの強さは従来からのものであり、トレッドパターンの変更が影響しているわけではないようだ。
これについて野尻は「ブリヂストンのタイヤは前々からゴムを温められないような大雨でも幅広く対応してくれる印象ですし、パターンが変わったことで良くなっているわけではないと思います」とコメント。今季からブリヂストンユーザーとなった16号車ARTA MUGEN NSX-GTの大津弘樹も、BSタイヤ全般の印象として「排水性が良くてハイドロプレーニングが起きにくい。どしゃ降りの中でも普通に走れることに驚きました」と話した。
また野尻は、今回のテストでは各タイヤメーカーのトレッドパターンが注目を集めているが、タイヤの性能はトレッド面だけで決まるものではないため、短絡的に考えるべきではないと語る。
「パターンはあくまで外から見えるものであって、外から見えないものの中で、もっと大きなウエイトを占めているものがあるのではないかと思っています」
Photo by: Masahide Kamio
「例えば、ブリヂストンがヨコハマさんと同じパターンにしたところで、全く同じにはならないと思います。パターンというのは表面の話であって、タイヤは(コンパウンドや構造などを含めた)トータルのマッチングなので、パターンを他に寄せたから良くなるわけではないと思います」
「パターンが見えてしまうと、そこに注目してしまいがちですが、そこだけに注目してしまうと、ドツボにハマってしまうのではないかと思います」
このようにブリヂストンをはじめ、各タイヤメーカーはウエットタイヤで積極的な開発を進めているようだ。昨年はウエットレースのSUGOでミシュラン勢が圧倒的な速さを見せたが、同じような展開にはならないのではないかとバゲットは言う。
「ブリヂストンも少しは追い付いてきているはずだし、ヨコハマも追い付いてきているように見える。ミシュランが昨年のSUGOのような圧倒的な強さを見せるとは思えない。差は縮まっているはずだ」
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