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【F1メカ解説】ホンダがメルセデスに並んだ……”新骨格”パワーユニットとは?

2014年にF1に現行の”パワーユニット”レギュレーションが導入されて以来、メルセデスが圧倒的な強さを発揮してきた。しかし今季は、レッドブルがランキングの首位に立っている。それには、ホンダの進歩が大きな役割を果たしている。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

Max Verstappen, Red Bull Racing RB16B

Steven Tee / Motorsport Images

 F1には2014年から、V6ターボエンジン+運動&熱エネルギー回生システムのいわゆる”パワーユニット”レギュレーションが導入され、以来ずっとメルセデスが強さを誇ってきた。しかし今季は、前回のモナコGPでの勝利により、レッドブル・ホンダとマックス・フェルスタッペンがランキング首位に浮上。2014年以降レッドブルがコンストラクターズランキング首位に立つのはこれが初めてであり、フェルスタッペンも自身のF1キャリア初のランキング首位。またホンダにとっては、マクラーレンと組み、アイルトン・セナとゲルハルト・ベルガーを擁して戦っていた1991年以来のポジションということになる。

 とはいえ今シーズンはメルセデスとレッドブルの接近戦が毎グランプリ続いている状況。ただレッドブルがメルセデスにここまで接近することができたのは、ホンダのパフォーマンスが向上したことに他ならない。

 2015年にF1復帰を果たしたホンダは、当初はマクラーレンとパートナーを組んだ。しかしこれはうまくいかず、契約を早期に切り上げて関係を解消。ただトロロッソのみの1年を経てレッドブルとコンビを組んだ後はその性能が年々向上していき、今やそのパフォーマンスはメルセデスと同等と言ってもいいだろう。

 ホンダは今季、新骨格のパワーユニットを投入。シーズン開幕前、ホンダのF1プロジェクト、ラージ・プロジェクトリーダーである浅木泰昭氏は、「新骨格ってどんなものですかと訊かれると思いますし、いずれ写真で分析されたら分かると思いますので、中身を言ってしまいます」と、その変更点を明らかにしていた。

 浅木LPLの説明をまとめれば、今季のホンダのパワーユニットは、”カムシャフトのレイアウトをコンパクトにして下に下げ、バルブの挟み角も代わり、燃焼室の形状も変更した結果、非常にコンパクト・低重心なモノ”になったという。これらの変更がいかに重要だったのか、その理由を本稿では検証していこうと思う。

 新骨格のパワーユニットの中心には、浅木LPLが語る再設計されたICE(内燃エンジン)が存在する。これには、ホンダのオートバイ部門によって開発された、シリンダー・コーティングが使われているとも言われる。このコーティングによりエンジンの温度と摩耗が軽減できることになり、F1エンジン開発部門は、エンジンブロックの設計を再考することができたようだ。

Honda RA620H vs RA621H cylinder spacing

Honda RA620H vs RA621H cylinder spacing

Photo by: Matthew Somerfield

 この結果、浅木LPLが言うようにICEのサイズを小さくすることができ、クランクシャフトの位置が下げられ、ボアピッチ(シリンダー間の距離)も縮めることができた。

 上の図を見ても分かるように、シリンダー同士の距離を縮めることができれば、シリンダーヘッド全体のサイズを縮小することができる。

 また、ICEのバンクのオフセットも、今回の変更に伴い変えているようだ。昨年使われていたRA620Hでは、左側のバンクが前方に位置するレイアウトを採用していた。しかし今年のRA621Hは、右前のレイアウトとなっているようだ。この変更に伴い、パワーユニットを構成する他のエレメントと補機類を再パッケージ化しつつ、全体的なバランスを変更することができたと見られる。

Engine cylinders head covers

Engine cylinders head covers

Photo by: Honda

 シリンダーヘッドの寸法が変更された結果、シリンダーヘッド・カバーにも大きな変更が加えられた。今年の初めにホンダが公開したRA621Hのシリンダーヘッド・カバーを昨年型のRA620Hのそれと比較すると、この点は明らかだ。

 これらふたつのカバーに存在する唯一の類似点は、パワーユニットに取り付けるフレームであり、その位置はレギュレーションによって定められている。

 このシリンダーヘッド・カバーの断面(下の図)を見ても、全体的な仕様が異なるだけでなく、カムシャフトの間隔が大幅に縮められていること、そしてバルブの角度にも変更が加えられているのが分かる。

Honda Powerunit CAM distance comparison

Honda Powerunit CAM distance comparison

Photo by: Matthew Somerfield

 バルブの角度が変わると、シリンダーへの空気の流れの角度も当然変わる。これは、バルブの吸排気ポートの設計を変更することで満たされているだろう。

 それ以上に重要なことは、これらの変更によって、圧縮率が高くなっているだろうということだ。その結果、ピストンクラウンのデザインも変更されているはずだ。

Honda valve  arrangement

Honda valve arrangement

Photo by: Matthew Somerfield

 ただ、圧縮比と燃焼効率を高めることには、マイナス面もある。生成される排気ガスのエネルギー量が減ってしまうのだ。現在のF1では、この排気ガスを用いて”熱回生”を行なっている。これがMGU-Hだ。MGU-Hで回生されたエネルギーの使用は比較的自由に行なえるようになっており、パフォーマンスを向上させる上では今や欠かせないモノ。排気ガスのエネルギーが減り、熱回生がうまくできなくなってしまえば、使うエネルギーの分配(デプロイメント)の面では不安が生じてしまう。

 ホンダの浅木LPLはこれについて「エネルギー保存の法則で、普通にクランクの馬力を上げると排気のエネルギーは減ります。そこを新骨格で対策して、どちらも上げていきます」と説明したが、この対処にホンダは、社内の別部門のサポートを活用しているようだ。

■開発の方向転換が必要だった理由

 ホンダのパワーユニットのパフォーマンスは、2020年の時点でメルセデスのそれにかなり近づいていた。にも関わらず今季大きな変更を行なわねばならなかった理由は一体どこにあるのだろうか?

 その答えは、ホンダの前モデルのパワーユニットが、エネルギーの回生とデプロイメントを高めるために、燃焼効率の面で妥協しなければならなかったということにあるようだ。

 2020年のシーズン前とシーズン中に、FIAは技術司令を発令。これにより、将来に向けた開発プログラムにおける可能性を台無しにすることになった。

 またホンダは、2021年限りでのF1活動を終了させることを決定。しかし開発部門は、2022年に導入することを目指した新骨格のパワーユニットの開発を進めていた。

 これらの結果、ホンダは計画を1年前倒し。2022年向けのパワーユニットを、2021年に投入することを決めたのだ。

 この2022年用パワーユニットは、E10と言われるバイオエタノールを10%含んだ燃料を使うことを念頭に置いていたモノ。ホンダは今季限りでF1を退くが、パワーユニット自体はレッドブル・パワートレインズが開発と運用を引き継ぐことになっている。つまりE10燃料を使う前に、その基本となるICEを1年使うことができるということにもなった。

■F1復帰直後のコンセプト”サイズゼロ”がようやく具現化?

 パワーユニットが小型・低重心化することは、シャシー開発の面でも大きなメリットがある。

 搭載するパワーユニットが小さくて良いため、カウル自体を小型化することができ、冷却しやすければその分カウルをさらに絞り込むこともできる。

 これは間違いなく、レッドブルとアルファタウリのマシンが昨シーズンと比較して前進するのを助けたはずだ。実際、この2チームのマシンのリヤエンドは、実にタイトに構成されている。

 ホンダがF1に復帰した2015年、”サイズゼロ”というコンセプトを謳っていた。これはマクラーレン側の求めによるものでもあった。しかしこれはうまくいかずにトラブルが多発。パフォーマンスの面でも苦しんだが、ようやくこのコンセプトが実現したとも言えるのではなかろうか。

 前述の通り、昨シーズンのホンダはメルセデスに近づいた。そのため、開発の手を緩めるのではないかと見る向きもあった。しかしそれとは正反対のことが起きた。ホンダは全く新しいパワーユニットを登場させることで、フェラーリとルノーを追い抜き、今やメルセデスを脅かす存在になったのだ。

 

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