フォーミュラEマシンの開発は、市販EVの開発に活かせるのか? 日産岩瀬エンジニア「市販車とFEの技術は、実はシナジーが高い」
日産のフォーミュラE開発に携わる岩瀬エンジニアに、フォーミュラEに参戦することが同社の市販車にどう活きるのか、話を訊いた。
Oliver Rowland, Nissan Formula E Team
写真:: Joe Portlock / Getty Images
完全電動車による世界選手権であるフォーミュラE。今週末には、東京E-Prixが日本で初の公道ナイトレースとして開催される。
ではこのフォーミュラEは、市販車にどう活かせるのか? あるいは市販車開発とどんな関係性があるのか? 日産フォーミュラEチームのチーフ・パワートレインエンジニアを務める岩瀬拓朗氏に話を聞いた。
フォーミュラEには、数々の自動車メーカーが参入している。そのうちのひとつが日産である。岩瀬エンジニアはエクストレイルやセレナe-POWERなど市販車の電動パワートレイン開発を手掛けた後、2025年からフォーミュラEの開発チームに参加している。
そんな岩瀬エンジニアは、フォーミュラEと市販EVの親和性は、非常に高いという。
「電動化というところで言うと、技術的なシナジーは、レースであっても市販車であっても、非常に高いんです」
岩瀬エンジニアはそう語った。
「エンジニアが市販車に向けて用いている能力と、レースに対して用いている能力は、完全にイコールではないものの、ほぼイコールで移行できる世界です。そういう意味では、日産が培ってきた技術、つまりこういうやり方をすればもっと良い成果が得られるというようなところを応用できるという意味では、シナジーがとても高いです」
「ただ知見などを反映することはできますが、レースで使った部品をそのまま市販に使うのは、簡単にいかない世界ではあると思います」
岩瀬エンジニアは、まずは市販車開発で培った技術でフォーミュラEを勝ち、将来的にはフォーミュラEで培った技術を市販車に転用する……そう言う流れになると予想している。
「これからは市販車の技術をレースに活かして勝っていく……ということができたらと思っています。そしてその先に、レースでその技術をさらに進化させて、市販車に還元できたらいいなと、そういうことが増えていくんじゃないかと思います」
「来季から導入されるGEN4マシンは、常時四輪駆動だったり、レギュレーションの自由度も上がります。日産の技術を応用する場所をどんどん増やせていければと思っています」
なおEVの性能を上げるためには、バッテリー開発も重要であると思われる。現在のGEN3 Evoも、来季からのGEN4も、バッテリーはワンメイクであり、各社が開発することは許されていない。しかしその後のGEN5マシンくらいから、バッテリーの開発が自由化されるのではないかという話もある。
バッテリー開発の解禁は、日産にとって待ち望んでいることなのかと尋ねると、岩瀬エンジニアはこう語った。
「各社がバッテリーを開発するというのは、とても難しいことかなと思っています。バッテリーの技術を持っているメーカーと持っていないメーカーで差が現れやすくなります……それを開発するのは、純粋なレースのお金のかけ方かと言われると、ちょっと違う世界なのかと思います」
「日産の母体がどんな技術を持っていて、他のメーカーの母体も何を持っているか……そしてそこにいくらかかっていますかという争いになってくると思います。そういう形は多分、フォーミュラEにとっては本望ではないので、各社がバッテリーを開発するのは、難しいことじゃないかと考えています」
バッテリーの開発ができずとも、フォーミュラEには市販車に活かせる開発領域があると、岩瀬エンジニアは言う。
「日産は、路面とタイヤの接地をうまく使って、車体をコントロールするのを得意としています。それってひとつの技術で実現しているかというと決してそうではなくて、細かい技術がたくさん積み重なって実現できたものです。その中のどれがレースで優位に使えるかという部分もあります」
「バッテリーの開発ができないからといって、フォーミュラEで技術が生み出せないということはありません。市販車で培ってきたモノがそのまま使えることもあるかもしれないし、逆にフォーミュラEで作ったモノを市販車に持っていけるということもまだ全然あると思っています」
「バッテリーだけがEVではなくて、動かすところの凄さというのがガソリン車とはまったく違う世界が回っています。ですので、そのあたりの学びとして、もしくは証明する場として使えたらと思っています」
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