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【考察】マイケル・マシはなぜF1レースディレクターを解任されたのか。新システムで何が変わる?

FIAはF1レースディレクターのマイケル・マシの解任と、レースコントロールシステムの変更を発表。このことで、昨年のアブダビGPのような状況は起こらなくなるのか?

Michael Masi, Race Director and Stefano Domenicali, CEO, Formula 1

Michael Masi, Race Director and Stefano Domenicali, CEO, Formula 1

Andy Hone / Motorsport Images

 FIAは2月17日、F1レースディレクターを務めていたマイケル・マシの退任を発表。昨年のアブダビGPを発端に大きな論争が巻き起こっていたことを考えれば、これは決して青天の霹靂のような出来事ではなかった。

 ただ、F1のレースディレクションのシステムに変更が加えられることは確実視されていたものの、マシが新たなメンバーと役割を分担する形でその職にとどまる可能性は十二分にあった。しかし最終的に、F1のステファノ・ドメニカリCEOとFIAのモハメド・ベン・スレイエム会長はマシの任を解くことで合意した。ファンや関係者からの反応を考慮すれば、そうするしかなかったのかもしれない。

 レースディレクターはエドゥアルド・フレイタスとニールス・ウィティヒの2名による交代制となり、その他のシステムもテコ入れされた。まずレースディレクターはチームのピットウォールからの無線でプレッシャーをかけられることがなくなり、加えてサッカーのVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)のように遠隔でのサポートも受けられるようになった。こういった体制下で働くチャンスをマシが得られなかったことは不運だったとも言える。

 フレイタスはWECで、ウィティヒはDTMでレースディレクターを務めた経験を持つ。彼らにF1レースディレクターの仕事が分担されるのは興味深い選択だ。

Race Director Eduardo Freitas

Race Director Eduardo Freitas

Photo by: JEP / Motorsport Images

 彼らは確かに経験豊富だが、F1については学ぶべきことが多い。また、これまではひとりのレースディレクターが全てのレースをジャッジしていたため、理論上は意思決定プロセスに一貫性が保たれていたが、それが交代制になることで失われる可能性がある。実際、レースディレクターを複数人で分担するという話が持ち上がった時、情報筋はまさに一貫性の問題でその話が立ち消えになったのではないかと話していた。

 しかしながら話し合いが進むにつれて、この仕事を率先して引き受け、尚且つひとりで完璧に遂行できる候補者を見つけるのは不可能だという結論に至ったようだ。例えばフレイタスは既に多くの仕事を抱えているため、どのみち23戦全てに帯同させることはできなかっただろう。

 役割分担をすることのメリットは、ひとりの人間が全権を握る危険性が低いという点だ。レースディレクターは世間や関係者から大きなプレッシャーを受けるが、その重圧も役割分担によって軽減することができる。FIAは、2019年に当時のレースディレクターであるチャーリー・ホワイティングが急死して以来欠けていたものを取り戻すという賢明な判断をしたのだ。

 ホワイティングがレースディレクターを務めていた時代は、ハービー・ブラッシュが2016年まで長年に渡りその補佐を務めてきた。彼らはお互いの考えを理解し、意見を言い合える関係であった。

 またFIAは昨年、コリン・ヘイウッドという人材を失った。彼は長年、レースコントロールシステム・マネージャーという職に就いており、実質的にホワイティング、ブラッシュのチームの3人目のメンバーという立ち位置だった。彼はマシの補佐も務めていたが、昨年途中に離脱したため、2021年シーズンの後半はその不在の影響が顕著に出た。

ハービー・ブラッシュ

ハービー・ブラッシュ

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

 昨年9月に73歳となったブラッシュは、ヤマハのスーパーバイクでの仕事もあり、多忙を極めている。彼は今回、常任シニアアドバイザーという形でF1に復帰。レースディレクターとその補佐たちと同席することで、その豊富な経験を活かすこととなった。時にはチームやドライバーが新任のレースディレクターと相見えることで神経質になる場面もあるかもしれないが、そういう時こそブラッシュの存在がレースコントロールの信頼感を高めることになるだろう。

 ベン・スレイエムによって説明されたその他の変更点は大方予想されていたものだが、「バーチャル・レースコントロール・ルーム」なる遠隔支援の導入は、関係者が望んでいた以上のものだったかもしれない。

 これまでマシは、接触のリプレイを見ながら反則等がないかチェックし、同時にコースがクリアになっているかや、セーフティカーの運用状況を監視していた。しかし、サッカーのVARのようなシステムが導入されることで、レースディレクターは安全面の確保に集中できる。さらに、スチュワードに情報を渡して審議してもらう前に、インシデントの責任が誰にあるのかについて意見交換ができる。

 そしてピットウォールからレースコントロールへの無線を放送しないこと、チーム代表がそのやり取りから除外されることは、昨年の最終戦アブダビGPの段階で既に提案されていたものだ。

 昨年はそうしたやり取りがエンターテインメント性を高め、ファンを楽しませていたのも事実だ。しかしそれがアブダビGPのレース終盤では手の負えない状態になってしまった。レッドブルのクリスチャン・ホーナー、そしてスポーティングディレクターのジョナサン・ウィートリーが、ルイス・ハミルトンとマックス・フェルスタッペンの間にいる周回遅れのマシンをセーフティカーの前に出すようプレッシャーをかけたことは、タイトル争いの行方に大きな影響を与えたと考えている関係者もいる。

 こういったやり取りを放送することはマシ自身が決定したことであり、言い換えれば強制されていたものではない。例えチーム代表がプレッシャーをかけてきたとしても、ホワイティングがこのようなやり取りを放送することを許可したとは考えにくい。セーフティカー出動中などにホワイティングとブラッシュの2ショットが中継映像に映し出されることはあったが、あれは映像素材のストックとして金曜に渋々撮影されたものだという話もある……。

 なお、チーム代表やスポーティングディレクターは引き続き、レース中にレースコントロールと話をすることはできるが、非常に厳格なガイドラインの下で管理されるため、最低限の情報交換しかできず、昨年見られたような感情的なロビー活動はできなくなるだろう。

 ベン・スレイエムによると、現在セーフティデリゲートとサーキットインスペクターを務めるマシは、FIAで別の仕事をオファーされる予定だといい、上記ふたつの仕事を継続して行なうかは明らかになっていない。

Michael Masi, FIA

Michael Masi, FIA

Photo by: Erik Junius

 マシの解任に関しては、彼がいわゆる“スケープゴート”にされたと考える者もいる。彼のしてきた仕事が全て正しかったとは言えないかもしれない。しかし、彼は過去数十年に渡ってレースディレクターを務めてきた者の後任を突然任され、その無理難題を3年間もこなしてきたのだ。そのことも忘れてはならない。

 またホワイティングの死後、ソーシャルメディアで投げかけられるF1ファンからの罵詈雑言も酷くなってきていた。マシにとっては、一歩引いてもう一度自分の人生を楽しめるようになるかもしれない。

 F1の歴史に名を残す男と、若きスターが同ポイントで迎えた頂上決戦。F1アブダビGPは素晴らしい1日になるはずだった。しかし、その物語は、ひとりの男が背負うにはあまりにも重すぎた。結果的にはハミルトンファンを怒らせ、F1初心者を困惑させるという形になってしまった。だからこそF1のステファノ・ドメニカリCEOは、その先への道筋をつけるため、自らが中心となって今後の方針を固めていった。

 2022年シーズンは3月にバーレーンで開幕する。新しいレースディレクターたちが昨年のマシのような状況に陥らないことを願うばかりだ。

 
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