F1 メキシコシティGP

メキシコシティGPはわずか5周で終戦、大惨敗アストンマーティン・ホンダ。気になる2年前”RB20”との乖離……キーワードは『運転限界』

HRCは運転限界を見極めることでレッドブルのパフォーマンス向上に貢献してきた過去がある。それが冷却の問題でわずか5周しか走れなかったのはなぜなのか……。

田中 健一

編集: 2026/11/04 10:59

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

Lance Stroll, Aston Martin

Lance Stroll, Aston Martin

写真:: Alastair Staley / LAT Images via Getty Images

 F1メキシコシティGPの決勝レースで、アストンマーティン・ホンダ勢は2台揃って5周を走ったところでリタイアに終わった。ホンダF1の折原伸太郎トラックサイド・ゼネラルマネージャー兼チーフエンジニアによれば、「ERS(エネルギー回生システム)の冷却システムに想定以上の負荷がかかった」ということだ。

 実際ドライバーたちにも、温度が想定以上に上がっているということが伝えられ、マシンを冷やすべく単独で走行することを狙って3周目にピットストップまでしている。しかしそれでも状況は好転せず、リタイアするしかなかった。

「ERSの冷却回路に、特殊な状況下で負荷がかかっていたことが分かりました。冷却の仕様ではありません。これは、標高が高いことの影響だと思います」

 レース後の会見で折原エンジニアはそう語った。

「通常、標高が高くても、我々の冷却回路に影響を与えることはありません。しかし標高が高いことでエンジンのシステムに何らかの衝撃が加わり、それが冷却回路に影響したのです。詳細をご説明するのが難しいですが、メキシコのコンディションが、冷却システムに負荷をかけたようです」

 この状況は、過去のホンダの状況とは大きく乖離しているように感じられた。

 時は2024年の2月に遡る。

 当時のホンダは正式にはF1 に参戦していない状況だったが、HRCを介してレッドブルにパワーユニットを供給していた。そしてレッドブルが同年用マシンとして開発したRB20は、実に過激なデザイン。サイドポンツーンの開口部がかなり狭く、これでパワーユニットがちゃんと冷えるのかと、多くの人がそう訝しんだ。しかしRB20は高い戦闘力を発揮した。

 当時HRCでF1プロジェクトのラージ・プロジェクトリーダー(LPL)を務めていた角田哲史エクゼクティブ・チーフエンジニアは、こんな説明をした。角田エンジニアは、今年の9月いっぱいまでHRCのPU開発を率いていたまさにその人である。

「信頼性開発という名の、ポテンシャルを最大限に発揮するという開発を行なっています。耐久テストを行なうことで、運転限界……つまり”どこまで使って大丈夫なのか”という確認領域を広げているんです。それにより、最大限のポテンシャルを出し切る開発をしています」

 角田エンジニアはそう語っていた。

「エンジンが熱くなると、部品の強度限界がやってきて壊れてしまいますから、出力を下げざるを得ません。出力を下げずにどこまで運転温度を上げられるかを確認していった結果として、チームに『ここまでは使っていいですよ』ということを言えるんです」

「例えば100℃以下で運用してくださいと言って出来たラジエーターと、110℃まで使っていいですよと言って出来たラジエーターのサイズは違います。そういう限界値を上げていくことで、車体の設計自由度を増やすわけです」

 当時のF1は、PU開発が数年にわたって凍結されている真っ只中であった。しかし運転限界を引き上げることでパワーアップを実現する……ホンダにはそういう検証やシミュレーションを行なう技術・知見があった。それは今も変わらないはずだ。

 にもかかわらず今回のメキシコでわずか5周しか走れなかったというのは、どうにも理解しにくい。

 総じて言えば、運転限界の見極めが足りなかったことが理由であるのは間違いない。しかしそれがPU側の問題なのか、あるいは要求された冷却性能を車体側で確保できなかったからなのかは、現時点で明かされた情報からだけでは判断するのは難しい。もしかしたら、何か予測しにくい別の要素があるのかもしれないが。

 ただいずれにしても、ホンダとアストンマーティンのどちらか一方が悪いと断じるような話ではないのだろう。相互がより理解しあい、コミュニケーションが密であれば、今回のような状況には至らなかったのではないかと思われる。

 先日、HRCの渡辺康治社長はmotorsport.comの独占取材に対し、こんなことを語ってくれた。

「PUもシャシーも、まだ多くの課題を抱えています。片方がパーフェクトというわけではないです」

「シャシーとPUを違う会社が作っています。その中で、より高いレベルで連携しながら開発を進めることが重要だと考えています。時間とともにワンチームとして成熟し、互いの仕事の進め方への理解が深まるほど、開発スピードも効率もより向上するはずです」

 渡辺社長が語ったように、現状から脱却するためには、アストンマーティンとホンダが今以上にしっかりと統合することが鍵となるのだろう。そしてそのための動きが今も進んでいることを願うしかない。

関連ニュース:

【PR】2026年のF1™︎を見るならFOD。至極の体験『F1® TV』連携プランも!

【PR】2026年のF1™︎を見るならFOD。至極の体験『F1® TV』連携プランも!

 

あなたの意見が聞きたい!

Motorsport.comで何を見たいですか?

5分間のアンケートにご協力ください。

- Motorsport.comチーム

関連ニュース :

記事をシェアもしくは保存

Copy link

Facebookでシェアする

Twitterでシェアする

WhatsAppでシェア

Linkedinでシェアする

Pinterestでシェアする

Viberでシェア

前の記事 NTT、マクラーレンF1とのパートナーシップ締結を発表。島田明社長「マクラーレンとNTTには多くの共通点がある」

More from

田中 健一



NTT、マクラーレンF1とのパートナーシップ締結を発表。島田明社長「マクラーレンとNTTには多くの共通点がある」

F1

F1 1 時間前

NTT、マクラーレンF1とのパートナーシップ締結を発表。島田明社長「マクラーレンとNTTには多くの共通点がある」



F1分析|フェラーリ、メキシコで勝利逃す……ピットストップ戦略は正しかったのか?

F1

F1

メキシコシティGP

23 時間前

F1分析|フェラーリ、メキシコで勝利逃す……ピットストップ戦略は正しかったのか?



今週末のサンパウロGPは雨の可能性も? ホンダF1折原エンジニア「激しい雨も想定して準備中」

F1

F1

メキシコシティGP

1 日前

今週末のサンパウロGPは雨の可能性も? ホンダF1折原エンジニア「激しい雨も想定して準備中」

More from

アストンマーティン



アストンマーティン・ホンダにとってメキシコシティGPは厳しい1戦に。ホンダ折原エンジニア「ERS冷却システムに想定以上の負荷がかかった」

F1

F1

メキシコシティGP

2 日前

アストンマーティン・ホンダにとってメキシコシティGPは厳しい1戦に。ホンダ折原エンジニア「ERS冷却システムに想定以上の負荷がかかった」



アストンマーティン2台揃って5周リタイア。アロンソ「モチベーションを維持するため最善を尽くす」 ニューウェイ代表のコメントは僅か1行だけ

F1

F1

メキシコシティGP

2 日前

アストンマーティン2台揃って5周リタイア。アロンソ「モチベーションを維持するため最善を尽くす」 ニューウェイ代表のコメントは僅か1行だけ



フェルナンド・アロンソ、予選Q1でトラブル発生! 上位進出のチャンスを逃す「想像を絶するほど悔しい」

F1

F1

メキシコシティGP

3 日前

フェルナンド・アロンソ、予選Q1でトラブル発生! 上位進出のチャンスを逃す「想像を絶するほど悔しい」

最新ニュース



メキシコシティGPはわずか5周で終戦、大惨敗アストンマーティン・ホンダ。気になる2年前”RB20”との乖離……キーワードは『運転限界』

F1

F1 F1

メキシコシティGP

2 分前

メキシコシティGPはわずか5周で終戦、大惨敗アストンマーティン・ホンダ。気になる2年前”RB20”との乖離……キーワードは『運転限界』



とにかくナチュラルに速い! 国内トップカテゴリー1年目から予選上位常連の野村勇斗「特別なことは何もしていないです」

スーパーGT

SGT スーパーGT 23 分前

とにかくナチュラルに速い! 国内トップカテゴリー1年目から予選上位常連の野村勇斗「特別なことは何もしていないです」



バニャイヤ、ドゥカティでの残り3戦は「生き残ること」が目標に。期待したマレーシア大苦戦で希望失う

MotoGP

MGP MotoGP

マレーシアGP

59 分前

バニャイヤ、ドゥカティでの残り3戦は「生き残ること」が目標に。期待したマレーシア大苦戦で希望失う



NTT、マクラーレンF1とのパートナーシップ締結を発表。島田明社長「マクラーレンとNTTには多くの共通点がある」

F1

F1 F1 1 時間前

NTT、マクラーレンF1とのパートナーシップ締結を発表。島田明社長「マクラーレンとNTTには多くの共通点がある」

Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.

フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。

次の 2 つのオプションがあります。

購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします

広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード

お知らせの管理

登録