分析

F1 イギリスGP

シルバーストンの名所は”充電ステーション”になるのか? 新規則のF1マシンでイギリスGPが様変わりすると予想される理由

F1の新レギュレーションは、シルバーストンでこれまでで最大の試練に直面する。この伝統的な開催地でのレースがどのように様変わりする可能性があるのか​​を見ていこう。

Filip Cleeren

Filip Cleeren

公開日時: 2026/07/03 10:40

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Lando Norris, McLaren

写真:: Steven Tee / LAT Images via Getty Images

 マイアミGP前に実施された応急処置や、2027年に合意されたより大規模な変更によって、F1新規則でよく話題になるエネルギー管理の問題はもう過去のものになったと思っているなら、それは間違いだ。

 ここ数戦はエネルギー面の制約が比較的小さいサーキットでのレースが続いたため、この問題はやや影を潜めていた。しかし、伝統のシルバーストンは、セルジオ・ペレス(キャデラック)が「このレギュレーション最大の試練」と表現し、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)も現行マシンでシミュレータを走らせて思わず笑ってしまったほど、2026年型マシンにとって厳しい舞台となる。

 根本的な問題は、このレギュレーションが抱える矛盾にある。ドライバーたちが最も愛する、高速かつ流れるようなレイアウトのサーキットほど、エネルギーマネジメントには最も不向きなのだ。

 2026年のパワーユニット(PU)はバッテリーを充電するためにハードブレーキングゾーンを必要とする。しかし、シルバーストンはカレンダー屈指のフルスロットル区間が長いサーキットである一方で、ハードブレーキングポイントは少ない。そのため、高速コーナーが次のストレートへ向けた「充電ステーション」として使われることになると、フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は説明している。

 ではコプス、マゴッツ、ベケッツ、ストウといったドライバーが愛するシルバーストンの名コーナーは今年、本当にその魅力を失ってしまうのだろうか。実際に何が起こるのかを見ていこう。

具体的に何がこれまでと違うのか、変わらないのは何か

 このレギュレーション最大の問題は、十分なブレーキングによるエネルギー回生ができないまま長距離を走らなければならない場面で表面化する。直線でも高速コーナーでも十分な減速ゾーンがない場合、ドライバーはバッテリーを充電できず、「スーパークリッピング」と呼ばれる現象が発生する。これはアクセル全開のままエンジン出力の一部を充電に回すことで速度を犠牲にする状態だ。

 予選においては、エネルギー運用の調整によりこの現象は大きく改善されたが、それでもシルバーストンでの予選は今季ここまでで最も厳しいケースになると見られている。

 シルバーストンのレイアウトを具体的に見ると、ドライバーがコーナリングスピードを犠牲にしてエネルギー管理を優先しなければならない区間は大きく2か所ある。

 1つ目はラップ序盤だ。これまではターン1・2を全開で駆け抜け、ターン3の右コーナーで一気に減速するのが常識だった。しかし今週末はそうはならない。ターン1~2ですでにスーパークリッピングを開始すると予想されているからだ。その理由は、ターン5から6へ続くウェリントン・ストレートで十分な電力を使うことが、ラップタイム短縮に極めて重要だからだ。

Silverstone map

Silverstone map

Photo by: Uncredited

 その後、ブルックランズ(ターン6)ではしっかりエネルギーを回生し、ルフィールドからウッドコート、旧ホームストレートを抜けて名物高速コーナー、コプス(ターン9)へ向かう。

 昨年のポールポジション獲得ラップでは、ランド・ノリスはコプスを300km/h超で全開通過した。今年は速度が大きく落ちるのではと懸念されているが、関係者によれば予選では依然としてほぼ全開で通過できる見込みだ。

 しかしコプスの立ち上がりで再びエネルギーを使い、ほぼバッテリーを使い果たすことになるだろう。そんな状態で、F1屈指の高速セクションであるマゴッツ~ベケッツ~チャペル(ターン10~14)を迎える。

 そして、この区間こそ今年もっとも様子が変わる場所になる。この高速S字は、今やバッテリーを充電するための区間として使われることになるからだ。理由はその先のハンガー・ストレートだ。ストレート序盤から電力を使って最高速へ素早く到達することがラップタイムを稼ぐうえで不可欠だが、そのためには事前に容量の限られたバッテリーへ十分なエネルギーを蓄えておく必要がある。

 ルフィールドからストウ(ターン15)までエネルギー回生ポイントがないため、どこかを犠牲にしなければならない。その犠牲になるのがマゴッツ~ベケッツであり、ドライバーたちが今年のシルバーストンに悲観的な理由もそこにある。

 本来なら限界まで攻めたいお気に入りの高速コーナーであるはずが、そこで攻めすぎると、その後のストレートで電力切れを起こし、結果的にラップタイムを失ってしまう。

 ストウでもコーナリング速度は昨年より大きく低下する見込みだが、こちらはエネルギーマネジメントというより、2026年マシンのダウンフォース減少による影響が大きいと考えられている。

Fernando Alonso fears Maggotts and Becketts will be reduced to

Fernando Alonso fears Maggotts and Becketts will be reduced to "charging stations" for the 2026 F1 cars

Photo by: Sam Bloxham / LAT Images via Getty Images

ヨーヨーレースは復活するのか?

 こうした副作用を少しでも抑えるため、FIAは今週末の最大エネルギー使用量を保守的な設定とした。決勝では8MJ、予選では6.5MJに設定されており、いずれもバルセロナより0.5MJ少ない。それでも最長ストレート終盤ではスーパークリッピングが発生すると見られているが、マイアミ以前の状態ほど深刻にはならない見込みだ。

 最近では各チームとも予選でのエネルギーディプロイメントのパターンがほぼ収束しつつある。

 しかし決勝では事情が異なる。追い抜きを狙うため、ドライバーはさまざまなエネルギー戦略を選択できるからだ。オーストリアほどタイヤマネジメントが厳しくないシルバーストンでは、オーバーテイクはよりPU性能に依存することになる。

 その結果、あるストレートで電力を使って前車を抜いたとしても、次のストレートではバッテリー切れとなり、今度は自分が抜き返される……今季序盤で「ヨーヨーレース」と呼ばれてきた現象が、再び繰り返される可能性は十分にある。

 これを面白いと感じるか、不自然だと感じるかは人それぞれだろう。人工的なレースだと批判するファンもいる一方で、タイヤ摩耗が少なく自然なオーバーテイクが起こりにくいサーキットでは、こうしたエネルギー戦略による攻防の方が見応えがあると考えるファンもいるはずだ。

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