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MotoGP サンマリノGP

【アプリリア|勝利への道】圧倒的強さ発揮も”別カテゴリー”……量販車ベースの忘れざるCRT時代

MotoGP2022年シーズンに初優勝を成し遂げたアプリリア。最高峰クラスでは長く苦戦が続いていたアプリリアの、最高峰クラス初期からの”旅”を振り返り、現在の好調なシーンまでの繋がりを今一度見てみよう。第2回はMotoGPクラスに設定されたCRTルール時代の苦闘の歴史……。

西村 章

公開日時: 2022/09/01 9:25

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Aleix Espargaro, Aspar Team ART

 2022年MotoGP第3戦アルゼンチンGPでアレイシ・エスパルガロが挙げた優勝は、アプリリアの企業史に残る歴史的な出来事だった。テルマス・デ・リオ・オンドで繰り広げられたドラマチックなレースと勝利は、エスパルガロのキャラクターとも相まって日本のファンたちの気持ちも大きく揺り動かしたようだ。

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 そこで、アプリリアが最高峰クラスの初勝利を達成するまでの長い道のりを、数回に分けて振り返ってみたい。

 第2回は2015年から開始したプロトタイプマシンでの参戦の前段階となる**”CRT時代”**についてだ。


 MotoGPでは2004年末に最高峰クラスの戦いから退いたアプリリアだが、その後も中小排気量クラスでは強さを発揮した。小排気量クラスでは、2005年から2ストローク125cc最終年の2011年の7シーズンまでで6名のチャンピオンを輩出。中排気量クラスは、2005年からMoto2へ切り替わる前年2009年までの5シーズンで3回のライダーズタイトルを獲得している(両クラスともデルビ、ジレラブランドを含む)。

WSBK マックス・ビアッジ

WSBK マックス・ビアッジ

Photo by: Fabrice Crosnier

 また、2009年からはスーパーバイク世界選手権(WSBK)に、量産車フラッグシップモデルのRSV4をファクトリー体制で投入。ライダーの顔ぶれも、MotoGPで活躍したマックス・ビアッジと中野真矢という強力な顔ぶれを揃えた。このチームを率いていた人物が、ジジ・ダッリーニャだ。

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 中野はシーズン途中に鎖骨を骨折し、結局、このケガが影響して好成績を残すことができずにこの年限りで現役活動から退いた。引退後にSBK時代を振り返った際には、「鎖骨を折って首も傷め、それでもファクトリーだから休めないのでぐるぐるにテーピングして痛み止めも打ち、泣きながら走りました(笑)。引退しよう、と思ったのはあのときですね。それくらいキツかった」と半ば冗談めかして述べた。

「ジジもいろいろと工夫をしてくれましたが、僕の身体が言うことをきかなくて、期待に応えられないまま終わってしまった。それがとても心残りでしたが、あのときのチームスタッフは本当に温かかった。心から感謝を述べたいですね」

 そう言って、彼はさらに短くこう付け加えた。

「あの年のビアッジは、すごく速かった」

 この中野の言葉を証明するように、ビアッジは翌2010年にWSBK王座を獲得した。2011年はランキング3位で終わったが、2012年にはタイトルを奪還、2度目の王座に就いた。

 この4ストローク1000ccのRSV4を、アプリリアは2012年にMotoGPの世界へ持ち込んだ。

 この年から、MotoGPではCRT(クレーミング・ルール・チーム)という制度が導入された。減り続ける参戦台数にテコ入れを図るため、ドルナが参入の敷居を低くして導入したルールだ。最先端技術の粋を尽くしたプロトタイプマシンで争うMotoGPファクトリー勢に対して、CRTの場合はオリジナル車体に量産車ベースのエンジンを搭載したマシンで参戦する。タンク容量や最低重量など、様々な面で制限が緩やかな措置が設けられているが、アプリリアはこのCRTという枠組みで最高峰クラスへ事実上の復帰を果たした、というわけだ。

2012年シーズン アレイシ・エスパルガロ(アスパル)

2012年シーズン アレイシ・エスパルガロ(アスパル)

Photo by: Aspar Team

 とはいえ、CRTのルール上では量産車そのままのRSV4を走らせるわけにはいかないので、エンジンにはチューンを施し、車体は独自設計のものを使用している。名称も、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティのようにプロトタイプマシン製造者のメーカー名を使用することはできない。そこで、アプリリアはレーシングチームの略称と同じARTという名前を用いた。

 2012年のMotoGPに、ART勢は3チーム4台が参戦した。なかでも、アスパルチームが走らせるマシンはART GP12と称し、他のARTマシンよりもワンランク上のものだった。

 具体的には、RSV4にチューンを施したエンジンを、アプリリアが別途製作したオリジナルフレームに搭載した仕様で、事実上のファクトリースペック、といっても差し支えないようなものだった。それでもやはり、量産車ベースのマシンはフルファクトリースペックのプロトタイプにはかなわない。ホンダやヤマハ、ドゥカティと比べると20~30馬力、トップスピードでも20~30km/hの差があった。

 このART製CRTマシンを駆るアスパルチームライダーは、ランディ・ド・プニエと当時はまだアレックスと表記していた頃のアレイシ・エスパルガロ。つまり、エスパルガロとアプリリアが最高峰クラスでコンビを組んだのはこの年が最初、ということになる。ちなみに、彼が名称を現在のアレイシに改めたのは2014年。CRTの後継的枠組みになったオープンカテゴリーの、フォワードレーシングに移籍したシーズンだ。

 2012年に話を戻すと、このRSV4をベースとしたARTマシンはCRT勢の中で圧倒的な強さを誇った。翌2013年も他のCRTを寄せつけもしなかった。しかし、ホンダ、ヤマハ、ドゥカティのファクトリー陣営と比べると、ART勢はレースタイムでいつも数十秒の大差をつけられていた。まともなバトルになったことも一度もなかったと記憶している。いわば、”別カテゴリー”のバイクが同一レースを混走しているような状態だったのだから、決勝でプロトタイプのファクトリーマシンと量産ベースのCRT車が絡まないのは当然の結果でもある。

 このアプリリアでマシン開発を牽引していたのは、上記のとおりジジ・ダッリーニャだ。当時は上級副社長という要職にも就いていたが、その彼が2013年秋にドゥカティへ移籍した。その後任として、アプリリアのマシン開発とレースプロジェクトを統率することになったのが、ロマノ・アルベッシアーノだ。

 アルベッシアーノ就任初年度の2014年には、WSBKでシルバン・ギュントーリがチャンピオンを獲得した。そして翌2015年に、当初は2016年を見込んでいたプロトタイプマシンによるMotoGP参戦計画を一年前倒しして、アルベッシアーノたちは11年ぶりのグランプリシーン復活を果たした。バイクは新設計のV型4気筒、RS-GPが投入された。(続く)

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