こんなコーナー他にない! 建設が進む新たなスペインGPの開催地『マドリンク』の今
建設中のマドリンクが一部のメディア向けに公開された。スペインGPの新たな開催地を一足先にチェックしてみよう。
Madring
写真:: Filip Cleeren
先日バルセロナで開催されたグランプリが、F1スペインGPという名前でなかったことに気づいた方も多いだろう。今年から、スペインGPの舞台は新設のマドリンクが舞台となったからだ。
野心的な計画を掲げ、エンターテインメント性、アクセスのしやすさ、持続可能性を兼ね備えた都市型グランプリの実現を約束したマドリードは、バルセロナに代わってスペインGPを10年間開催する権利を獲得した。舞台となるのは、バラハス国際空港に隣接するIFEMA展示場周辺の公道区間と専用区間を組み合わせた半市街地コース『マドリンク』だ。
マドリンクでのF1初開催まで3ヵ月を切る中、サーキット主催者は華やかなオープニングセレモニーを開催し、地元政府関係者や大会アンバサダーを務めるカルロス・サインツJr.(ウイリアムズ)らが出席した。
このイベントは、一部メディアに5.4kmのマドリンク建設現場を公開し、9月にF1ドライバー22人が挑むコースをいち早く体験させる機会にもなった。ヘルメットと蛍光ベストを身に着け、灼熱のマドリードの午後にバスへ乗り込み、F1最新サーキットを巡る。猛烈な暑さから逃れられるだけでもありがたい時間だった。
主催者が理解していたのは、F1サーキットには象徴となる特徴が必要だということだ。マドリンクでは、それが最大許容値24%のバンク角を持つ壮観なコーナー「モニュメンタル」である。全長550メートルのこのコーナーは、ザントフールト最終コーナーよりはるかに長いコーナーであり、サーキット北側の専用区間を270度回り込むレイアウトとなっている。
映像やCGでも十分印象的だった全開区間だが、実際に間近で見ると、その迫力は想像以上だった。しかも、一般的なオーバルのような一定勾配・一定半径のバンクではない。3次元的に形状が変化しながら徐々に出口へ向かってオープンになり、大きな高低差も伴う。出口は上り坂となるためドライバーからは先が見えず、現在のF1には類を見ないコーナーとなりそうだ。
最大バンク角24%のラ・モニュメンタル
写真: Filip Cleeren
「正確な感覚や詳細はシミュレータで走ってみないと分からないけれど、すでに非常に印象的なのは間違いない。進入速度は約280km/hになるはずだからね」とサインツJr.は語った。
「僕の感覚では、このコーナーは全開で抜けられるし、その先のタイトな左コーナーでオーバーテイクのチャンスが生まれると思う。バンクのおかげで、クリーンエアを得るために高いラインや低いラインを選ぶこともできるだろうし、前車にぴったりついていけば強いスリップストリームも得られるはずだ」
またサインツJr.は、フェルナンド・アロンソの元マネージャーであるルイス・ガルシア・アバド率いる主催者が、ドライバーにとって魅力的なサーキットを目指したことを評価した。
「僕がマドリードの運営責任者にお願いしたのは、個性やカリスマ性のあるコースを作ってほしいということだった。ドライバーが設計にほとんど関与していないようなサーキットを作るという罠には陥らないでほしかった」
主催者は「ラ・モニュメンタル」をコース最大の象徴として前面に押し出している。ピニンファリーナがこのバンクをモチーフにトロフィーをデザインし、火曜日に公開された公式ポスターにもこのコーナーが描かれている。
イベントアンバサダーのカルロス・サインツJr.
写真: Madrid Grand Prix
バンク以外で目立つのは、全体5.4kmのうち2.2kmを占めるサーキット専用区間の速さだ。かつてイベント会場だった広大な空き地を利用し、設計陣は現代F1マシンが思う存分スピードを発揮できるよう、広々としたレイアウトを採用した。
再びバスを降りたのは、将来的にはラ・モニュメンタル付近にファンゾーンが設けられる予定の場所。現時点では建設車両が行き交う砂地にすぎない。それでも主催者は、このエリアは9月までに最も短期間で完成させられる部分だと強調している。
2本の高速道路高架橋が北側の専用区間とIFEMA会場を隔てており、後者にはスタート・フィニッシュストレートやパドック施設も設けられる。この区間は90度コーナーや狭いランオフエリアなど、市街地コースらしい雰囲気が強い。一方でターン3からターン5までの長いストレートは、その先のタイトなシケインへのオーバーテイク機会を生み出す可能性がある。
もっとも、この区間はコース全体で最も魅力的というわけではなく、美観の面でも多数のコンクリート展示施設の間を縫うため、テレビ映像で魅力的に見せるには工夫が必要になるだろう。
舗装工事はすでに完了しており、現在は見学中も建設が進められていたピットビルや、総収容人数11万人のうち約9万8000人を収容する予定のグランドスタンド設置が最大の作業となっている。
マドリードのサーキットの半分は広大な敷地に建設されており、主催者は高速コーナーや広々としたファンゾーンを自由に設計することができた。
写真: Filip Cleeren
サーキットは性格の異なる2つのエリアから構成されるため、全体としてやや分断された印象を受けるが、それは必ずしも欠点ではない。マドリンクは、高速・高ダウンフォースが要求される伝統的ロードコースの魅力と、市街地レースならではのアクセス性や施設面での利便性を融合させようとしている。
サインツJr.は「市街地コースのような雰囲気で走っていたかと思うと、丘を越えた瞬間に一気に広々とした高速区間へ飛び出すサーキットは見たことがない。この2つの組み合わせがコースを面白くしている」と話した。
構造上、観客エリアも物理的に南北へ分かれる。広大な北側ロードコース区間に観客席の大半が配置される一方、スタート・フィニッシュ付近の南側はホスピタリティ施設が中心となる。
IFEMAのCOOカルロス・ヒメネスはMotorsport.comに対し、「北側はより伝統的な観戦体験、南側はVIP向け体験になる。観客の6割強が北側に入り、大規模ファンゾーンやエンターテインメントスペースが設けられる。南側は4割弱で、パドッククラブなどのホスピタリティ施設が中心だ」と説明した。
3カ月後に初レースを控えるマドリンク
写真: Madrid Grand Prix
マドリードの大きな強みは、バルセロナなど従来の欧州サーキットと比べても公共交通機関を前提に設計されている点にある。北側のヴァルデベバス地区へは鉄道が乗り入れ、メインパドック前にも地下鉄駅が隣接している。
「どちらも空港と市中心部を結ぶために設計された高速路線で、停車駅も非常に少ない」とヒメネスは説明する。
「サーキットまでのアクセスや移動体験は、ファンにとって大きな違いを生み出すと考えている。その一方で、来場者が市街地へ戻らず、できるだけ長くグランプリ会場に滞在したくなる体験を場内で提供しなければならない」
大会責任者のアバドもMotorsport.comに対し、次のように語った。
「まず実施したのはアンケート調査だった。お客様やファンは何を求めているのか。安全性、アクセスの良さ、渋滞の少なさ、魅力的な街、美しい天候……そうした要望に応える形で、我々は『マドリード体験』を作り上げてきた」
「我々は市内にレーストラックを建設しているが、都市型サーキットではない。シンガポールとは異なるものだ。性能面では高速コーナーが多く、非常に高速なサーキットであり、ドライビングやマシン性能の面でもかなり挑戦的になる」
マドリンクのコーナーが続く序盤の区間。左・右と続くきついシケインとなっている。
写真: Filip Cleeren
マドリンクでのF1開催計画は決して順風満帆ではなく、さまざまな遅延や近隣住民団体による法的措置にも直面してきた。マドリード州知事イサベル・ディアス・アユソらがターン3付近で巨大なスペイン国旗の掲揚を見守る一方、フェンスの外では「Stop Formula 1」と書かれたプラカードを掲げた十数人の抗議者の笛の音が響いていた。
Motorsport.comから、地域住民に対してレースが負担以上の価値をもたらすことをどう示すのかと問われたアバドは、こう答えた。
「非常に重要な質問だ。我々が建設しているサーキットで実際に活動が行なわれるのは年間約14時間に過ぎない。それは小さな犠牲であり、その一方で周辺不動産の価値は大きく上昇している。新しいホテルも建設されている。しかし最終的には、誰もが自由に自分の考えを述べ、信じるもののために行動する権利を持っている。そして我々も同じように行動している」
近年の新規開催グランプリを振り返れば、初年度に課題や混乱が生じるのは避けられないだろう。ただ、年間100件以上の大型イベントを運営するIFEMAの経験は大きな武器となる。それでもヒメネスは、初年度からすべてが完璧に進むとは考えていない。
「もちろん最高の体験を提供したいが、1年目から2年目にかけて学ぶべきことは数多くある。それはどこでも同じであり、我々も例外ではない。そのことは理解しているし、謙虚でありたいと思っている。しかし同時に、それこそが我々の強みでもある」
「私自身を含め、チーム全員がこのイベント運営の特殊性を理解できるよう努めてきた。複数のグランプリを見て回れば、どの開催者にも共通する成功例や改善点が見えてくる。だから初年度であっても、良い体験を提供できると確信している」
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