F1 イギリスGP

F1分析|イギリスGP最終ラップ、SCを解除できなかったのは確かにレギュレーション通り……キーとなったのはガスリーの走行位置か?

F1イギリスGPの決勝レース最終盤は、SCを巡って混乱したように見えた。しかし実際にはレギュレーション通り。その鍵を握っていたのは、アルピーヌのピエール・ガスリーだったようだ。

田中 健一

編集: 2026/07/06 9:47

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Charles Leclerc, Ferrari, Pierre Gasly, Alpine

Charles Leclerc, Ferrari, Pierre Gasly, Alpine

写真:: Sam Bagnall / Sutton Images via Getty Images

 F1イギリスGPの決勝レースは、セーフティカー(SC)先導のままフィニッシュを迎えることになった。なぜSCが解除されずに、チェッカーを迎えることになったのだろうか?

 F1イギリスGPの47周目、レッドブルのマックス・フェルスタッペンがストウコーナーでマシンのコントロールを失い、スピン。グラベルトラップにハマったことでリタイアを強いられた。

 このフェルスタッペンのマシンを回収するためにSCが出動。52周レースの51周目には「SAFETY CAR IN THIS LAP(セーフティカーはこの周回でピットに戻る)」というメッセージが出され、残り1周の激戦となることが期待された。

 しかしSCはピットレーンに入らず、隊列を先導したまま最終ラップへ。「SAFETY CAR IN THIS LAP」の表示は消え、「SAFETY CAR DEPLOYED(セーフティカー出動)」の表示が改めて出された。

 これについてFIAは、「SAFETY CAR IN THIS LAP」の表示はソフトウェアのエラーによって出されたものだったと説明した。

 しかし当時はどういう状況であったのか、検証してみたいと思う。

 レギュレーションのB5.13.5条には、SC走行期間の長さについて、次のように規定する文言がある。これが大前提となる。

a. B5.13.4c項に規定されている場合を除き、セーフティカーは少なくとも先頭車両がセーフティカーの後方に並び、残りの車両がセーフティカーの後方に並ぶまで使用されるものとする。

b. レースディレクターが、セーフティカーの存在が引き続き必要であると判断しない限り、「LAPPED CARS MAY NOW OVERTAKE(周回遅れ車両は追い越し可)」のメッセージがすべての競技参加者に送られたら、 B5.13.4c項に従いセーフティカーは次の周回の終了時点でピットへ戻る。

■ガスリーが1周遅れてピットへ……これが決定打に?

 FIA Safety Car

FIA Safety Car

写真: Sam Bloxham / LAT Images via Getty Images

 フェルスタッペンがスピンし、コースオフしたのは47周目のことである。この時、先頭を走っていたシャルル・ルクレール(フェラーリ)は既に48周目に入っており、ターン4(アリーナ)に差し掛かるところだった。ここでSC出動が宣言される。

 SC出動が宣言されると、アイザック・ハジャー(レッドブル)を先頭に、47周目を終えた段階で複数のマシンがピットイン。それより前を走っていたマシンの多くは、48周目を終えた段階でピットに入り、タイヤを交換した。このSC中にピットインしなかったのは、メルセデスの2台などごく僅かであった。

 メルセデス以外でピットレーンの入口を一度はスルーしたマシンは他に2台いたが、そのうちの1台がピエール・ガスリー(アルピーヌ)だった。

 ガスリーはSCが出動した直前に周回遅れになったばかり。つまりSC出動というメッセージが出たまさにその時には、すぐ前に先頭のルクレールがいた。

 そのルクレールが48周目にピットストップした時に、ガスリーはピットに入らないことを選択した。これにより、ガスリーは先頭と同一周回に戻ることに成功。ただ同一周回の最後尾であったため、後方に大きな余裕ができた。その結果、ガスリーも1周後(彼にとっては48周目を終えた時点だが)にピットインし、先頭と同一周回の最後尾でコースに復帰することができた。

 ただガスリーがピットアウトした時、ルクレールは既にターン16……サーキットの最終区間に到達していた。つまりルクレールが50周目に入った時には、ガスリーは同一周回ながらほぼ1周遅れであった。

 フェルスタッペンのマシン回収は、ルクレールが50周目のマゴッツに差し掛かる直前に完了した。この時点で「周回遅れ車両は追い越し可」のメッセージが出されていれば、最終ラップはSC解除された状況で行なわれたはずだ。しかし「周回遅れ車両は追い越し可」のメッセージを出せない事情があった。まだバルテリ・ボッタス(キャデラック)、フランコ・コラピント(アルピーヌ)、そしてガスリーの3台が、隊列に追いついていなかったからだ。

 前述のレギュレーションの文言では、SC走行は「残りの車両がセーフティカーの後方に並ぶまで使用」され、その後で「周回遅れ車両は追い越し可」のメッセージが出されることになっている。

 ルクレールが50周目のストウコーナーを通過したところでボッタスが隊列に追いつき、さらに最終コーナーを通過している時にコラピントも隊列に並んだ。ただガスリーはまだハンガーストレートに入ったばかりのところを走っていた。

 ルクレールが最終コーナーを立ち上がった時点で、ようやく「周回遅れ車両は追い越し可」のメッセージが出される。ガスリーの位置を考えれば、これでも少しフライング気味だったかもしれない。

「周回遅れ車両は追い越し」が完了したのは、ルクレールが51周目のターン5を通過した頃だ。そしてレギュレーションには「セーフティカーは次の周回の終了時点でピットへ戻る」とされているため、52周を走り切ったところでSC走行が解除される……つまりSC解除と同時にフィニッシュを迎えるということになるわけだ。

 確かに51周目に「SAFETY CAR IN THIS LAP」の表示が出たのは、レギュレーションに反している。ただ、隊列がもっと早く整っていれば……もっと言えばガスリーが同一ラップに戻るための作戦を採らなかったならば、最後の1周はバトルができていたかもしれない。

 しかし断っておきたいが、ガスリーやアルピーヌを批判するものではない。ガスリーとアルピーヌはしっかりと周囲の状況を見極め、同一周回に復帰。そしてしっかりと入賞を手にしたわけだから。賞賛に値する判断だったと言えるだろう。

 そして表示のミス以外には、FIAを批判すべきことは何もない。むしろ強引に最後の1周でSCを解除していたら、「レギュレーションの文言と違うじゃないか!」として、大炎上する可能性もあった。

 SC解除のタイミングを巡っては、2021年アブダビGPの事例で大問題となった前例がある。また今季のモナコGPでは、ピットレーンの速度違反裁定を巡り、やはり大きな問題となっている。まだ完全解決には至っていない状態だ。

 今回さらなる問題を抱えなかったことに、今は胸を撫で下ろしているかもしれない。

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