インディカーで“無双中”のアレックス・パロウ。その才能はスーパーフォーミュラでも際立っていた「固まった乗り方がない」
現在インディカー・シリーズで圧倒的な強さを見せるアレックス・パロウ。スーパーフォーミュラ時代には、車両が抱えるウィークポイントに対してドライビング修正で対処できる力を持っていたという。
Alex Palou, Chip Ganassi Racing
写真:: Michael L. Levitt / Motorsport Images via Getty Images
いよいよ開催が迫る2026年のインディ500。佐藤琢磨の3勝目なるかにも注目が集まるが、昨年の覇者であるアレックス・パロウも優勝最有力のドライバーだ。
パロウは昨今のインディカー・シリーズを席巻しており、2021年、2023年〜2025年の計4度シリーズチャンピオンに輝いている。しかも参戦開始は2020年……デビューからの6シーズンで王座4回と驚異的なペースでトロフィーを積み重ねるパロウは今季も快調なスタートを切っており、この勢いはしばらく衰えそうにない。
そんなパロウもかつて日本でレース活動をしていた時期があり、2019年にはスーパーフォーミュラに参戦。わずか1シーズンの参戦だったがチャンピオンを争ってランキング3位に入り、大きなインパクトを残した。近年の国内モータースポーツにおける「才能あるドライバーの登場」の代表例として、未だにパロウの名前がパドックであがることも少なくない。
NAKAJIMA RACINGでパロウを担当していた加藤祐樹エンジニア(現在は佐藤蓮を担当)は当時のことを振り返り、パロウとは”役割分担“をハッキリしていたと話す。
パロウと加藤エンジニア
写真: Masahide Kamio
「コミュニケーションが良すぎると、下手するとクルマのことで一緒に悩んでしまう可能性があります。僕が考えていることもツーツーで分かるので、『じゃあバネはどうしたらいいんだろう』とか、一緒にエンジニアリングしてしまう場合もあります」
「アレックスの場合は『そこはお前に任せた』と言う人でした。理解はしてくれた上で、あるところで線を引いてくれる……彼が『あとは俺が頑張ってくる』と言う局面が随所にありました」
また加藤エンジニアはパロウについて、「こだわりがないんですよね。固まった乗り方がないんです」と評する。そのため、状況に応じてドライビングを臨機応変に変化させることができていたという。
「あの年(2019年)はそんなに調子が悪くなかったので、マシンのセットアップコンセプトをガラッと変えることはあまりありませんでした。ただその中でも抱えている弱点はあったのですが、そこをドライビングでアジャストするのは早かったですね」
写真: Masahide Kamio
セットアップ変更でマシンを完璧な状態とするのは至難の業であり、ある領域のパフォーマンスを改善させられたとしても、その代償として別の領域のパフォーマンスが落ちてしまうこともしばしば。その中でパロウは、車両が抱えるウィークポイントを、走らせ方をアジャストすることで器用に消すことができていたのだというのだ。これは例えプロのレーシングドライバーであっても、理屈では分かっていても実際にそれをタイム改善に繋げるのは簡単なことではないという。
そういったパロウの器用さが際立ったエピソードのひとつが、最終戦鈴鹿の予選。Q1、Q2と終えた時点で、自分たちよりも1周少ないウォームアップでアタックをして好タイムをマークしていたダンディライアン勢を見てパロウは「あいつらと一緒のやり方でいきたい」とQ3直前に直訴したという。
パロウの「俺がなんとかする」という声にも背中を押された加藤エンジニアは急ピッチでタイヤ内圧等を計算し、セットアップを調整して送り出したところ、パロウは見事ポールポジションを獲得。決勝ではソフトタイヤ交換後のペースに苦しみタイトル獲得はならなかったが、パロウの起点と器用さがルーキーイヤーでの王座をグッと近付けた瞬間であった。
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