F1 オーストリアGP

レッドブルが懸念する26年PUの”電力比”向上。ホンダはエンジンの全開率を上げることで対処へ「コーナリング中もMGU-Kで発電する」

2026年からF1に正式復帰するホンダは、エンジンの全開率を上げることで、扱う電力量が激増する新レギュレーションに対処することを目指している。

Tetsushi Kakuda, Honda F1 project leader

 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、2026年からパワーユニット(PU)のレギュレーションが変わり、エンジンと電気エネルギーのパワー比が50対50になることについて、長いストレートの途中で電力切れを起こしてしまい、スピードダウンしてしまうことを懸念している。しかしホンダのF1プロジェクトを率いるHRC(ホンダ・レーシング)の角田哲史エクゼクティブ・ディレクターは、エンジンの全開率を高くして、その問題に対処する予定だと語った。

 レッドブルのホーナー代表はオーストリアGPの際、新レギュレーションではF1マシンがサーキットを1周する際に電力切れ(デプロイメント切れ)を引き起こし、レースを台無しにしてしまうとの懸念を表明。エンジンのパワーと電動パワーの比率を見直す必要があると主張した。

 その中でホーナー代表は、「PUの特性上、内燃エンジンはバッテリーを充電するための発電機にはならないんだ」と語っているが、ホンダはこのホーナーが言う発電機として、エンジンを活用するつもりのようだ。

 HRCの角田エンジニアは、2026年からはエンジンの全開率が上がると語り、その理由を次のように説明した。

「新しいレギュレーションでは、今とあまり変わらないスピードのモノを目指しています。でも、エンジンの出力は下がります」

 角田エンジニアはそう語る。

 現在のレギュレーションでは、エンジンの燃料流量は最大100kg/hと規定されているが、2026年からのレギュレーションでは、最大3000MJ/hに変更される。レギュレーションに記載されている単位が異なっているため単純に比較するのは難しいが、角田エンジニア曰く、約30%の出力減になるという。

 対してMGU-Kで扱う電力パワーは増え、エナジーストア(ES)に充電できる回生エネルギーの量も大幅に増加する。この電気エネルギーを賄うためには、MGU-Kで回生するエネルギー量を増やさなければならない。基本MGU-Kでエネルギーを回生するのはブレーキング時である。しかしブレーキングだけでは増えたエネルギー量の全てを賄うことは難しいため、ホーナー代表は懸念を表明しているわけだ。

 しかしホンダとしては、エンジンの全開率を上げ、MGU-Kで回生ブレーキをかけることでトルクをコントロールし、加速に必要ないパワーを電気エネルギーに回生してESに蓄えるという。

「ではどこからエネルギーを取ってくるかと言えば、減速時のエネルギーです。ただ、基本的にはそれではエネルギー量は足りません。そのため、いっぱい発電をするため、フルブレーキ以外はほぼ全開でエンジンを回さなければいけません」

「コーナーに向けてフルブレーキをかけ、コーナーを曲がり始めたパーシャル(速度が一定)の場面でも、エンジンはほぼ全開で走らなければいけません。MGU-Kで発電することでブレーキをかけ、それによってトルクをコントロールするんです」

「つまりコーナーを曲がっている間にもMGU-Kで発電し、バッテリー(ES)に充電するということをしなければいけないんです。(エンジンで使うエネルギーは)30%下がるんですけど、エンジンの全開率はものすごく上がります。モンツァでは、90%くらい全開で走ることになります」

 メルセデスのデータによれば、昨年のイタリアGPでは、距離で83%、ラップタイムで76%が全開だった。2026年からのレギュレーションで、最大のパフォーマンスを発揮するためには、それを90%に引き上げなければいけないというわけだ。

 目標値としてはそう語る角田エンジニアだが、信頼性は大きな問題にはるはずだと語る。

「信頼性は楽になるんじゃないかと思いきや、実はそうじゃないというところです」

 これ以外にも、燃料の変更や圧縮比の変更など、現状とは大きく異なるため、さまざま課題が山積している2026年PU開発。「焦っています。他のコンペティターは、2022年のPUがホモロゲーションされた時点で、26年に向けてまっしぐらなはずなので、その分の遅れは取り戻さないといけないと思います」と角田エンジニアは語る。しかし彼の口ぶりからは、ホーナー代表が言うような懸念は感じられなかった。そして角田エンジニアは、電動系の開発について、次のようにも語っていた。

「ただキーとなるバッテリーやモーター(MGU-K)等の要素技術は、基礎研究をさせていただく予算は確保できていましたので、ポイントは分かっていました。パートナーとなるメーカーはいなかったですが、我々独自でテストをしてきたので、方向性は見えていた、というステージからスタートできていると思います」

 2026年、アストンマーチンのF1マシンに搭載されるホンダPUのパフォーマンスは、一体どんなモノになるだろうか?

 
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